2009年10月28日水曜日

検証:参院静岡補選 上:下

検証:参院静岡補選 上
「与野党逆転の攻防」
 民主 "連戦連勝"に高揚感
 「来夏2議席」慎重論も
 鳩山政権への評価が争点となった参院静岡選挙区補選は、民主党新人の土田博和氏(59)が初当選を果たし、民主党は知事選、衆院選と合わせ、3戦3勝を果たした。政権交代で逆転した与野党の攻防がどう変わったのか、探った。
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 選挙戦最終日の24日夜、土田氏はJR静岡駅南口の街頭演説で17日間の運動を締めくくった。土田氏や選対本部長の細野豪志衆院議員らが選挙力ーの車上で演説する間、県選出の党所属国会議員9人がずらりと前に並び、政権交代を果たした党の勢いを誇示した。
 世論調査で優勢が伝えられ、陣営には投票日を前に早くも戦勝ムードが漂った。ある党県連幹部は「自民党は誰が選挙をやっているのか見えなかった」と話す。公募で若い岩井茂樹氏(41)を擁立し、「党再生」を訴えた自民党だったが、細野本部長は「自民党再生というのは、本当に国民の関心事なのか」と指摘。「政策で民主党との違いがあるなら、積極的に打ち出してほしかった。争点が自民側から出ず、若干物足りなかった」と余裕を見せた。
 25日夜の投票終了直後、土田氏の「当確」が次々と報じられ、JR静岡駅前の事務所に集まった民主党関係者らは固い握手を交わして勝利を祝った。"連戦連勝"は党県連内に確固たる自信を築いた。
 民主に"死角"はないのか。民主県議の1人は「鳩山政権のご祝儀相場は年内まで。いずれ人気は沈静化し、自民の攻勢も強まる。来年夏の参院選はまったく違う状況の選挙になると覚悟すべき」と強調する。
 26日の記者会見で選挙戦を総括した岡本護党県連幹事長は、次の参院選に向けた課題に業界団体への対応を挙げた。補選では、県医師会が自主投票を決めるなど自民の支持基盤だった団体の間に、政権交代の影響がじわりと広がった。
 選挙戦中盤、自民からの推薦要請に「検討中」と繰り返していた一次産業の業界団体トップは「自主投票」をにおわせつつ、「自民の先生には恩義がある。民主の力量も分からない」と心情を語った。民主側も「業界団体は民主がどれだけ安定的政権か見ている」(細野本部長)と分析する。
 来年の参院選では、土田氏と現職の藤本祐司氏が改選を迎える。小沢一郎党幹事長は「複数区は複数候補を立てたい」との意向を示しているが、現時点で党県連の対応は「白紙」(岡本幹事長)。ある民主系県議は「今回選でも自民は40万票獲得した。来年の参院選で2議席独占できると思うのはおごりだ」と指摘した。
(静新平成21年10月27日「検証:参院静岡補選 」)

検証:参院静岡補選 下
「与野党逆転の攻防」
 自民 どん底から再生多難
 引きずった「与党感覚」
 参院静岡選挙区補選の投票が締め切られた25日午後8時すぎ。自民党公認の岩井茂樹氏(41)の事務所に姿を見せたのは県議や市議、スタッフら限られた人だけだった。並べられたいすは空席が目立った。
 政権交代後、初めての国政選挙。若手を立て、反転攻勢を目指した戦いだった。テレビから流れる民主党候補の当選確実の一報に「こんな選挙を経験することになるとは思わなかった。もう党の形をなしていない」。陣営幹部は野党転落の現実を前にしてため息が漏れた。
 自民党は伝統的に企業や団体の支援を得て支援者を大量動員し、票を固めてきた。だが、陣営は選挙戦当初からこれまでと勝手の違う状況を肌で感じていた。
 「企業団体を回っても手応えはない。これが野党の悲哀なのか…」(陣営幹部)
 8月の衆院選で集票の中心となる衆院議員は8人から1人に減った。連立与党を組んでいた公明党は自主投票。支持団体の"自民離れ"が追い打ちをかけ、民主への風は吹きやまなかった。
 選挙戦が中盤に差し掛かった13日。陣営のてこ入れで静岡入りした二階俊博党選対局長は県連役員らと選挙対策を協議した。「集会を開いて大演説会をやるばかりが選挙ではない。いろいろな形の運動を展開する」と柔軟発想の選挙戦略を求めた。
 谷垣禎一総裁もこの考えを率先した。3度にわたって県内に入り、自転車遊説を展開するなど、新生自民党の選挙を演出した。
 岩井氏は支援者の動員をかけずに、ハンドマイクやメガホンを手に人が多い場所を選んで街頭演説を繰り返した。「民主の若手のやり方を奪うような方法」(陣営)だった。
 牧野京夫自民県連副会長は「焼け野原で意気消沈していた中で、これまで自民に見られなかった選挙活動によって、立ち上がろうという姿勢は見せられた」とかすかな手応えを指摘する。
 「来年は参院選。4年後は、静岡県は衆院選と参院選、知事選とトリプル選挙の可能性がある。野党を自覚し、貧欲(どんよく)に1票を集める努力を今から始めないと。時間はない」。岩井氏の事務所に入って選挙戦を見続けた党本部職員は厳しい現実を受け止めた。
(静新平成21年10月28日「検証:参院静岡補選 」)

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