2025年1月27日月曜日

 しずおか遺産 歴史文化理解の機会に 【静新令和7年(2025年)1月27日(月曜日) 社説】

 


 しずおか遺産 歴史文化理解の機会に

 静岡県は県内の歴史文化資源の魅力をストーリー仕立てで紹介する「しずおか遺産」として新たに小山町、富士宮市の「富士山の清流が織り成した産業革命」、牧之原市、藤枝市、焼津市、吉田町の「田沼街道とまぼろしの城」を認定した。

 2022年度に創設された同制度の認定は7件になった。史跡、建造物、無形文化財といった複数の歴史資源を市町の境をまたいで整理し、分かりやすく紹介するのが制度の趣旨だ。

 認定されたしずおか遺産は観光活用とともに、県民の歴史文化への理解促進、文化財保護への関心の向上に役立てられる。教育活動のツールとしても可能性を秘めている。文化庁が認定する「日本遺産」の次期募集時の候補という意味合いもある。県は関係市町と連携し、認定後の活用、活動を伴走支援してほしい。認定はゴールではなくスタート地点と「言えよう。

 新規2件は「富士山麓の水とそれを活用した産業」「江戸時代の老中田沼意次が作った街道」という明確な切り口を設けている。特に後者は今年の大河ドラマの登場人物を扱っており、タイムリーな認定と言えよう。それぞれ20件前後の構成文化財を揚げ、地域をアピールする。歴史講座や体験会の開催、ツアー商品や関連グッズの開発などを目指すという。

 23年度までに認定された案件同様、複数市町の生涯学習や文化財の担当者、民間の観光関係者らでつくる活用推進連絡会が事業を担う。広域連携の難しさはあろうが、構築した「物語」の価値を共有し、効果的な情報発信を続けてもらいたい。PRや事業の費用補助など、県の支援拡充も求められる。

 認定された7件をみると、構成文化財が広域に点在しているケースが多い。例えば22年度認定の{秋葉信仰と街道」」は湖西市から御前崎に至る広大なエリアに48の建造物などが点々と存在する。新認定の「富士山の清流ー」は文化財の集中地域が富士山をはさんだ東と西に分離している。

 物語としての説得力を高める上で構成文化財は一つも欠かせないという心情は理解できるが、訪ね歩く旅行者の利便性を考えるなら一考が必要だろう、文化財が集中するエリアに名前を付け、エリアとエリアを結ぶ交通手段や移動時間の目安を提示するなどの工夫がほしい。

 しずおか遺産は一日本遺産のローカル版」という全国でも珍しい試みだ。創設から3年経過ずるが、認定した「遺産」はもちろん、しずおか遺産そのものの知名度向上も課題だ。試行錯誤を重ねながら、地域の魅力を発信する「装置」としての力を強めたい。

【静新令和7(2025)127(月曜日) 社説】



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