構想から30年以上 やっと前段階着工
沼津鉄道高架街の未来は
「東部の中心」再生共に加速を
JR沼津駅付近鉄道高架事業の構想から30年以上が経過し、沼津市を取り巻く環境は大きく変わった。シャッターが下りた商店街、大型商業施設の撤退ー。そんな中、昨年、事業の前段階となる新貨物ターミナルの本体工事が始まり、本年度は新車両基地が着工される。「知事選で候補者から鉄道高架の話が聞こえてこないのは非常に残念。鉄道高架と県東部の未来に目を向けてほしい」と駅前名店街に店を置く店主の藤原維仁さん(46)は切望する。
藤原さんは祖父の代から80年以上、店を構える。「事業の計画が持ち上がってから工事開始までの期間は町の衰退と重なっている」。駅南の店周辺は、着工を見ずに閉じたシャッターがいつしか増えていった。「商店街のお年寄りが『生きているうちは完成しないよ』と諦めたように、鼻で笑っていたのが印象的」と残念がる。
市は人口減少が続き、2015年に大台の20万人を割り込んだ。「西武百貨店撤退が沼津のターニングポイントだった」。駅から南に続くアーケード名店街(町方町)に、事務所兼店舗を置くグラフィックデザイナーの君山正好さん(52)は振り返る。13年に閉店した西武沼津店は"商都"のシンボルだっただけに、地域の集客力は減退。名店街も人通りはまばらになり、閉業や移転が進んだ。残る朽ち果てた複数の建物が衰退の象徴だ。
防火建築で知られる名店街は往時の復活をと再開発事業が認可され、28年度には住居や店舗が入った新たな建物が完成する。一方で戻って事業を再開したり、生活したりする人たちはごくわずか。再開発後のまちづくりの明確化と担い手確保がのしかかる。
川勝平太前知事は当初、未買収用地の強制収用をしない方針を打ち出したが、最終的には踏み切らざるを得なかった。この混乱が事業の遅れを招いたとの批判は根強い。道路整備など関連6事業の工事完了は22年度だったが、41年度に大幅にずれ込む見通し。
当初計画から約20年の遅れが生じた分、着工に対する市民の期待はより大きくなった面もある。「町をすてきな場所にしたいと思う人が増えるとうれしい」。駅南のあげつち商店街新興組合の小松浩二理事長(44)は語る。
鉄道高架事業を県東部・伊豆発展の起爆剤にとの声は大きい。同組合の峯知美専務理事(53)は「高架化で交通循環ができ土地の価値が上がれば、もう一度、東部・伊豆の中心地として栄える。市民だけではできない」と強調する。
(東部総局・天羽桜子)
【静新令和6年5月24日「届け知事選2024」】
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