2024年11月29日金曜日

ユニチカ祖業の繊維撤退 全役員辞任官民機構入り 金融支援は870億円 【静新令和6年(2024年)11月29日(金曜日)】

 


 ユニチカ祖業の繊維撤退 全役員辞任官民機構入り 金融支援は870億円

 ユニチカは28日、祖業の繊維事業から撤退すると発表した。衣料繊維、不織布、産業繊維の各事業を20258月までに売却する。三菱UFJ銀行などが約430億円の債権放棄に応じ、官民ファンドが約200億円を出資し筆頭株主となる。融資枠を含めた金融支援の総額は計870億円となり、構造改革を進める。上埜修司社長ら全取締役が254月下旬をめどに辞任する。社外取締役は除く。

 ユニチカの繊維事業は低迷が続き253月期の連結純損益は2年連続の赤字を見込む。帝人、東レといった国内繊維大手が高機能繊維や派生技術による新領域に転換する中、対応が遅れていた。

 取引行が債権放棄に合意後、臨時株主総会を経て254月に官民ファンドの地域経済活性化支援機構(REVIC)が議決権付き優先株を取得し、現在の全取締役が辞任。REVICなどが新しい取締役を派遣する。

 ユニチカは従業員の雇用継続を念頭に繊維事業の売却先を探す。今後、世界トップレベルのシェアを持つ食品包装用フィルムなどの高分子事業に注力する。

 大阪市で記者会見した上埜氏は撤退理由について、19年ごろから原材料や燃料価格の高騰で事業環境が悪化し「幾度にわたる構造改革を行ってもなお抜本的な完遂に至らなかった」と釈明。REVICの渡辺准社長は支援の意義を「中小企業との取引が多く、破綻すれば地域経済への影響が大きい」と話した。

 ユニチカは日本の繊維産業をけん引したが、近年は中国などとの競争が激化し、業績が低迷。14年にも金融支援を受け、工場の閉鎖や事業売却を進めたが、赤字体質が続いていた。

 

 多角化成功せず構造改革出遅れ

 130年を超える歴史を持つユニチカが祖業の繊維事業から撤退する。中国が低価格で攻勢をかける中、競合他社の東レや旭化成は合繊技術から派生した付加価値の高い製品を開発し成長。ユニチカも多角化を進めたが、成功したとは言いがたくじり貧に陥った。上埜修司社長は「新しい見方や経営陣の力を借りて、ユニチカの再生を図りたい」と声を絞り出した。

 ユニチカは1889年に尼崎紡績として創業し、高級糸である中糸の生産を始めた。戦後復興期から高度経済成長期にかけ、基幹産業として日本経済の発展に貢献。ただ、2000年前後から衣料用を中心に中国からの輸入品が急激に増加し、厳しい状況が続くようになった。

 14年ごろに構造改革を進め事業の再編を進めたが、業界他社はすでに炭素繊維といった高機能繊維を活用し、自動車や航空機に使われる部品など新領域を拡大。ユニチカの出遅れは明らかだった。

 旭化成は電気自動車(EV)に搭載するリチムイオン電池の主要材料セパレータなどの生産を進め、東洋紡は工業用フィルムや自動車用高機能樹脂の素材の売り上げにより利益を確保している。ユニチカは食品包装用フィルムで高いシェアを持つが、収益の抜本的な改善には新たな成長分野が必要で、前途は多難と言えそうだ。

【静新令和6(2024)1129(金曜日)





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