千本松原を守りましょう 林茂樹
沼津市は、市立ときわ保育所の子どもたちや住民の命を津波から守る津波避難施設として、千本松原の一画(ときわ保育所と中部浄化プラントの間)に、来年三月の完成予定で、「人工高台」を造成する工事に着手しようとしています。
計画では松を伐採し、田子の浦港の浚渫(しゅんせつ)土にセメントを混ぜて盛り土し、標高一五メートルの「築山」を造成するとのことです。
千本松原は、戦国時代に、戦乱によって伐採されたものの、増誉上人(乗運寺の開山)が住民と力を合わせて復元した松原だと伝えられております。また、大正十五年には、この千本松原の松を伐採しようとした県の計画に、歌人若山牧水は住民と共に反対する運動に立ち上がり、この計画は中止されました。
住民によって植えられ、幾世代もの人々によって守られてきた千本松原は、沼津市にとってかけがえのない大切な財産です。津波から住民の命を守るためとはいえ、住民が植え、育て、守ってきた千本松原の松を伐採せねばならないのでしょうか。松を伐採せずに住民の命を守る方法はあるはずです。皆で知恵を絞るべきだと思います。
そこで、沼津市当局に松を伐採せずに済む方策を求めてまいりましたが、太い松の移植には二年間の根回しが必要で、来春の「築山」完成に間に合わないので、一部を除き、二本立ちの太い立派な松をはじめ、数十本の松を伐採するとのことです。
静岡県第四次地震被害想足の沼津市「津波ハザードマップ」によれば想定津波高が五㍍であるのに対して、ときわ保育所前の防潮堤の高さは八㍍強です。
津波が防潮堤を越えることは想定されていません。
また、ときわ保育所の標高は約六㍍で、予想浸水深は沼津港側からの浸水による三〇㌢です。複合施設の保育所二階には標高一〇㍍の常盤町自治会館が併設され、ここが避難場所になり得ます。
それよりも沼津港の周辺地域の予想浸水深四㍍乃至(ないし)八㍍の住民の津波避難を考えることこそ緊急を要するはずですが、この対策は未定で、「築山」は、この地域の人たちのためのものではないということです。
この「築山」の造成が、沼津の宝・千本松原の松を数十本も伐採して行わなければならないほど緊急を要する事業でしょうか。松を移植するか、設計を変更すれば、松に囲まれた美しい「築山」が造成できるはずです。千本松原の松を伐採しないでください。
◇
十月三日、この要望書「千本松原を守りましょう!」を栗原裕康沼津市長に提出しました。
同日、沼津市議会地震・津波対策調査特別委員会が急遽開催され、傍聴しましたが、当局は、松の伐採を避けるための設計の変更も松の移植の意を示すこともありませんでした。
驚いたことに、地元常盤町に住む議員を除き、松を伐採して「築山」を造成するという説明を受けている議員がいなかったことが分かりました。
沼津市民の大半が、沼津の宝である千本松原の松が伐採されることを知らなかったはずです。
孔子の言葉を引きます。
「過ちては改むるに憚(はばか)ることなかれ 過ちて改めざる是を過ちという」(論語)
「千本松原を守りましょう!」の署名運動を始めました。皆さま、ぜひ賛同してください。
署名用紙は沼津市若山牧水記念館にあります。
(千本山乗運寺住職、沼津牧水会理事長)
(記事:沼朝平成26年10月7日号「言いたいほうだい」)
参照:要望文
参照:要望文
沼津市長 栗原裕康様
千本松原を守りましょう!(要望)
沼津市は、ときわ保育所の子どもたちや住民の命を津波から守る津波避難施設として、千本松原の一角(ときわ保育所と中部浄化プラントの間)に、来年3月の完成予定で、「人工高台」を造成する工事に着手しようとしております。千本松原の松を伐採し、田子の浦港の浚渫土にセメントを混ぜて盛土をして、標高15メートルの「築山」を造成するとのことです。
千本松原は、戦国時代に、戦乱によって伐採されたものの、増誉上人(乗運寺の開山)が住民と力を合わせて復元した松原だと伝えられております。
また、大正15年には、この千本松原の松を伐採しようとした県の計画に、歌人若山牧水は住民と共に反対する運動に立ち上がり、この計画は中止されました。
住民によって植えられ、幾世代もの人々によって守られてきた千本松原は、沼津市にとってかけがえのない大切な財産です。津波から住民の命を守るためとはいえ、住民が植え、育て、守ってきた千本松原の松を伐採せねばならないのでしょうか。松を伐採せずに住民の命を守る方法はあるはずです。皆で知恵を絞るべきだと思います。
そこで、沼津市当局に松を伐採せずに済む方策を求めて参りましたが、太い松の移植には2年間の根回しが必要で、来春の「築山」完成に間に合わないので、一部を除き、二本立ちの太い立派な松をはじめ、数十本もの松を伐採するとのことです。
静岡県第4次地震被害想定「津波ハザードマップ」によれば、海岸の想定津波高は5メートルで、防潮堤の高さは8メートル強です。津波が防潮堤を越えることは想定しておりません。ときわ保育所所在地の標高は約6メートルで、予想浸水深は沼津港側からの浸水による30センチです。保育所2階の標高10メートルの常盤町自治会館が避難場所になり得ます。
沼津港の周辺地域の予想浸水深4メートル乃至8メートルの住民の津波避難を考えることこそ緊急を要するはずですが、この対策は未定であり、「築山」はこの地域の人たちのためのものではないということです。
この「築山」の造成が、沼津の宝・千本松原の松を数十本も伐採して行わなければならないほど、緊急を要する事業でしょうか。松を移植するか、設計を変更すれば、松に囲まれた美しい「築山」が造成できるはずです。千本松原の松を伐採しないでください。
平成26年10月3日
千本山乗運寺
住職 林茂樹
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