スカンジナビア号のふね遺産認定
資料館の前島館長らが市長報告
西浦木負のカフェ&ランチ海のステージに開設されているスカンジナビア資料館の前島希久也館長と信州大学名誉教授の伊藤稔さんは、9月24日に東京都で開かれた日本船舶海洋工学会による「ふね遺産」の認定式に出席し、認定証を受けたことから2日、市役所を訪れて頼重秀一市長に報告した。
同学会では、歴史的で学術的・技術的に価値のある船舟類や、その関連設備を文化的遺産として次世代に伝えようと「ふね遺産」に認定。今年で9回目を迎える認定審査が行われ、6月16日付でスカンジナビアが認定された。
スカンジナビア号は、ディーゼルエンジン搭載のクルーズ客船「ステラ・ポラリス」として1927年にスウェーデンで建造。以来、世界の海で活躍し、69年に日本企業に売却されて木負に係留され、フローティングホテル・スカンジナビアとして営業開始。長年市民に親しまれ、その後、レストラン事業に業態を変更したが、2006年に営業を終了。
前島館長が中心となって「スカンジナビアを保存する会」を組織し、保存を訴える署名活動等が行われたが、同年にスウェーデン企業への売却が決まった。同年8月31日、タグボートに引かれて木負を出航したが、浸水が始まり、9月2日に和歌山県沖で沈没した。
前島館長は、スカンジナビア号元船長(支配人)の故安楽博忠氏から譲り受けたステラ・ポラリスの航海日誌など縁の品、思い出の品を集め、スカンジナビア号資料館を店内に設けて一般公開。「伝説は今も生き続けている」と、スカンジナビア号の思い出や伝説を語り継ぐイベントを定期的に開いてきた。
ふね遺産の認定審査申請には「ヘダ号」再建プロジェクト副代表の伊藤さんが関わった。伊藤さんは戸田地区でヘダ号の「ふね遺産」認定に尽力し、2019年度に認定された。その後、スカンジナビア号のことを知り、ふね遺産認定の可能性を探ったところ、資料が保管されていて、住民による活動があることから対象となることが分かり、前島館長らと相談して申請の手続きを行った。
同学会による「ふね遺産」の認定は53号目で、非現存船では第13号。日本初のフローティングホテル・レストランとして日本のレジャー産業の創設と地域振興に多大な貢献を果たしたことや、世界的にも貴重な船舶海洋文化遺産として、地域住民による自発的な保存運動を呼び起こし、現在も、その活動が続けられていることなどが評価され、認定された。
前島館長は頼重市長に対して、「ぬまづの宝100選」にスカンジナビア号が選ばれたことを感謝するとともに、ふね遺産認定に関わった多くの人の協力に触れながら、「船は沈没してしまったが、店内に保管していた資料が、ふね遺産認定に役立った。認定証は店内に飾り、これからもスカンジナビアの思い出とともに、日本一の景色だと思う海越しの冨士山の魅力も伝えたい」と話した。
伊藤さんは、沼津では「ヘダ号に次ぐ栄誉」だとたたえ、「スカンジナビア号は非現存船としての認定となったが、海底に現存している。ヨーロッパには『水中ふね遺産の認定』があるが、日本では現存船と非現存船で分けられている。今回のスカンジナビア号の認定で『海底に沈んだ船』という新カテゴリーについて学会で議論するきっかけにもなった」と説明。
また、今回の認定を記念し、伊藤さんは「文化的・産業的遺産として後世に継承するため、木負海岸に解説文と写真を載せた記念碑の建立を」と要望すると、頼重市長は「記念碑も含め、ふね遺産のPRの仕方については、これから検討していく」と答えた。
【沼朝令和7年10月3日(金)号】
0 件のコメント:
コメントを投稿