2011年4月13日水曜日

沼津市県議選沼朝解説記事

杉山票前回を上回る
 県議選投票総数減の中で再びトップ
 明暗分けた市議転身組 どう見る民主の得票数
 次の四年間を任せる県議会議員が決まった。定数四の沼津市選挙区の当選者は、現職の三人に新人一人。予想した顔ぶれとなったが、候補者それぞれの得票数からは自民党の堅調さ、民主党の苦戦が見え隠れ。また、市議からの転身を図った二人で明暗が分かれた。(文中敬称略)
 七人が立候補した沼津市選挙区の各候補者の得票数は、得票順に杉山盛雄(自民党現)一八、二三八票、蓮池章平(公明党現)一五、二〇〇票、多家一彦(自民党現)一四、〇九九票、曳田卓(民主党新)一一、七一九票、加藤益久(無所属新)六、六一一票、井口哲男(みんなの党新)五、九七八票、板垣和子(共産党新)三、八一三票。
 上位三人は前回選と同じ順位。杉山、蓮池は四選を果たし、多家は六選と、押しも押されぬ県議会重鎮の位置を占めるに至った。これに市議から転身の曳田が加わることになったが、曳田は同じ民主党の植松明義の後を受けたもので、当選者四人の党派別構成に変動はなかった。
 当選者四人の前回の得票(曳田は植松の得票)を見ると、杉山一八、一三一票、蓮池一七、四七八票、多家一五、三九一票、植松(以後、曳田票として見る)一四、七四五票。杉山は前回より僅かだが票を増やし、蓮池、多家、曳田票は減った。
 有権者の絶対数が減り、投票率が下がった中で、杉山が票を増やしたことの意味は小さくない。
 有権者は前回選の一六九、八七五人から今回は一六八、九四三人へ九三二人減少。さらに投票率も49・04%から45・33%へ下がり、県議選における過去最低を更新。投票総数は八三、三〇六人から七六、五八六人へ六、七二〇人減少した。
 さらに、前回選の立候補者が六人、今回は七人だったことを考えると、単純に見て一人当たりの得票数が減ることが当然の中で、杉山は前回を一〇七票上回った。
 これに対して蓮池は二、二七八票、多家は一、二九二票、それぞれ減らし、曳田票は三、〇二六票下回った。ただ、蓮池、多家の減少は、前述の背景から考えて実質的には現状維持と見ることもでき、杉山の得票増と合わせてみると自民党の堅調ぶりをうかがわせた。
 曳田票の減少はどうか。曳田の立候補については、民主党が植松と二人を立てるのではないかとの見方もあって注目されていたが、出馬を表明したのは二月半ば。七人の中では最も遅く、四月一日の告示まで一カ月半という中でのスタートとなった。
 この短期日での勝負に加え、市議三期を務めて一定の知名度があるとは言うものの、植松と交代して県議選初挑戦という不利な状況にあったことは否めず、その意味では善戦だったと言えるか。
 ただ、当選に向けて、連合など支援組織の結束と総力挙げた活動が求められたはずの中で、連合系の市議とは太陽光発電パネルや市議定数の問題で市議会内での立場を異にするという事情もあり、連合系の市議選立候補予定者が自らの後援会活動を通じ、市議選での自身と県議選における曳田への支援訴えという、通常なら考えられるセットの活動に影を落としたことも否定できない。
 曳田票の減少が、こうした個人的なことによるものだけなのか、民主党にとっては、この間の参院補選や今回の統一地方選前半の知事選、政令市市長選、県議選などで全国的な退潮傾向が指摘されるだけに、国政選挙も含めた今後の行く手を探るうえで十分な検討、分析が必要になってくるかもしれない。
 一方、加藤、井口、板垣の得票数は、どうか。 七人の中で唯一無所属、組織もなく挑んだ加藤。素人集団の選対が手探り状態で臨んだが、四位当選者とも、ほぼダブルスコアの開きがあった。鉄道高架事業の是非を問うための住民投票条例制定を求めた住民監査請求活動の際に交通違反での検挙が報じられたことがボディーブローのように効いた、と見る向きもある。
 加藤の特色は、その鉄道高架事業反対を前面に出して訴えたこと。その点、井口も同事業の見直しを主張し、板垣も事業反対の立場。この三人を合わせた得票数は一六、○○○票を超え、鉄道高架事業の主張に限って見れば、県議一人を出せるだけの数だった。
 井口は自民党を離れ、みんなの党からの出馬を早々と表明したが、伸び悩んだ。国政で吹いた風が地方選挙では難しかったか。
 また、同様に市議から転身を図った曳田とは明暗を分けることになったが、市議定数削減問題で市議会での採決当日、曳田が県議選への出馬を理由に辞職したのに対して、井口は採決にとどまり、それまでの削減反対の立場から「党の方針に沿う」ことを理由に賛成に転じ、削減に大きな役割を演じた。
 直前での辞職も削減賛成派にとっては、反対派の数が減ることとなり歓迎すべきことだったが、それまでの姿勢を覆して削減賛成に回った姿が有権者には受け入れ難いものだったかもしれない。賛成に回ることで県議選での自身の票読みを有利にしようとしたのではないか、との見方もある。
 板垣は、東京電力福島原子力発電所の事故を捉え、原発問題に長年取り組んできた経験を挙げながら浜岡原発の停止など沼津にとっても関わりのあることなどを訴えたが、票に結び付かなかった。
 共産党は前回、市議五期を務めた川口三男を擁立して一一、三八八票を獲得するなど善戦したが、これは保守層からの票も見込める川口ならではの得票との見方もでき、今後、統一地方選後半の市議選を控え、定数が減った中、同党にとっては厳しい結果を突きつけられることになった。
(沼朝平成23年4月13日号)

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