駿河湾フェリー赤字脱却できず撤退
DC、五輪控え 観光に「痛手」県など存続探る声も
2019年3月末での撤退が25日発表された駿河湾フェリー。清水港(静岡市清水区)と土肥港(伊豆市)を結ぶ重要な観光ルートの役割を担ってきたが、赤字続きの経営体質から脱却できず、16年間の歴史に幕を下ろすことになった。19年春の大型観光企画デスティネーションキャンペーン(DC)や20年東京五輪を控えたタイミングでの決断に、観光関係者は落胆。海上県道に認定するなど事業を後押ししてきた県や地元行政からは、航路維持の可能性を探る言葉も聞かれた。
「足元の厳しい業績を踏まえると、苦渋の選択をせざるを得なかった」。運営会社エスパルスドリームフェリーの鈴木洋一社長は無念さを隠さなかった。
同社によると、県道223号線の認定や富士山世界遺産登録の効果で13~14年は旅客数が伸びたものの、一方で燃料費の増大に足を引っ張られた。その後は原油価格が落ち着いたが、伊豆縦貫道など道路整備の進展もあって旅客数の減少に歯止めがかからず、直近は燃料費の再上昇が経営を圧迫していた。
DCに向けて今月15~17日に県内で開かれた全国宣伝販売促進会議では、同フェリーを紹介した観光素材集が配布されたばかり。県観光協会の橋本勝弘専務理事は「訪日客にもアピールできるルートだけに残念」と吐露。伊豆市観光協会土肥支部の後藤一之支部長は「土肥への交通手段が一つ失われるのは、誘客面で大きな痛手。伊豆半島ジオパークが世界認定され、東京五輪も控えている。何とか航路を継続してもらいたい」と語った。
静岡市の田辺信宏市長は航路の存続に関して「行政としてどんなことができるか議論を始めたい」と説明し、財政的な支援も「一つの検討材料だ」と述べた。伊豆市の菊地豊市長は「県や周辺自治体と対応を検討したい」とコメントした。
県庁で取材に応じた川勝平太知事は「追い風が吹いている中だけにつらい」と述べた。同時に「何とか継続する方向で考えたい」と強調し、早急に対応を図る考えを示した。県は県道認定の扱いも関係部局で協議する。
【静新平成30年5月26日(土)朝刊】
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