大手町地区再開発ビル
辞退6社は提案の困難さ指摘
条件や保留床処分の厳しさなど
市議会建水委でも不安の声事業提案、なぜ1社だけ
大手町地区第一種市街地再開発事業の骨格をなす再開発ビルの建設。市当局は、沼津駅鉄道高架事業を中心とした沼津駅周辺総合整備事業の先駆けとして、同ビルの二〇〇六年早期オープンを予定していたが、建設計画は西武百貨店の出店辞退以来一年近く迷走を続けている。市は業務委託コンサルタントとともに西武に代わるテナント誘致を模索していたが、冷え込んだ消費経済状況下、一向に入居テナントは見つからず、窮余の策として特定業務代行者を公募したが、提案したのは一社だけ。特定業務代行者とは、「民聞能力の活用による市街地再開発事業の推進について」という一九九六年七月に出された建設省(現国土交通省)通達を根拠とした制度。
市は事業の実現を図る上で、民間業者の積極的な参画による円滑な事業推進、完成後の施設建築物の健全経営を目的として同代行者を十一月に募集した。これに関する説明会には大手ゼネコン七社が参加。市は各社から事業計画案が提出されるものと期待したが、提出したのは竹中工務店一社のみという結果となった。期限の一月七日までに提出された竹中工務店案を市の特定業務代行者選定委員会が検討し、斎藤衛市長に答申する。この重要な責務を任された同委員会は、きょう十五日、市役所で開かれる。これに先立ち、十四日には市議会建設水道委員会と沼津駅周辺総合整備事業促進特別委員会の臨時協議会が開かれ、当局が竹中から提出された二案を説明した。これは、再開発ビルの行方に市議会が重大な関心を抱いていることの証明で、選定委だけに任せておくべき問題ではないとの強い意思の表れと言うことができる。建水委の委員の一人は、「まさか一社だけだったとは。七社のうち、せめて三社あれば計画案の比較検討が出来るが、一社だけでは」と落胆の色を隠さない。また、他の委員は「一社あったというが、この経済状況の中では、やれるところはないのではないか。住宅や商業施設への入居者まで含めて代行者が貢任を持たされる訳だから、困難極まりない」と話す。市が代行者に提示した条件とは、一、保留床(権利者が取得する権利床以外の床)の処分協力、二、市が提案した建築計画(商業施設、事務所、約四百四十台分の駐車場、約百戸の住宅)に基づく施設建築物実施設計への協力、三、施設建築物の建設工事及び既存建築物などの解体除去と整地工事、四、その他事業推進に対する協力。事業提案を辞退した六社のうち五社は、「条件が厳しすぎる」「前向きに取り組んだが、我が社は建設会社。保留床の処分が最大のネックとなった」「枠組みが提示されていたので(自由な図面が描けず)難しかった」「住宅販売とかテナント誘致の難しさという個別の理由ではなく、トータル的に考えた」「条件提示が困難なため」を理由に挙げた。また、残る一社は「沼津市からの今回の事業計画案の公告は、保留床(住宅部分・商業部分)を将来にわたって特定業務代行者として責任を持って処分する案を一月七日までに提出することが主として求められ応募した。公告後、積極的に保留床の処分先を検討したが、遺憾ながら期限内にめどが付かない見通しとなり、沼津市に対し断念を申し入れ、辞退届を提出した」と、FAXで回答。この社は、「古い話だから」と計画が持ち上がった時点からの時問経過の長さを指摘。計画白体、時代に合っていないことを示唆した。また、他の一社は取材に対し、「仕事は欲しいから、コンサルタントに依頼してテナントを探すなど必死でやったが、現時点で入居を約束してくれるテナントは見つからなかった」と、オープンが四年ぐらい先になる事業では出店を約束出来ない現在の流通販売業界の不透明さを話した。取材で得た各社の辞退.理由を伝えたところ、市再開発課の担当者は、「それほど厳しい条件だと思わないが」と六社と隔たった感想を語った。建水委では、当局からの竹中案説明後、委員から「現在の経済状況で、市が提示した計画案が困難だったのではないか」「事業提案したのが、なぜ一社だけだったのか」「売り場面積が当初案から減少している点について、商店街は承知しているのか」「特定業務代行者の選定委員は誰か」などの質問が出されたという。「なぜ一社だけだったのか」について当局は、住宅部門を引き受ける会社がなかったことを理由に挙げたようだが、大都市と違い、市内ではマンションの売れ行きに光が見えない状況にあるのだろうか。また、竹中案を採用することになった場合、市当局が竹中側と詰めを行う中で、中心市街地活性化の起爆剤とならないと判断すれば、「撤退もあり得る」との考え方が委員側に示されたことも伝わる。委員の一人は、「プロが代行者選定委員にいるのならともかく、弁護士や税理士ら門外漢に選定を任せるとは。市は何を考えているのか、『ふざけている』の一語に尽きる」と憤る。以前、大手ゼネコンに籍を置き、再開発ビル業に精通する業界関係は、横浜市保土ケ谷の開発ビルを例に、「大都市の横浜でさえ、再開ビルに入るテナントがなく、貸し部屋にするなどして、しのいでいる。地方都市の沼津でテナントの入り手がいないのは当然のことだ」と話す。また、「一社だけとうのも不思議な話だ」とし、ストレートにうけ止めることができない心情を示している。建水委では、選定委会の答申が市長に出された後、再度、協議会をき、竹中案について検するという。
(沼朝平成16年1月15日号)
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