2020年1月27日月曜日

幕尻徳勝龍初V 、涙と笑顔初賜杯






幕尻徳勝龍初V
20年ぶり快挙、33歳 大相撲初場所

 大相撲初場所千秋楽は26日、東京都墨田区の両国国技館で行われ、西前頭17枚目徳勝龍(33)=本名青木誠、奈良市出身、木瀬部屋=が結びの一番で大関貴景勝を力強く寄り切って141敗とし、初優勝した。幕内最下位の幕尻力士の優勝は、2000年春場所の貴闘力以来2人目の快挙。千秋楽の結びで幕尻力士が相撲を取るのは、昭和以降で初めてだった。=「時の人」2面、関連記事1023面へ
 奈良県出身力士の優勝は1922年春場所の鶴ケ浜以来、98年ぶり2人目。33歳5力月での初優勝は、年6場所制となった58年以降で3番目の年長で、日本出身では最年長。平幕優勝は昨年夏場所の朝乃山以来31度目となった。
 白鵬、鶴竜がともに序盤戦で途中休場して横綱不在の中、近畿大出身の徳勝龍は突き落としなどを武器に白星を重ね、14日目に1敗同士の平幕対決で正代に勝って単独首位に立った。千秋楽は出場力士で最高位の貴景勝と異例の対戦が組まれたが勝利し、逃げ切った。
 自分なんかが…
 徳勝龍の話 自分なんかが優勝していいんでしょうか。(ファンらに)喜んでもらえて良かった。(番付が)一番下なので、怖いものはないと、思い切っていくだけだった。来場所も自分らしく気合の入った相撲でやっていきたい。
【静新令和2127日(月)1面】

「時の人」
大相撲初場所で初優勝した
 徳勝龍誠(とくしょうりゅう まこと)さん

 長い歴史を誇る大相撲でも、ここまで人々を驚かせた優勝は少ないだろう。徐々に騒がしくなった周囲をよそに「自分は一番下だから、何もないですよ」と話していた。西前頭17枚目の幕尻で賜杯を抱く下克上を果たし、181㌢、188㌔の色白の体がいつもより大きく見えた。
 奈良市出身。高知・明徳義塾高時代はプロ入りは考えておらず、実業団で相撲を続けるつもりだった。人生の転機は近畿大相撲部の監督だった伊東勝人さんに勧誘を受けたことだ。思い切り良く攻めることを説かれ、4年生時に西日本学生選手権個人を制するなど徐々に頭角を現す。2OO9年初場所で初土俵を踏んだ。
 「勝ち越したら、いつも最初に報告していた」という恩人は18日に急逝。勝ち越しをはるかに上回る吉報を天国に届けることができた。
 元横綱稀勢の里の荒磯親方、大関豪栄道と同じ1986年生まれ。華やかな同学年とは対照的に地味な土俵人生を送ってきた。巡業の合間に談笑をしていた力士に握手の列ができると「さあ、邪魔者は退きましょう」と笑みを見せていた。33歳にして主役となり笑顔が輝いた。
 若手力士を食事や治療に連れて行き、悩みを存分に聞くことを心掛ける。師匠の木瀬親方(元幕内肥後ノ海)は「みんながあいつを慕っている。部屋にとっては福の神だよ」と評す面倒見のいい兄貴分だ。本名青木誠。16年に結婚した千恵夫人の手料理が癒やしになっている。
【静新令和2127日(月)2面】

【静新令和2127日(月)10面


徳勝龍、涙と笑顔初賜杯
 十両転落危機はねのけ

 土俵で見せたポーカーフェースが笑いと涙で彩られた。26日、東京都墨田区の両国国技館で行われた大相撲初場所の千秋楽で、平幕徳勝龍が初優勝を飾った。33歳にして賜杯を抱き「自分なんかが優勝していいんでしょうか」と、おどけながら喜びを口にした。
 今場所の番付は幕内で最も低い西17枚目。優勝など夢のまた夢で、むしろ十両転落と背中合わせだった。春場所は故郷の奈良に近い大阪で行われるため、母えみ子さん(57)は「絶対一つ勝ち越して帰ってきてね」と場所前に励ましたという。
 ふたを開ければ破竹の快進撃。えみ子さんは千秋楽の朝に奈良を出発して駆け付けた。歓喜の瞬間を2階席で見守り「あるわけないと思っていたけど、現実になった」と感無量の様子だった。
 えみ子さんによると、徳勝龍は体重38609で生まれ、6カ月で10㌔にまで成長した。小学校時代は柔道と野球も掛け持ちし「4番捕手」を担っていた。
 妻千恵さん(33)によると、明るく穏やかな性格で、家庭では相撲の話をしない。千恵さんは「昨日もいびきをかいて寝ていた。私の方が緊張して(この日の取組も)見られず(国技館の)廊下にいた」と笑った。
 今月18日には近畿大時代の恩師、伊東勝人さんが急逝。奇跡の優勝は最高の弔いとな,り、徳勝龍は「ずっといい報告がしたいと思って、それだけで頑張れた」と大粒の涙を流した。
 出身力士98年ぶり喜びに沸く奈良
幕内最下位ながら、奈良県出身力士として98年ぶりに優勝を果たした徳勝龍の奮闘に、地元は沸いた。出身地の奈良市は26日、大相撲初場所千秋楽のパブリックビューイング会場を市庁舎に設けた。相手を寄り切った瞬間、集まった市民やファンら約200人は立ち上がり、歓声を上げた。
 会場では、同市在住で父親の青木順次さん(73)と姉の井上千夏さん(35)も、大一番を見届けた。順次さんは「徳勝龍」と書かれたタオルで涙を拭い「感無量。歴史に残ることだ」と、初の賜杯をつかんだ息子子をたたえた。千夏さんは「相撲がうまくいっていない時は、見ていて私も苦しかった。弟はよく頑張った」と目を潤ませた。
 順次さんによると、徳勝龍は子ども時代からスポーツ好きで活発だった。小学4年の時に県内の「わんぱく相撲」大会で優勝。その後の全国大会で敗れてから、稽古にのめり込むようになったという。「弱音は吐かなかった。ほんまに頑張った」と回想しながら、余韻に浸った。
【静新令和2127日(月)23面】


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