深良用水地域潤し350年 裾野
江戸 時代の工事跡今も
トンネル一般同行公募へ
世界かんがい施設遺産に登録されている裾野市の深良用水が2020年、通水350周年の節目を迎える。渇水地域だったとされる同市を中心とした地域に「恵みの水」をもたらした同用水は、江戸時代の測量や掘削技術の痕跡が今も残る。貴重な価値を発信する機会と捉え、地元や同用水を運営する県芦湖水利組合、市が記念事業の準備を進めている。
メイン事業として検討しているのが、春の水路トンネル点検への一般参加。トンネルは毎年春と秋に計2回行う用水流域関係者らによる点検作業を除き、立ち入りを原則禁じている。今回は通水記念の4月25日に合わせて実施し、特別に一般からの同行者を募る方向で調整している。
深良用水は寛文10(1670)年4月25日に農業用水として通水した。トンネル工事に費やした期間は約4年。内部の岩
盤には作業員がのみで掘った痕や、通気口とされる人が通れる大きさの穴といった工事の痕跡が至る所に残る。点検で入った同組合の小林威水配長(77)は「風雨にさらされていないので何も傷んでいない。岩盤が頑丈で崩れてもいない」と様子を語る。
同組合には点検の時期が近づくと、研究者などから同行の要望が寄せられるという。ただ、内部が極端に暗いなど安全上の理由から同行者の募集はこれまで実施していない。
裾野市の担当者は「安全面の課題はあるが、トンネル内部に入って自分の目で見て、深良用水の価値を知ってほしい」と趣旨を話す。(東部総局・福田雄一)
〈メモ〉深良用水のトンネルは神奈川県の芦ノ湖(箱根町)から裾野市まで約1280㍍。建設工事は寛文6(1666)年に開始し、芦ノ湖、
裾野両方から手作業で掘り進め、寛文10(1670)年2月に完成した。通水したのは同年4月25日。芦ノ湖から引いた水は裾野、御殿場、長泉、清水の4市町で主に農業用水として使われている。2014年9月に世界かんがい施設遺産に登録されている。
【静新令和1年12月25日(水)夕刊】
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