加藤学園選抜高校野球初出場
第92回選抜高校野球大会(3月19日開幕、甲子園球場)の出場校を決める選考委員会は24日、大阪市内で開かれ、加藤学園(沼津市)など32校が選ばれた。同校の甲子園出場は1996年の創部以来、春夏通じて初。東部勢の甲子園は95年夏の韮山以来、選抜は92年の御殿場西以来。吉報を受けたナインは歓喜に沸いた。=関連記事15・31面へ
加藤学園は、バッテリーを中心とした堅守と機動力を武器に、昨秋の東海大会で4強入り。東海地区の従来の出場枠は2枠だが、東海大会を制した中京大中京(愛知)が明治神宮大会で優勝したため、「神宮枠」が加わり3校が選出された。
【静新令和2年1月25日(土)一面】
出場32校決定
第92回選抜高校野球
大会(3月19日から13日間・甲子園)の出場32校を決める選考委員会が24日、大阪市の毎日新聞大阪本社で開催され、加藤学園の春夏通じて初めての出場が決まった。昨秋の明治神宮大会を制した中京大中京(愛知)、史上5校目の夏春連覇が懸かる履正社(大阪)も選ばれた。
戦力以外の要素を加味する21世紀枠は帯広農(北海道)磐城(福島)平田(島根)の3校が選出された。春夏通じて初の甲子園は加藤学園のほか、平田、鹿児島城西の3校。春初出場は白樺学園(北海道)と帯広農。
2018年に春夏連覇した大阪桐蔭は3季ぶり、昨夏準優勝の星稜(石川)は3年連続14度目の出場となった。磐城は46年ぶり、鶴岡東(山形)は41年ぶり、大分商は23年ぶりの出場となった。中京大中京は31度目、県岐阜商は29度目の出場。
今大会から「1人の1週間の総投球数を500球以内」とする投球数制限が実施される。
組み合わせ抽選会は3月13日に行われる。
加藤学園夢舞台へ闘志
敗戦糧 接戦の強さ培う
グラウンドに歓喜の雄たけびが響き渡った。加藤瑠美子校長が選手に歩み寄り、「おめでとう。選抜決まりました」と告げた。「夢のようなことで涙が出た。皆さんの努力のたまもの。強豪校の胸を借りて堂々戦って」と続けると、選手も感極まった。就任7年目の米山監督は「ホッとしている。チームカで思い切って暴れてきたい」と意気込んだ。
前評判は決して高くなかった。昨秋は地区大会準決勝で沼津東に敗れて東部3位。敗戦を機に「当たり前のことを当たり前にやる」と、基本に立ち返った。1球ノックなど一つの球に全員の意識を集中させる練習を通じて1球へのこだわりを磨き、接戦での強さを培った。「負けたことで収穫を得られた秋だった」と勝又主将は振り返る。
県大会では常葉大菊川、静岡などの甲子園常連校がひしめく激戦プロツクで、挑戦者としての思い切りの良さを強みにした。遊撃大村は「強いチームとできるのがうれしかったし、倒せたら楽しいと思った」と攻めの気持ちを貫いた。
東海大会でも指揮官は「受けて立つ立場ではない。思い切ってやれ」と選手に言い聞かせた。その日の調子で先発、打順を組み替え総カ戦で挑む意識も高まった。「まだ甲子園の実感が湧かないけれど、試合になれば団結力を持って戦える」と三塁杉山。仲間とともに夢の舞台へ、気持ちを高ぶらせた。
(結城啓子)
主戦肥沼「粘り強く」
女房役と試合重ね成熟
抜群の制球力とマウンド度胸を武器に県、東海大会で粘り強くピンチを切り抜けた主戦肥沼。「小さいころからの夢がかなって、とてもうれしい」。普段は喜怒哀楽を表に出さないエースが、満面に笑みを浮かべた。
新チーム発足当初の肥沼は、前主将の林口(3年)という頼れる女房役の不在を痛感していた。新パートナーは1年の雨宮。地区大会では雨宮のサインに首を振り、「投球のリズムが悪い」と、マウンドでの表情もさえなかった。
投球練習の後、2人で納得するまで話し合った。「その日に良かったところや課題を見つけて直すようにした」と雨宮。試合を重ねるごとにバッテリーとして成熟していき、肥沼も「お互いを信じ合えるような関係になった」と話す。
甲子園では「肥沼さんが最大限の力を出せるようにリードしたい」と雨宮が言えば、肥沼は「強気に、粘り強い投球をする」と決意を新たにした。
強豪連破し勢い
加藤学園は昨秋、東部地区準決勝で沼津東に1ー5で敗れ、地区3位からのスタートだった。県大会は強豪を連破して勢いに乗った。けん引したのが1年秋からエースナンバーを背負う肥沼。初戦は島田商に完封勝ち。2回戦常葉大菊川、準々決勝で静岡、準決勝で静岡商にいずれも1点差で竸り勝った。
東海大会も粘り強く接戦をものにした。大垣西(岐阜3位)との1回戦は肥沼が1失点完投。近大高専(三重1位)との2回戦は機動力で決勝点をもぎ取り、準決勝は県岐阜商(岐阜1位)に延長戦の末、惜敗した。
東海4強の最終成績では藤枝明誠と同列。県決勝の直接対決は明誠に軍配が上がっている。ただ、加藤学園が接戦を通じて示した、バッテリーを中心とした堅守が選考で優位に働いたとみられる。
加藤学園の横顔
1926年、沼津淑徳女学院として開設された。77年に加藤学園高等学校となり、83年に男女共学に。野球部創設は96年。主な卒業生にはプロ野球西武の高橋朋己、陸上の下田裕入(GMOアスリーツ)らがいる。生徒数は男子696人、女子674人。沼津市大岡自由ケ丘1979。加藤瑠美子校長。
【静新令和2年1月25日(土)15面】
加藤学園96年に創部、苦労重ね初切符
「甲子園行くそ」。24日、第92回選抜高校野球大会の出場校に初選出された加藤学園高。沼津市の同校にはOBや保護者らが駆け付け、歓声を上げる部員らと喜びを味わった。
待ちに待った甲子園
OBや家族歓喜、感慨
1996年創部。春と秋の県大会は準優勝、夏の選手権は2003年の4強が最高だった。過去に監督や部長を務めた同校事務長の新田紀之さん(55)は準決勝で敗れた03年選手権の記憶を「セミの鳴き声まで鮮明に覚えている」。「四半世紀の間、苦労してきた先輩たちを思い返した。生徒には感謝しかない」と初の甲子園切符に感激した。畑祐助OB会長(38)は「今のチームはまとまりがある。ひたむきに野球に向かう姿を多くの人に見てほしい」話した。
エースの肥沼竣投手(2年)の父圭一さん(46)、母京子さん(44)と弟の弦汰君(8)は埼玉県所沢市から駆け付けた。圭一さんは「本当は埼玉県内の高校に行ってほしかつたか、本人の意思を尊重して『頑張ってこい』と送り出した」と感慨深げ。「夢の舞台で一つでも多く勝ってほしい」と期待を込めた。
杉山尊三塁手(2年)の母薫さん(49)=三島市=は「発表前のきのうから緊張していた」と息子の自宅での様子を明かし、「甲子園では恥ずかしくないプレーを」と願った。
昨夏で引退した3年生もユニホーム姿で集まり、後輩たちと握手を交わした。林口泰地前主将は「素直にうれしい。攻めの野球を見せてほしい」とエールを送った。
(運動部・木村祐太)
スポーツ界OBもエール
■下田裕太選手(陸上)
「とてもうれしい」
全国高校駅伝や箱根駅伝などで活躍した陸上長距離選手の下田裕太さん(23)=GMOアスリーツ=は「初出場というのは本当に大変。自分たちも都大路(全国高校駅伝)に行くまではとても苦労した」と話し、「活躍を大舞台で見られるのはとてもうれしい」と語った。
■高橋朋巳(野球)
「気負わずプレーを」
プロスポーツ界などで活躍する加藤学園高OBも吉報を喜んだ。
プロ野球西武ライオンズの高橋朋己投手(31)は昨秋の東海大会の結果も確認していたといい、「今年はいけるんじゃないかと思っていました。初出場なので気負わず精いっぱいプレーしてほしい」とエールを送った。
優勝を目指して
川勝平太知事の踊
本年はオリンピックィヤーとなり、本県はさまざまなスポーツで躍進するスポーツ大国を目指している。加藤学園高には「令和」最初の選抜優勝を目指して頑張ってほしい。
全員野球で臨んで
賴重秀一沼津市長の話
市民に夢や誇り抱かせるニュース。大会では支えてくれた家族や仲間の思いや、甲子園を夢見ていた気持ちを胸に刻み、全員野球で臨んでほしい。
【静新令和2年1月25日(土)31面】
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