2012年8月15日水曜日
震災がれき処理 大澤敏夫
震災がれき処理 大澤敏夫
東日本大震災により発生したがれきの処理を巡っては様々な議論があり、どういう処理・処分が被災地の復興に効果的なのか、非常に分かりにくい。
そういう中で、県内では島田市はじめ複数の市町が霞災がれきの受け入れを表明している。絆とか人道的支援とかの言葉は美しいけれど、受け入れ側での放射性物質拡散の問題がないがしろにされてはいないだろうか。
裾野市では、がれきを焼却した灰を須山の最終処分場に埋め立てるというが、須山は柿田川湧水の水源涵養地である。このような場所に放射能で汚染された灰を埋め立てること自体、論外である。
灰は遮水シートを敷いた管理型処分場に埋め立てるので地下に浸透する恐れはないとか、仮に地下浸透したとしても日量一〇〇万㌧余の地下水で希釈されるので心配ないという説明だが、果たして本当に心配はないのだろうか。
処分場の遮水シートが破れることはないのか。大量の湧水で希釈されるというが、汚染物質が均質に希釈されるという想定は正しいのか。放射能汚染は、希釈すれば基準値以下にもなる化学物質とは性質が異なり、微量といえども放射能に汚染された水を一生涯飲み続けた場合の低線量被ばくの影響が怖い、といった、私達が素朴に抱く疑問や不安に対して、行政は真摯に答えていない。
根拠が薄弱で、不確実な知見を示して「納得せよ」と迫り、市民の生命や健康を第一に考える姿勢はうかがわれない。
静岡県東部の四十数万人が飲用する柿田川湧水は、世界遺産への登録を目指す富士山の東南麓に降った雨が浸透した、限りなく清澄であるべき地下氷である。それゆえ高い精神性さえ追求されてしかるべき地下氷脈が放射能汚染されることに深い考慮を払おうとしない県環境局幹部職員の対応は期待はずれであった。
全国でも静岡県東部ほど、水量豊かなおいしい飲み水に恵まれた所はないと断言できる。私達はこの恩恵に感謝し、貴重な天然資源を守り抜く気概を持つべきである。行政の言葉足らずの脱明に唯々諾々と従うのでなく、疑問を感じたり、不明な点は問い返すことが肝要である。
がれきを受け入れる側で環境汚染や健康被害を招きかねない場合でも、人道的支援として協力を求められるとすれば、送り出す側、受け入れる側の双方にとって幸福なことと言えるだろうか。
震災がれき問題の本質は様々な要素が輻輳(ふくそう)し、私達が解決を見出すのは容易ではない。
そこで、私達とは別の視点から問題を究明する研究者から話を聴く講演会を開くことにした。講演を聴き、この問題を解く手がかりが得られたらと思う。
この講演会には県環境局幹部職員、柿田川湧水の恩恵に浴する市町の首長、議長、職員の皆さんを招待している。それは行政、議会、住民が気持ちを一つにして震災がれきの処理・処分の問題に対処してほしいとの思いからであり、この間題に対する理解と認識を共有したいからだ。
多数の皆さんの聴講を期待します。
◇
講演会「がれき処理・除染はこれでよいのか」
▽日時=八月二十六日(日)午後二時
▽会場=市立図書館四階視聰覚ホール
▽講師=明治学院大学 熊本一規教授
▽入場無料
▽主催=同講演会開催実行委員
▽問い合わせと申込先=実行委員会(電話九三一ー二九〇四「ぬまづ市民自治研」内)(ぬまづ市民自治研究会員)
(沼朝平成24年8月15日号「言いたいほうだい」)
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