選抜高校野球中止
「選手の健康最優先」
新型コロナ 高野連、無観客一転
日本高野連は11日、 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、大阪市で第92回選抜高校野球大会の臨時運営委員会を開き、兵庫県西宮市の甲子園球場で19日から無観客で開催方針だった選抜大会の中止を決めた。選抜大会は太平洋戦争の影響で1942~46年に中断したが、予定されていた大会が中止となるのは初。本県の加藤学園が初出場する予定だった。
日本高野連は、中止を決定した理由について「出場選手の健康、安全が最優先」と説明。「新型コロナウイルスの感染者が増加する状況を鑑みた」とした。休校などにより、安全対策や練習の実施状況などで、出場校の間で足並みがそろっていないことも理由に挙げた。
日本高野連の八田英二会長は「高校野球は学校教育の一環。何とかやりたい気持ちも持っているが、それができない苦しい決断を理解してほしい」と話した。大会に出場予定だった学校に対し「何らかの形で甲子園に来ていただけたら」と救済措置を検討していることを明らかにした。
安倍晋三首相は2月26日にスポーツイベントなどの自粛、規模縮小を要請。27日には3月2日から全国の小中高などを一斉臨時休校にするよう要請する考えを表明した。10日にはイベントの実施自粛を10日間程度、延長するよう求めた。日本高野連は4日の選抜大会運営委員会と臨時理事会で、無観客開催の方針を示し、11日に開催可否の最終判断をするとしていた。
今回の選抜大会の出場校は、加藤学園のほか、履正社(大阪)や「21世紀枠」の磐城(福島)など32校だった。プロ野球が開幕を延期し、サツカーJリーグは公式戦の再開延期を決めた。野球を除く高校スポーツは5日までに全ての全国大会が中止となるなど、スポーツ界では自粛の動きが広がっていた。
夏の全国選手権大会は、1918年の第4回大会が米騒動で、41年の第27回大会は戦局が深刻化したために中止となった。42年から45年までは中断し、46年の第28回大会から再開した。
加藤学園「夏へ思い強く」
第92回選抜高校野球大会への初出場が決まっていた加藤学園(沼津市)。夢舞台への扉は目前で閉ざされた。ナインは11日、沼津市内のグラウンドで練習中に大会中止の知らせを受けた。グラウンド整備を済ませ、集合した選手たちは、米山学監督の言葉に取り乱すことなく、目を見開いて聞き入った。
記者会見した米山監督は「どういう形であれ全て受け入れようと思っていた。生徒とともに切り替えてやるしかない」と話した。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、高校スポーツの全国大会は相次いで中止に。「僕らだけ野球をやっていていいのかと言われる中、生徒は複雑な思いでやってきたと思う」。選手を気遣い、瞳を潤ませながらも「この現実を受け止める強さを、生徒にも持ってもらいたい」と語った。
勝又友則主将は「(中止を)聞いた瞬間は正直、何も考えられなかった」。この日、身にまとったのは野球部OBで、プロ野球西武の高橋朋己投手から部員に贈られた選抜出場記念Tシャツ。「応援してくれる人に感謝の気持ちを忘れないように」としっかり前を見据え、「夏の甲子園に行きたいという思いはどの高校よりも強くなった。その思いを練習にぶつけたい」と厳しい試練に立ち向かう覚悟を言葉に込めた。
(運動部・結城啓子)
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