2009年7月28日火曜日

「静岡選挙区の攻防⑥」


「静岡選挙区の攻防⑥」6区
 知事選の票に思惑交錯

 伊豆・東部の振興に向け、待望久しい東駿河湾環状道路が27日、一部開通した。沼津岡宮インターチェンジで行われた開通式で民主前職渡辺周、自民前職倉田雅年の両氏が衆院解散後、初めて顔を合わせた。
 来賓あいさつで倉田氏は「できるなら、このまま、この道路完成に向け頑張っていきたい」と政権維持を訴えれば、渡辺氏も「一日も早い下田までの開通に向けて全力を傾けていく」と選挙後を見据えて応酬。火花が早くも散った。
 解散直後の21日午後、渡辺氏は熱海、伊東市内で続けざまにマイクを握った。伊東市は午後6時から。「ほんの1時間前に連絡を受けた」と中田次城県議が慌てるほど突然の街頭演説。渡辺氏は「熱海、伊東は前回、相手候補の後じんを拝した。1分でも惜しい」と声を張り上げた。
 「いくら自民の推薦候補が東部出身でも、票を取られすぎ。選挙態勢の立て直しが必要だ」。今月6日、渡辺陣営の後援会幹部は知事選の市町別得票一覧を手に、こう秘書にげきを飛ばした。
 6区13市町で民主など推薦の候補がトップをとったのは長泉町だけ。伊豆の強い保守地盤を見せつけられた上、沼津市では前回衆院選で奪った2万3千の票差が、元民主候補の票を合わせても1万票差にまで縮まった。
 民主に追い風が吹いているものの、「相手は確実に浸透している。(解散から投票まで)長い戦いの中、風もどう変わるか分からない」と陣営は緩みを警戒。渡辺氏は「お盆中は動きがとれない。8月第1週までが勝負」とあいさつ回り、つじ立ちに拍車を掛ける。
 「補正で伊豆縦貫道は今年、予算を40億円増やしました」「今後も毎年、だいたい150億円必要」ー。倉田氏は知事選さなかの賀茂地区での演説で、地域振興に向けた保守政権の実績と必要性を強調した。
 伊豆の保守地盤の強さは、インフラ整備と直結してきた。西伊豆のバス事業者は「道路の整備や災害対応などは、自民系議員が頑張ってくれた印象が強い」と指摘。伊豆市の市議は「政権交代したら、陳情を誰に持って行ったらいいのか」と不安を隠さない。
 26日午後、沼津市のマンション展示場跡を使った倉田氏の後援会事務所。第1回選対会議に集まった東部選出の自民県議、市議ら約50人の幹部に、倉田氏は「比例上位だった前回選とは違う。1対1の戦いに勝たせてもらいたい」と深々と頭を下げた。
 倉田氏は落下傘として戦った前回選でも伊豆は渡辺氏と拮抗(きっこう)した。「沼津で差を縮めれば」との皮算用に、多家一彦県議は「郵政選挙の前回選、地元候補を擁した知事選と同じように伊豆の票を考えるのは甘い」と引き締め、倉田氏も「今が自民にとって最悪の時」と、「まったくの逆風」を覚悟する。(衆院選取材班)
(静新平成21年7月28日「09選ぶ夏 激動しずおか」)

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