街角から
▽障害者だけでなく高齢化社会を背景に、一層需要の拡大が見込まれているシニアカーと電動車いす。その違いを知らなかったことで「あってはならないこと」が起きてしまった。
▽8月初旬、Aさんから憤慨しながらも気落ちした口調で連絡が入った。「どうしても納得できないので、投稿したい」旨の相談だった。
▽それによると、その数日前、沼津駅前南のイーラ曲に電動車いすで買い物に行ったところ、店員に入店を遮られた。それまで頻繁に買い物をしていた店だけに、入店拒否の理由を尋ねようと、押し〉問答をしているところうに同施設を管理している沼津まちづくり会社の男女社員が来て、「決まりなので」の一辺倒。ひいきにしていた店だったので、「これから欲しい時にはどうしたらいいの?」と店員に尋ねると、「建物の外から手を振って、もし店員が気がつけば対応する」との返事。「大変ショックを受けた」という内容だった。
▽「そんなことが今どきあるのか」と、確認のため同館を訪れると南側出入り口に「シニアカー(ハンドル形電動車いす)ご使用のお客様へ」というA4判程のノラスト入りの貼り紙が。「当館では、危険防止の観点から、館内へのシニアカー乗り入れを2022年11月1日から禁止いたします。ご不便をおかけしますが、ご理解、ご協力をお願いします。館内の移動には車いすをご用意しております。ご利用の方は館内出入口のインターホンまたは、下記まで、ご連絡をお願いします。沼津まちづくり株式会社055-963ー0053また、電動車いすをご利用のお客様においては、館内の走行にあたり低速(2㎞\h以下)で十分な注意のもと安全運転をお願いします」とあった。
▽Aさんの車いすはシニアカーではなく、電動車いすとして販売されているコンパクトなものだ。両者の見解の相違もあろうかと、まちづくり会社に面談を申し込むと「そういうことは書面で」とのこと。Aさんの心情やいくつかの疑問点を挙げて書留で送ったのが8月24日。
▽9月5日付でメールでの回答があった。
それによると、「確認作業を実施し、(Aさんは)8月5日に(見えた)小型の電動車いすのお客様であることが判明いたしました。担当した者の知識不足により車いすをシニアカーと認識して対応していました。せっかくご来館いただいたA様の心情はごもっともであり、深くお詫びを申し上げるとともに、全従業員に徹底させ再発防止に努めてまいります」というもの。
▽それから2週間後の9月20日、同館出入り口には電動車いすのイラストも加わり、入館できることを示した貼り紙が掲示されていた。
▽9月25日付で「電動車いすご利用のお客様の対応について」という文章が佐藤勝社長名で出入り口に張り出され、ホームページにも掲載された。
「この度、令和5年8月上旬に電動車いすでご来館のお客様に対して、入館をお断りするという事案が発生しました。来館した方の使用している電動車いすを、安全配慮義務の観点から館内でお断りしているシニアカーと誤認し、従業員がお断りしたというものです。対応した従業員には、決してお客様を差別する意図はありませんでしたが、弊社としましては、お客様への差別との印象を与えかねない、誤った対応であると認識し、厳重に注意致しました。沼津市の中心市街地活性事業の一環である当イーラdeにて、このような不適切な対応は決して許されるものではなく、深くお詫び申し上げます。二度とこのような失礼な対応を繰り返す事がないよう、当社従業員およびテナント・管理会社への周知徹底及び再発防止に努めるとともに、初心に返り、おもてなしの気持ちを大切にすることを指導して参る所存でございます。本来であれば拝眉の上お詫び申し上げるべきところ、略儀ながら書中にてお詫び申し上げます」としているが、後日、電話で確認すると、「Aさんに直接お詫びするつもりはない」との返事。
▽Aさんからの訴えがなかったら、この先ずーっと電動車いすの人を入館させないままだったのだろうか?
▽福祉用具、介護用品に詳しい専門家によると、「シニアカーは電動車いすに比べて一回り大きく、見た目、一番分かりやすいのが座席の正面にハンドルがあるか無いかの違い。正面にあるのがシニアカー。最近は年を取っても自由に外出し、生き生き暮らすためのアイテムとして、車の運転免許証を返納した高齢者やその家族から、購入やレンタルに関する相談が増えている」と話す。
▽障害があるからこそ、他人の手を煩わせたくない、との思いが強く電動車いすで出掛け、買い物も楽しんできたAさん。入店拒否された時は「ショックが大きく、自分の存在そのものを否定された気がした」と、その時を思い起こす。
▽「ヒト中心のまちづくり」を目指す沼津市。中心市街地の核となるよう23億円(約13億円が市民税)を費やした施設に魂が宿っていなかったのか。お客様業として、不自由な立場にある人への想像力の欠如が招いた一件。
▽入館拒否から謝罪文掲載まで51日を要した。「これから多分訪れることはないだろう」施設への掲示や開くことのないホームページでの謝罪。Aさんにとっては謝罪されない状態が今も続いている。
【沼朝2023年(令和5年)10月14日(土曜日)】
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