権利変換計画が認可を受ける
アーケード名店街の再開発に向け、第一種市街地再開発事業による商店街の再生計画を進める町方町・通横町第一地区市街地再開発組合(水口隆太理事長)は、昨年3月に県の審査を受けて事業計画の認可を取得。同名店街南西一画の約3000平方㍍の街区で再開発事業が本格的に始動したが、今月27日には同事業における権利変換計画が県知事の認可を受けたため、市役所で交付式が開かれ、頼重秀一市長が水口理事長に認可証を渡した。
今夏から建物の解体へ
2028年度中の完成目指す
第一種市街地再開発事業は、都市再開発法に基づき、地方公共団体のほか、地元地権者らが設立する再開発組合等により実施され、事前の調査設計費や建築物の共用部分の整備費の一部等に対する補助や税制優遇等の支援制度を活用できる。
この制度は、老朽化した建築物が密集し都市機能が低下した市街地の宅地を統合して土地の高度利用を図り、安全で快適な都市環境の創造を目指すもので、「町方町・通横町第一地区市街地再開発事業」は、1984(昭和59)年度から96(平成8)年度にかけて実施された「上土町・通横町地区第一種市街地再開発事業」、89(平成元)年度から20007(平成19)年度にかけて実施された「大手町地区第一種市街地再開発事業」に続いて、市内3例日。
アーケード名店街は、戦災復興が進められる中、日本初の防火建築帯の共同建築様式で、有階アーケードのポルティコ(公共用歩廊)空間が連続する商店街として1953(昭和28)年に美観地区(2004年から景観地区)に指定され、54年に完成。通りの長さは約250㍍で、電話線の地中化や横連窓を意識したファサード(建物を正面から見た時の外観)、建築物角部の曲線化などのデザインが統一され、日本建築学会賞(行政部門)を受賞し、全国的に注目を集めた。
それから50年が経過して建物は老朽化。雨漏りもあって大規模な修繕も必要となり、2006(平成18)に錐権者による民間主導のまちづくりとして災害対策や耐震建築等の検討を行い、10(同22)年にLSC沼津みなみ地区市街地再開発準備組合を設立。
市の都市計画部と協議を重ねて14(同26)年、地域における安全、安心、暮らしに必要な機能を集積した「ライフスタイルセンター」をコンセプトに掲げた基本計画案を策定し、法定再開発に基づく都市計画決定に向けた事務手続きについて要望書を市に提出。翌15年に商店街の5街区、1万8000平方㍍都市計画決定されて本組合が設立された。
その後、地権者の合意形成に時間を要するとの判断から、組合の再編や施行範囲の変更などを経て22(令和4)年に1街区、施行地区面積約3000平方㍍の再開発に切り替え、事業の実施設計、建築工事、保留床の業務を一括で受託する特定業務代行者を公募してタカラレーベン・フジタ共同企業体に決定した。
昨年3月、事業計画が認可され、地権者29人、借家人数19人が関わる再開発組合に再偏された。
計画によると、総事業費は約79億円。このうち補助金が国から約22億円、県から約7億円、市から16億円の合わせて約45億円。建物概要は鉄筋コンクリー卜造り地下2階、地上10階建てで、地下1、2階が駐車場、-階が店舗3区画、2-10階が住宅105戸を予定している。
権利変換計画でば地権者29人、借家人19人全員が4月26日までに退去して建物を組合に明け渡し、権利を変更する登記申請により一筆にまとめ(夏頃から約1年間の解体工事の後、建設工事に入り『28(令和10)年度中の完成を目指している。
完成後に再入居を予定する地権者は8人で、地権者21人と借家人全員が転出する。店舗は1階部分を3区画の区分所有建物とし、店舗1、2を権利床、店舗3を施行者が保留床として取得する。住宅は2110階部分を105戸の区分所有建物とし、権利床7区画、98区画は参加組合員のタカラレーベンが各区画区分所有とする。
27日に市役所で開かれた認可証の交付式には水口理事長(水口園代表取締役)と、いずれも副理事長の中川繁晴・電気堂代表取締役、海野伸男・だいこくや取締役が訪れ、再開発施設の模型や最新のイメージパースを持参し、これまでの経過を話した。
頼重市長は「大学時代に美観地区に指足されたアーケード名店街について学び、建築学的に素晴らしい建物として沼津の誇りに感じていた。市議時代から、この事業を見て来て市長として立ち会えたことを心の底からうれしく思う。夏には解体に向かい、再開発が目に見える形となり、市民の期待もますます高まる」と話し、認可証を手渡した。
水口理事長は「ようやく、ここまでたどり着いたと実感している。権利者の意向を踏まえた権利変換計画の内容は大変複雑で難題もあったが、関係権利者の理解と協力、プランに関わった建設・住宅会社、市長はじめ市の支援のおかげ」だと感謝。
さらに「専門家の意見を取り入れ、建設当時の70年前の既存建物のデザインやアイデア、歴史的建造物としての価値を次世代に踏襲することがテーマの一つだった。私達のまちづくりが、この街区だけで終わらず、次の街区に引き継がれ、町方町全体を造り変えることがゴール」だと力を込めた。
海野副理事長は「高齢者と若者で中心市街地に対するイメージが異なる。ギャップを埋めて、中心市街地にたくさんの人を集めるためにも先鞭をつけた。ソフト面でまちを、いかに活性化するかも考えていきたい」とし、中川副理事長は「70年前に長屋になり、互いに助け合って生きてこられたのは歴史的つながりが根底にあったからこそ。事業を完成させて次の街区ヘバトンを継承したい」と話した。
景観法に基づき認定
町方町・通横町街区の再開発
町方町・通横町第一地区市街地再開発組合は、「景観地区内における建築物の計画の認定申請書」を昨年12月、市に提出。頼重秀一市長が市景観審議会(伊藤光造会長〉に計画の認定について諮問したのに対して今年1月、伊藤会長が「景観法に基づき認定することが適当」との答申書を市長に渡した。
答申書には、次のような付帯意見が付いた。まず、建築物の形態意匠について、公共用歩廊の空間、横連窓を意識したファサード、建築物角部の曲線化など、歴史ある従来の建築物の形態意匠を踏襲し、これまでの景観審議会で助言した建築物細部の意匠についても、取り入れるよう努めること。
次に、今後に建築が予定される街区の建築物については、今回計画されている街区の建築物の形態意匠と調和を図り、公共用歩廊についても同等の空間を確保した建築物とするよう努めること。
また、「町方町.通横町地区第一種市街地再開発事業」「町方町・大門町通横町地区計画」「沼津市アーケード街美観地区」について、壁面の位置の制限等の変更を含め、今回実現する公共用歩廊と同等の空間を確保する勉めの方策を講じること。
さらに、良好な景観が保たれるよう、ヒューマンスケール(人の尺度を基準として、安心して、快適に感じられる適切な空間規模や、ものの大きさを示すもの)による公共用歩廊の維持管理、活用について適切なルールを定めるなど、市民活動の活性化につながるよう検討すること。
市長は「建築学的にも重要なエリアでアーケード名店街のまちの更新が、いよいよスタートできる。市民だけでなく幅広く関心が高まっており、景観地区における、まちの更新に当たっては、答申を留意し、基本としたい」と話し、伊藤会長と共に再開発ビルの模型を見ながら意見交換した。
【沼朝令和6年3月31日(日)号】
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