2024年8月2日金曜日

「清水瓦」文化を復活へ  若手鬼瓦職人の長沢さん奮闘 【静新令和6年8月2日(金)朝刊】

 

清水瓦」文化を復活へ

 若手鬼瓦職人の長沢さん奮闘



 女性向け小物で認知度向上

 静岡市清水区の巴川流域の粘土を使用した伝統工芸「清水瓦」。50年前の七夕豪雨をきっかけに途絶えたとされるが、同区で1971年から瓦屋根の施工業を営む長沢瓦商店の3代目長沢玲奈さん(25)が瓦を焼く鬼瓦職人(鬼師)の道に進み、清水瓦文化の復活に奮闘している。瓦のアクセサリーや雑貨を開発するなど、現代の暮らしに合わせた清水瓦文化を模索する。

 清水瓦は江戸時代、駿府城築城のため移住した愛知県三河の瓦職人が巴川流域の粘土を使ったのが始まり。やがて全国有数の産地に成長したが、煙や採算性の間題により衰退。七夕豪雨がとどめをさした。巴川.沿いに並んでいた窯元は腕の良しあしに関係なく次々廃業し、その存在を忘れ去られた。清水で生まれ育った玲奈さんも、父の宗範さん(50)に聞くまで「清水瓦」という言葉すら知らなかったという。

 「実は清水瓦が復活してくれないかなと思ってるんだよね」。家業に入って間もない2019年、父親の本音を初めて聞いた。「清水瓦が復活すれば地元が元気になるのでは。自分たちに何かできないか」とぽつぽつ語り始めた父親の姿に一念発起した玲奈さんは、翌年から三河で鬼瓦職人としての修行を始めた。

 修行は毎月1週間。へらを器用に使い、粘土の塊から目的の形に彫り上げる作業は難しく習得までに時間がかかった。清水には十分な設備がなく、焼成は愛知県の窯元に協力してもらった。試行錯誤の末、瓦の吸水性を生かした花の形のアロマストーンや、「いぶし銀」の色合いが特徴のアクセサリーなど、女性向けの瓦小物を開発。最近はメディアに取り上げられるようにもなり、認知度向上に手応えを感じているという。

 6月、瓦職人で夫の歩夢さん(28)との間に待望の長男が生まれた。9月には焼き窯を設置した新店舗が巴川沿いにオープンする。販売だけでなく制作体験会を定期的に実施する予定だ。「この子が大人になるまでに、多くの人の生活に清水瓦がなじんでいる世の中にしていきたい」と小さな命にほほ笑みかけた。(鈴木志穂)

【静新令和682日(金)朝刊】


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