2018年6月29日金曜日

高尾山古墳を守る会に和島誠一賞






高尾山古墳を守る会に和島誠一賞
遺跡保存に顕著な役割を評価
 高尾山古墳の保存要望団体「高尾山古墳を守る会」が、遺跡保存に顕著な役割を果たした個人や団体を顕彰する和島誠一賞を受賞した。二十四日、兵庫県西宮市で授賞式が開かれ、同会副会長の瀬川裕市郎さんと江藤幹夫さんが出席した。


 この賞は、我が国における文化財保存の先駆的存在である考古学者で岡山大学教授だった和島誠一(一九〇九~一九七二)を記念し、文化財保存全国協議会によって創設された。同協議会は、全国的な市民団体で、小笠原好彦さん(滋賀大学名誉教授)と橋本博文さん(新潟大学教授)が代表委員を務める。
 授賞は二〇〇〇年から毎年行われ、第1回の個人の部は、著名な古代史研究者の直木孝次郎さん(大阪市立大学名誉教授)が受賞。このほかにも、個人の部では作家の永井路子さんや、中世史研究者の峰岸純夫さん(東京都立大学名誉教授)も受賞している。
 団体の部では、国史跡八王子城とオオタカを守る会、靹の浦の世界遺産登録を実現する生活・歴史・景観保全訴訟団などが受賞している。
 今回の受賞に際し、高尾山古墳を守る会の杉山治孝会長は「大変に由緒ある賞なので、私達としては光栄に思っている。と同時に、責任の重さも感じる。なんとしても高尾山古墳を現状のまま後世に残し、沼津のシンボルとして市民に愛されるものとしたい。そのために、これからも頑張っていきたい」と話している。
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 同会の起源は、二〇一五年六月十二日。古墳のある金岡地区に暮らす杉山さんが有志を地区センターに集め、保存要望運動の開始を提案した。
 当時の市は、都市計画道路沼津南一色線建設のために高尾山古墳を取り壊す方針を表明しており、六月議会での取り壊し予算案可決を見込んでいた。このため、保存運動の当面の戦略として取り壊し予算案の可決阻止を目指すこととなり、杉山さんらは市議会に陳情書を提出する方針を決めた。
 六月十六日、杉山さんら金岡地区の有志による「高尾山古墳を守る市民の会」、瀬川さんを中心に学芸員などの考古学関係者で構成される「高尾山古墳を考える会」、インターネット上で署名活動を行う「高尾山古墳の保存を望む会(吉田由美子代表との三団体の連名による陳情書が市議会の浅原和美議長(当時)に提出された。
 同月三十日、市議会本会議で予算案の採決が行われ、二一対六の賛成多数で可決された。しかし、本会議の終了後、栗原裕康市長(当時)は記者団に対し、予算執行の一時停止と有識者協議会の開催を表明した。
 これを受けて同年九月以降に三回開かれた協議会では、古墳保存と道路建設の両立を原則とすることが打ち出された。この間、三団体は署名運動を展開したり、有識者による講演会を開いたりなどの活動を実施している。
 その後、一六年九月に陳情三団体が統合して現在の「高尾山古墳を守る会」が発足。その翌月に登場した大沼明穂市長(当時)による新市政でも両立路線は継承され、一七年十二月二十一日には、トンネルと橋梁を建設して古墳と道路を立体交差させる最終的な両立整備案が発表されている。
【沼朝平成30629()号】

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