「大自在」
市制100年の沼津。今日から3日間はゆかりの人たちを交えた各種イベントが予定される。港町の来し方行く末に思いをはせる週末になろう▼かつて沼津で勤務した縁で、「沼津郷土史研究談話会」が冊子「沼津史談」を定期的に送ってくれる。先日、「100周年記念特集」と銘打った第74号が届いた。元同会員で眼科医、歌人の川口和子さん(故人)の手による随筆の復刻が楽しい。大正、昭和の街並みの変遷を鮮やかに回想していて、思わず笑みがこぼれた▼置き屋が密集して船牝体町界隈(かいわい)、中村演芸館や活動写真館「金鶏館(きんしかん)」のにぎわいー。戦前の市内各店のマッチラベル特集も目を見張った。ページを繰ると、今も太町で営業する「すき焼古安」「安田屋」の図版が。数年前、昼時に通った店だ▼明治期からありとあらゆる文化芸能に浴した沼津は令和のいま、「アニメの街」として知られる。2016年に番組がスタートした、同市が舞台の「ラブライブ!サンシャインー-"」は、アニメツーリズムの成功例として名高い▼今月(シリーズ最新作の放送が始まった。ファンタジー仕立てだが、仮想街の名は「ヌマヅ」。第1回には、主人公が本町周辺とおぼしきエリアを歩く場面もあった。現実の市内では、作品に登場する場所をファンが訪ねる「聖地巡礼」が定着。コロナ禍を越え"巡礼者"が再び増加している▼18年の調査では、彼らの約6割が沼津に「故郷一を感じていた。100年を寿(ことほ)ぐ当事者は市民だけではない。アニメと沼津。相思相愛、蜜月の物語はまだまだ続く。
2023.7.7
【静新令和5年7月7日(金)朝刊一面】
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