2013年9月26日木曜日

沼津鉄道高架問題 先延ばしせず決着図れ

静岡新聞 社説<2013 .9.26="">

沼津鉄道高架問題 先延ばしせず決着図れ

 沼津駅付近鉄道高架事業をめぐり、事業主体の静岡県が進めている住民参加型の合意形成作業パブリックインボルブメント(PI)は最終段階に入る。現計画と、県が絞り込んだ7種類の代替案の中から推奨案を選定し、川勝平太知事に提示する。

 PIに対しては高架化の推進派に限らず地元からは結論の先延ばしとの批判が出ている。県は7月の県議会建設委員会でPI 終了後、年内には方向性を示す方針を明らかにした。事業は認可を受けてから7年間も足踏み状態が続く。PIの結果を踏まえ、川勝知事にはできるだけ早い決断を求めたい。

 鉄道高架をするか。橋上駅にするか。県の代替案はこの2パターンに大別される。鉄道高架には貨物駅移転は不可欠だが、移転先となっている原地区の地権者が反対し、前に進まない状況が続いているため、貨物駅を近くの駅に統合する代替案も示されている。

 橋上駅にすれば、難題の貨物駅移転の必要はなくなる。ただ、総合コンベンション施設「プラサヴェルデ」や再開発ビル「イーラde」の建設などの沼津駅周辺総合整備事業は鉄道高架を前提に進められていることを忘れてはならない。都市計画決定の変更にも時間がかかるのは必至だ。

 6月の知事選で再選を果たした川勝知事は鉄道高架は進めると公約に掲げた。その一方で貨物駅移転を計画している原地区の土地は強制収用しないと従来の姿勢は変えることはなかった。

 川勝知事は富士市内の製紙工場跡地に貨物駅の移転を示唆したこともあるが、ここには火力発電施設の建設が決まった。そうなると、貨物駅を近くの駅に統合する代替案が川勝知事の意に沿うとも思われるが、JR貨物側がすんなり受け入れるとは思えない。

 PIは終盤になっても推進派、反対派の議論は平行線のままで、溝が埋まる気配はなく、推奨案を一つに絞り切れない。川勝知事はPIの結果を尊重すると述べている。複数の案を出すにしても優先順位を付けなければ、協議を重ねてきた意味がない。

 沼津市は貨物駅移転地の買収が約70割にとどまったため、強制収用に向けた調査に入ったが、川勝知事の誕生で打ち切りになった経緯がある。その後の県の有識者会議でも高架事業は妥当の判断が下された。一方で都市計画決定後では異例なPIも採用した。

 現計画にしろ、代替案にしろ、だれもが納得する決着は難しい。最終的には知事が決断するしかない。協議のためにこれ以上、時間と税金を使うことは許されない。


《静新平成25926()朝刊》

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