自動運転+信号制御出発 沼津駅一港間
県と沼津市などは22日、電気自動車(EV)バスの自動運転と信号制御技術を組み合わせた全国初の実証実験をJR沼津駅-沼津港間で開始した。新たな公共交通サービスの創出に向けて、技術的検証や観光客・地域佳民のニーズを把握する。31日まで。
EVバス全国初実験「未来のまちPR」
EVバスの車体には、信号を認識する全方位カメラや周囲の景色から位置情報を把握するレーザーセンサーが取り付けられ、県の道路測量データと連動して時速19㌔で自動走行する。実験区間は2・2㌔。信号機5基を制御して自動運転EVバスが近づくと、青信号の時間が長くなったり、赤信号の時間が短くなったりする。運転手も乗車し、緊急時は手動に切り替える。
14人乗りで1日7往復し、乗車した観光客や住民らにアンケート一を実施する。この日、試乗した頼重秀一市長は「安心して乗っていられた。未来志向のまちづくりを進めていくというPRになれば」と話した。
県交通基盤部の勝又泰宏都市局長は実験の意義を「高齢社会や公共交通のドライバー不足といった問題を、自動運転技術で補填(ほてん)していきたい」と説明する。車体を開発した群馬大次世代モビリティ社会実装研究センターの小木津武樹副センター長は「新たな交通手段として受け入れてもらうきっかけをつくりたい。移動自体を楽しめることは、観光地としての魅力にもなる」と述べた。
(東部総局・山下奈津美)
【静新令和2年1月23日(木)朝刊】
自動運転バス、優先信号で運行
沼津駅・港間で実証実験スタート
市は、県が進める「しずおか自動運転ShoWCASEプロジェクト」に協力し、沼津駅と沼津港間を1日7往復する「自動運転バス」の実証実験を22日に開始。31日まで続ける。22日に出発式が沼津港の沼津みなと新鮮館前で開かれた。
県は、公共交通への自動運転の導入を目指す同プロジェクトを2018年5月に発足させ、県を事務局に産学官一体となった施策を進め、地域の交通課題解決に向けた技術的支援や実証実験を行っている。
自動運転の実証実験はエコパスタジアム内の通路で行うほか、昨年は松崎町と下田市の公道で小型の自動運転自動車を走らせたが、一般の乗客を乗せて運行するのは初めて。
市では、公共交通の社会実験として沼津駅-沼津港間を往復する運質無料の「EVバス」を昨年10月に試験運行した実績に基づき、今回、プロジェクトに協力して実証実験を行うことになった。
自動運転バスは、電動自動車の製造と販売を行うシンクトゥギャザー(本社・群馬県桐生市)が「ゆっくりと楽しく移動できる次世代モビリティ」として開発した10輪駆動の電動バス「eCOM110(イーコムテン)」がべース。
群馬大次世代モビリティ社会実装研究センターが開発した自動運転システムを搭載し、衛星測位システムのGPSとレーザーセンサーで地図と照らし合わせて信号を検知し、遠隔監視する管制システムを採用。ハンドルやアクセル、ブレーキ操作が自動で行われる。
運転操作は基本的にシステムが行うが、緊急時には運転手が手動運転に切り替える「自動運転レべル3」で実施し、東海パスと伊豆箱根バスの運転手が運行補助者として乗車し最高速度19㌔で走行する。
さらに、今回の実験には、県内を拠点に自動車用照明や航空機の部品を製造するメーカーの小糸製作所が参加。大手町北から通横町まで5つの交差点の信号機で、自動運転バスが近づくと青信号に切り替わる「優先信号制御」の実験を国内で初めて行う。
優先信号制御は、自動運転パスから位置情報が自動的に交通管制センターに送られ、交通管制センターが対象の信号機を制御することでバスがスムーズに走行できるよう支援するもので、実験ではバスの定時性、速達性向上を検証し周囲の交通への影響も調査する。
出発式では、頼重秀一市長が「次世代モビリティを公共交通に活用できることを実証し将来を見据えたまちづくりに生かしたい。地域における拠点も大事だが、拠点をつなぐ交通ネットワークが重要」だとあいさつ。
群馬大次世代モビリティ社会実装研究センターの小木津武樹副センター長が、2004年から自動運転の研究に携わり、16年から同センターで次世代移動手段としての研究を始め、沼津での実験が全国で38例目になることを話し、「路線バスとして導入し、地域公共交通として受け入れられるか実証するためにも多くの人に乗ってもらいたい」と話した。
また、小糸製作所の有馬健司副社長は「安心、安全、快適性の向上に向けて関係各機関と協力して実験を行うことで、スマート社会の実現に貢献し、推進できるよう、努力を続けたい」とした。
伊豆箱根バスの新宅広樹代表取締役は「実証実験に携われて意義深い。人材不足の解消、将来の生活や観光の仕方の発展にもつながれば」と期待し、県の宮尾総一郎交通基盤部長は「低速で公道を走る自動運転バスが地域の人に受け入れてもらえるかを実験し、県警の協力で信号制御を行う。ワンチームで取り組みたい」と話した。
自動運転パスは運転手や運行補助者を除く乗車定員14人。窓ガラスがなく開放的で、風を感じながら景色を楽しむことができるが、雨避けの装備もあるので、荒天でなければ運行できる。乗車無料。
運行時刻は、平日が沼津駅を午前9時20分から午後4時20分まで、沼津港を午前9時50分から午後4時50分まで、いずれも1時間間隔で出発。休日は沼津駅を午前9時から午後4時50分、沼津港を9時35分から午後5時25分まで、概ね1時間ごとに出発する。
乗車予約が必要で、しずおか自動運転shoWCASEプロジェクトの予約サイト(https://www.buscatch,jp/dtod/showcase2019shizuoka.phq?cuid)で受け付けている。
問い合わせは県地域交通課(電話054の221の3186)または、市まちづくり政策課(電話934-4759)。
【沼朝令和2年1月23日(木)号】
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