↑動画は毎日新聞
白血病から復活
100トメル1バタフライV
池江東京五出場へ
「努力は必ず報われるんだ」
400メートルメドレーR代表
白血病からの完全復活を目指す競泳の池江璃花子(20)=ルネサンス=が4日、東京五輪代表に決まった。選考会を兼ねて東京アクアティクスセンターで行われた日本選手権の女子100㍍バタフライを57秒77で制した。日本氷泳連盟が定めるこの種目の派遣標準記録(57秒10)は破れなかったが、400㍍メドレーリレーの選考基準を満たした。
2019年2月の病気判明から2年余り。24年パリ五輪を目標に掲げて再起の道を歩み始めたばかりだったが、奇跡的な復活劇を披露した。「自分が勝てるのはずっと先のことだと思っていた。すごくつらくてしんどくても、努力は必ず報われるんだなと思った。今すごく幸せ」と涙ながらに語った。
池江は東京・淑徳巣鴨高1年で出場した16年リオデジャネイロ五輪に続く、2大会連続の出場となる。日本選手権出場は日本新記録を連発して出場全4種目を制した18年大会以来で、長期入院を経て昨年8月に実戦復帰してから初めてだった。
日本選手権は10日まで。池江は計4種目にエントリーしており、2枚目の五輪切符が懸かる次の100㍍自由形は7日に予選と準決勝、8日に決勝が行われる。9、10日に実施される50㍍自由形と、五輪では実施されない50㍍バタフライにも出場する予定。
信じられないような復活劇だった。4日に行われた競泳の日本選手権女子100㍍バタフライ決勝。レースを終えて順位と記録を確認すると、池江璃花子(20)=ルネサン=は涙をあふれさせた。白血病により一度は諦めた東京五輪代表入りを決め、プールに入っている間も直後のインタビュー中も目は潤んだまま。「自分がすごくつらくてしんどくても、努力は必ず報われるんだと思った」。無観客で静まりかえった会場に震えた声が響き渡った。
前半を首位とほとんど差がない2位で折り返し、長いリーチを生かした推進力でぐいぐいとゴールに迫って逆転した。指導する西崎勇コーチは池江の本質を「勝負師」と語る。柔らかな笑顔からは想像もできない竸技者としての強い心(しん)が不屈のスイマーを支えている。
昨年3月、病気判明後初めてプールに入った。水着契約するミズノは体調に配慮してウエットスーツのような保温水着を準備したが、本人は体が動かしやすい通常の練習用を着た。闘病でやせた体のラインが表れても気にするそぶりはない。ミズノの担当者は「スイマーとして戻ってきた」とうなった。まだ顔を水につけることを許されていない状態にもかかわらず、しっかりと泳いで記録を測り「このタイム、みんな覚えておいて」とうれしそうに言った。
実戦復帰してからはアスリート魂にさらに火が付いたようだった。1年7カ月ぶりにレースに臨んだ昨年8月末の東京都特別大会は50㍍自由形で26秒32の5位。自らの日本記録に2秒11も遅れて悔しさを募らせた。9月に小学校時代に指導を受けた清水桂コーチと会食をし「前の自分を超えます」と宣言した。
2019年12月の退院直後は食が細く、好物が並んでもなかなか食指が動かなかった。約1年後のこの冬は朝昼晩の3食に加えて補食も取った。食事管理を徹底して体重を増やし、徐々にたくましさを取り戻してきた。昨年は体調を考慮してほぼやらなかった1日2度の練習を今年に入って合宿では週1回のペースでこなせるようになった。
日々の強化はパリ五輪でのメダル獲得を目指すためのものだったが、着実な積み重ねの成果が早くも出た。今大会の女子100㍍バタフライは泳ぐごとにタイムを伸ばした。「今はすごく幸せ」と言いつつ「世界と戦えるタイムではない。さらにこれから高みを目指していきたい」。悲劇のヒロインではない。競技者として、自らの真価を高らかに示した。
【静新令和3年(2021年)4月5日(月)朝刊一面
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