2023年3月2日木曜日

「国鉄沼津機関区の百年」大賞  「国鉄沼津機関区の百年」 沼津市・山梨孝夫著 清水町・山梨幸夫編  「鉄道マン」の誇り形に

 地域文化に地道な貢献

 大賞車両基地の歴史発掘


 第20回静岡県自費出版大賞に決まった「国鉄沼津機関区の百年」は、1987年の国鉄民営化まで沼津駅に隣接して設けられていた国鉄沼津機関区の歴史を膨大な資料を駆使し丁寧にまとめている。60年代に国鉄に入社した山梨孝夫さんが、同機関区の100周年記念誌として執筆した「沼津機関区百年史」をベースに、その後発掘、収集した図面や写真を盛り込み、加筆・修正を重ねた。弟の幸夫さんが編集を担った。通算すると34年もの歳月を費やしだ労作で、鉄道マンの誇りと情熱、日本の鉄道開業150年の節目(2022)を彩る地域史料としての価値が高く評価された。

【静新令和532日(木)朝刊】

 

 


 「国鉄沼津機関区の百年」大賞

 「国鉄沼津機関区の百年」 沼津市・山梨孝夫著 清水町・山梨幸夫編

 「鉄道マン」の誇り形に



 1兄弟そろって国鉄沼津機関区に勤務した。出版の経緯は。 孝夫さん「私が1965年、弟が68年に国鉄に入社した。2人とも車両検査や部品交換を担う機関車検修に従事。86年、同機関区100年の際、記念誌の制作を区長に提案し2人で担当したが時間が足りなかった。内容に満足できなかったため、再出版を誓った」

 ー御殿場線に関する記述が前作より大幅に増えている。

 幸夫さん「1889年に東海道線の一部として開業し、1934年の丹那トンネル開通以降はローカル線化した。国府津駅から御殿場駅を経て沼津駅に至る御殿場線の記録をきちんと残すのが目的の一つだった。急勾配が連続するため、強力な補助機関車の連結・切り離しを行う沼津機関区が重要な役割を果たした」

 ー2人が従事した電気機関車の検修業務を記録した写真は、安全確保に情熱を傾けた鉄道マンの思いが伝わってくる。

 幸夫さん「特に見てほしいのが198610月下旬に撮影された沼津機関区最後の車両解体検査の記録。1886121日の創設以来、99年と11カ月の歴史に幕を下ろした時の写真で特に思い入れがある。私は現場で作業をしていたので後輩が撮った写真を借りて掲載した」

 ー約100年間の線路配置の変遷を示した図面は鉄道ファン必見だ。

 幸夫さん「鉄道博物館の書庫で丹念に資料をひもといた。予定より時間を要したが時系列で克明に追うことができた。情報を提供してくれた鉄道愛あふれる同志たちとのご縁があったおかげで完成できた」

 ー読者に伝えたいことは。

孝夫さん 「鉄道ファンだけでなく一般の人にも分かりやすく執筆した集大成。沼津機関区は少ない時で約400人、多い時は約1200人が働き、鉄道史において非常に重要な拠点だった。その役割と歴史に触れて沼津の誇りと感じてもらえたら光栄だ」

 

☆ やまなし・たかお 1946年旧芝川町(現富士宮市)生まれ。65年国鉄入社。2009年の退職後は鉄道史研究家として執筆活動を行う。

 やまなし・ゆきお 1950年静岡市駿河区生まれ。68年国鉄入社。2010年退職、同年静岡交通ビル代表取締役。20年退任。

【静新令和532日(木)朝刊】


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