2022年8月7日日曜日

沼津駅付近高架 当初計画から事業費増

 

沼津駅付近高架 当初計画から事業費増

 市財政への影響精査を



 県は7月、JR沼津駅付近高架事業の事業費が当初計画から13倍の1034億円となる見通しを明らかにした。事業費の一部を担う沼津市の負担額は、これまでより56億円増の228億円が見込まれる。市財政への影響は不可避で、市全体の財政見通しや高架以外の事業も含めた早急な精査が必要だ。

 県は労務費や工事費の高騰、東日本大震災による耐震設計基準見直しなどを増額の理由に挙げる。新車両基地や貨物ターミナルの施設規模見直しによる41億円の削減も踏まえた額で、これ以上の大幅減は難しそうだ。

 鉄道高架化本体とは別の関連事業として、市はこれまで駅南口再開発ビル「イーラde」や、県と共同で駅北□の「プラサヴエルデ」を建設した。市が事業主体の事業は、沼津駅東側と新車両基地移転先計185㌶の区画整理と、周辺道路の整備が残る。区画整理は今秋に本格着手、道路整備の本格化は高架工事完成後で、いずれも完成は十数年先。労務費や資材費が増える可能性もあり、さらなる負担増も懸念される。

 市が2017年に発表した長期財政見通しによれば、市の借金に当たる市債残高は最大950億円公債費のピークを37年ごろと予想し「健全性は保たれる」とした。市は前提条件が変わったことで、再度試算する方向だが、楽観視せず、近年の社会変動を踏まえた数値を基に試算すべきだ。

 加えて市は小中学校など、1970年代に建設した多数の公共施設の更新時期が、高架事業完成の2041年前後までに集中する。既に市は、個別施設計画で更新に合わせた施設の集約化方針を示しているが、今後の人口変動を見ながら、絶えず柔軟に計画を見直してほしい。

 財政状況のチエックには市議会の役割も重要だ。高架事業に賛成、反対、それぞれの立場は一度横に置き、まずは事業継続を前提に議会全体で財政への影響を議論すべきだ。その際は、鉄道高架関連事業だけでなく、その他の公共施設整備も念頭に置きたい。同時に市税収入を安定的に維持するためにも、人口減の中で生産年齢人口の割合を増やす政策提言も期待したい。 完成が後ろにずれ込み、高架化は文字通り次世代のための事業となっている。将来への禍根を残さないためにも、財政への影響を最小限に食い止めるよう行政、政治、そして市民も力を合わせたい。(東部総局・尾藤旭)

【静新令和4(2022)87(日曜日)解説・主張SHIZUOKA】


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