沼津・議員定数削減
原点に立ち返った議論を
沼津市議会の議員定数(34人)をめぐる市自治会連合会の直接請求を受け、定数を21人に削減する議案が先ごろの最終本会議で否決された。同時に一部会派が議員発議した対案の28人案も成立要件の過半数に2人及ばず、議論は振り出しに戻った。
率直に言うと、議員を選ぶ市民が一番納得する定数になればいい。大切なのは、連合会や各会派が示す定数の根拠が市民にきちんと伝えられ、検証を経て選択されることだ。ただ、議会には市民の代表である自治会連合会が突きつけた問題意識の重みを受け止めてほしい。地域の声を市政に届けるために議員と両輪を担うべき組織のこうした動きを聞いた時、少なからず衝撃を受けた。
同連合会が3500世帯に実施したアンケートでは、現状を「多い」と答えた人は9割。21~25人を「適当」とした人は47%だった。この結果や傍聴で「議員が多すぎる弊害として、質問の重複などがみられた」として、質の向上を前提に少数精鋭化を求めている。定数21人は政令指定都市並みの人ロ1万人あたり議員1人の換算になる。
一方、議会が設置した議員定数等検討協議会は①28人②32人③現状維持ーに会派の意見が分かれたまま、昨年末に議論を終えた。28人は「4常任委員会など議会運営への影響を最小限に抑えられる」、32人は「組織によらない若年層や女性などが登場する機会を維持できる」などと根拠がある。議会は13人削減に「民意の反映、議会運営に支障が出る」と共通の懸念を示すが、連合会は「パブリックコメントや市長と語る会など市民参画の機会は増えている」と反論、運営面も委員会の兼務や統合整理で支障はないと反論している。
政府は法定議員数の上限撤廃などを盛り込んだ地方自治法改正案を今国会に提出し、名古屋市では市長が定数半減などを求めた市条例改正案が議会で否決された。「地域主権」の機運は高まるが、議員の権能や職責がよく見えず現場が戸惑っている印象も受ける。
沼津市の例を見ても、どの主張も一長一短がある。だからこそ、議会にしかできない仕事は何か、それを果たすのに何人必要なのかという基本的な議論に立ち返るべきだ。自治会連合会が直接請求に至った根底には、行革にとどまらない問題意識がある。論戦など本筋のやりとりだけでなく、開会の遅延理由や休憩の再開時間が分からないままに待ち続ける傍聴者にも目を向けてほしい。(東部総局・大須賀伸江)
(静新平成22年4月3日「湧水」)
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