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2025年2月12日水曜日
2025年2月11日火曜日
ニューヨーク大学C.V.スター講座.名誉教授 佐藤隆二 【静新令和7年2月11日(火)論壇】
ニューヨーク大学C.V.スター講座.名誉教授 佐藤隆二
トランプ米天統領の「米がガザ所有」の発言に、驚いて驚いてはならない。トランプ式ディール戦略のアナウンス効果を狙って、世界を驚かすための発言だからである。トランプ氏は就任早々、ガザ地区が「中東のリビエラ」になる可能性があるなどと発言していた。
地上げを手がけてきた不動産屋の考えることである。不良土地でも、また、多数の古い小住宅が密集している地域でも、「地上げ」をして住民を追い出し、新しい大きなビルをつくればカネもうけになる。またトランプ氏はパレスチナ人がヨルダンやエジプトに移住する案も時々口にしていた。だが200万人のパレスチナ人を追い出し米国がガザを所有する、とまで踏み込んだ今回の発言は予想されていなかつたので、世界のメデイアが一斉に報道した。
これほど踏み込んだ発言をした目的は二つある。一つはアナウンス効果として、たとえ実現性がなくても、取引の最大の上限を示してディールトランプ米天統領の「米がガザ所有」の発言に、驚いてえ実現性がなくても、取引の最大の上限を示してディールを有利に進める目的のため。
もう一つは、イスラエルのネタニヤフ首相の今後のイスラエルにおける政治的地位を強化するためである。
こうしたトランプ発言に対して、米政権内では早くも取引の上限を修正し始めた。ルビオ国務長官は、ガザ地区の再建が終わるまでの一時的な米国の駐留に過ぎないとガザ所有発言の意味を修正した。また、「米国は金は出さない」、「軍事的介入もしない」と、この点でも最終的なディールの上限を下げ始めている。ともあれパレスチナ人を追い出す、とする構想は非現異的である。
1948年のイスラエル建国に伴って75万人のパレスチナ人が難民となった。パレスチナ人はイスラエル建国の翌日にあたる5月15日をアラビア語の「大惨事」を意味する「ナクバ」と呼ぶ記念日にしでいる。今回のトランプ発言で「第二のナクバ」は絶対に許さないとしている。
米国とイスラエルの正式な関係は48年のイスラエル建国に始まったが、ユダヤ系住民と米国人の関係は米国の植民地時代にまでさかのぼる。ユダヤ系の人たちが最初に米国に移住したのはスペインとポルトガルからであった。次いでドイツ・ロシアなどの東欧諸国からのユダヤ人が移住し、第2次世界大戦のホロコトスト時代に急増した。だが、米国においても欧州同様、ユダヤ主義がキリスト教徒たちの地下水脈として意識下に流れていた。
世界のユダヤ人人口は約1400万人で、イスラエルに約630万人、米国に約570万人と約9割がこの2力国に在住している。ユダヤ系の人口は米国人口の2%に過ぎないが、各分野で著名人を輩出している。例えば世界の学会についていえば、1901~2023年の間に965人にノーベル賞が与えられたが、そのうちユダヤ系は214人(約22%)である。
この他、理論物理学者アインシュタイン、映画監督スピルバーグ、マクドナルドの創業者クロック、グーグルのぺイジ、メタのザッカーバーグなどの諸氏の名前を挙げれば切りがない。要ずるにユダヤ系が世界の動きの一部を支配しているのだ。
【静新令和7年2月11日(火)論壇】