大自在
気象庁が狩野川台風(1958年)並みの大雨になると警告した台風19号。各地に記録的な豪雨をもたらし、河川氾濫や土砂災害を引き起こした。住宅の浸水被害は昨年7月の西日本豪雨を上回る規模になった▼その狩野川では決壊や越水が起きなかった。それは途中かち分流して駿河湾に流す狩野川放水路の効果が大きい。国土交通省沼津河川国道事務所によると、放氷路からの放流による分流効果によって、狩野川下流での水位は放水路がなかった場合より1・85㍍低かったとみられている▼しかし予報通り流域にも大雨は降っていた。湯ケ島雨量観測所(伊豆市)での総降水量をみると、狩野川台風の時が739㍉だったのに対し、台風19号の際には778㍉だった。適切な治水対策が施されていれば住民の命と財産を守れることがよく分かる▼その放水路建設の背景に、狩野川台風での貴い犠牲があったことを忘れてはならない。工事は51年から始まったが、順調に進まず台風襲釆に間に合わなかった。流域だけで死者・行方不明者853人に上った台風被害を受け、放永規模を拡大した上で工事の迅速化も図り、65年に完成した▼台風19号で狩野川に氾濫はなかったとはいえ、周辺の河川では氾濫が起きている。気候変動の影響で経験したことがない大雨が降るリスクも高まっている。河川整備が進んだからと防災息識を緩めてはいけないのは明らかだ▼自分のいる場所の水害リスクを知り、いざという時に何をすべきかという準備は欠かせない。教訓を語り継ぐとも重要だ。―2019・10・24―【静新令和1年10月24日(木)朝刊】
狩野川
放水路本川氾濫防ぐ
台風19号、効果は7900億円
県などが主催する中部地方治水大会が23日、静岡市駿河区で開かれた。国土交通省中部地方整備局は同局が取り組んでいる事業の説明の中で、台風19号による狩野川の被害について、狩野川放水路が本川の氾濫を防いだことによる被害防止効果は約7400億円と推定されると明らかにした。
同局の宮武晃司河川部長が台風19号での治水事業の効果を発表した。宮武部長は、狩野川放水路がなければ狩野川本川のさまざまな場所で越氷や決壊が発生し、甚大な被害が出た可能性があったと指摘。狩野川支流域で浸水があうたが、本川の大きな被害を防止したことにより約1万6千
戸の家屋浸水や鉄道、道路の浸水被害を防いだとした。
狩野川放水路は1951年に着工されたが、58年の狩野川台風で甚大な被害が出たため、計画を見直した上で65年に完成した。事業費は現在の価値で約300億円。
宮武部長は台風19号についてさらに、焼津市から牧之原市にかけての駿河海岸に海岸保全施設がなかったら約5千戸の家屋と約700の事業所に浸水被害が発生したと説明。焼津市と吉田町、牧之原市を高波被害から守った効果は約2900億円とした。
大会では、牧之原市の杉本基久雄市長と小野登志子伊豆の国市長も地域の防災対策をテーマに意見発表した。
(政治部・名倉正智)
【静新令和1年10月24日(木)朝刊】
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