2019年12月4日水曜日

社説 桜を見る会 疑念と不信募るばかり


社説 桜を見る会 疑念と不信募るばかり
 安倍晋三首相が主催して開かれてきた「桜を見る会」に関する疑念と不信が尽きない。
 2日には参院本会議で野党側から追及があったが、首相から納得できる説明はなかった。本会議での質問は、議員が項目をまとめて質問し、首相が答弁書を読み上げる形。予算委員会のように一問一答形式で追及することができず、一方通行になりやすい。首相は今回、質問に対してほぼ従来の答弁内容に終始した。これでは説明責任を果たしたと言えないだろう。
 野党は衆参両院での予算委開催を要求しているが、与党は応じていない。9日に閉会する今国会で、首相が桜を見る会について言及する機会はこれ以上はない見通し。閉会による逃げ切りを許してはならない。
 桜を見る会への疑念は、首相が選挙区の山口県から訪れた後援会関係者を招き、公金を使って後援会活動をしていたのではないかという指摘から始まった。指摘が事実であるなら公的行事の私物化ということになる。
 続いて、桜を見る会の前日に後援会関係者向けに開かれた「前夜祭」の夕食会の会費が問題となった。都内の高級ホテルでの開催にもかかわらず会費が5千円だったことから、首相の議員事務所が実費不足分を補った公選法違反の可能性や政治資金収支報告書への不記載の疑いが指摘されている。
 さらに、内閣府によって招待者名簿がシュレッダーで細断処分された。首相は「予定通りの廃棄」と答弁したが、共産党議員が提出要求した1時間後というタイミング。見られたくない名簿を官僚が証拠隠滅しようとしたと受け止められても仕方がない。
 首相は電子データによる名簿復元を求められると、端末ではなくサーバーに記録されているため、消去すれば復元できないと強調した。都合の悪い公文書をなかったことにするのは政権の常套(じょうとう)手段といえよう。桜を見る会が始まった昭和の記録は保存されているとされるのに、なぜ現政権では1年未満の破棄文書になっているのか。
 加えて、警備が厳重であるはずの会場に反社会的勢力の人物がいたと指摘されている。預託商法などが問題視され経営破綻した「ジャパンライフ」の元会長も首相推薦枠で招かれていたという疑惑もある。元会長について首相は「個人的に関係は一切ない」と否定した。一方でジャパンライフが招待状を宣伝に悪用したことには「違法、不当な活動に利用されることは決して容認できない」と述べた。ならばどうして招かれたのか、自ら調査して明らかにする必要があるのではないか。
【静新令和元年(2019)124(水曜日)朝刊】


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