2009年9月5日土曜日

小選挙区の区割り

「小選挙区の区割り」
 単なる数合わせ見直しを
 政権選択選挙と位置付けられ、民主党が政権交代を実現した今回の衆院選。マニフェストの浸透、インターネットの活用、集票組織の弱体化…。取材を通じて、選挙の質も劇的に変化しているように感じた。ネット選挙"解禁"など選挙制度の見直しに向けた議論は進むだろうが、小選挙区の区割りにも目を向けてもらいたい。
 同じ行政区に2、3の選挙区が混在する地域は「平成の大合併」によって、浜松市や富士市をはじめ全国的にも増えた。今回取材した伊豆の国市は、旧伊豆長岡町が富士市や御殿場市と同じ5区、旧韮山、大仁町が沼津市や伊東市と同じ6区で、前回に続き選挙区が二つに分かれた。
 4年前の衆院選は富士支局で取材した。工場の多い富士市と温泉地の旧伊豆長岡町では生活圏どころか明らかに地域性が違う。当時も、富士市が三島市と同じで富士宮市と異なる選挙区ということに違和感はあったが、伊豆の国市の場合も、伊豆箱根鉄道沿線で三島市と結び付きの強い旧韮山、大仁町が沼津市と同じ6区。5区と6区の区割りについて、納得のいかない県東部の有権者は多いのではないか。
 5区の端に位置する旧伊豆長岡町は、選挙期間中にほとんど候補者が入らず、選挙戦は盛り上がりに欠けた。多くの市民から「選挙区の端っこだから、候補者に関心を持たれない」「地域の実情に合っていない」との声が聞かれた。狩野川治水や伊豆長岡温泉の観光振興といった伊豆長岡地区の課題は、人口規模の大きい地区に比べて、優先順位が低くなるのではという懸念はつきまとう。
 さらに、自民党も民主党も各区に党支部や後援組織を置き、個別に選挙運動を展開。「合併後の市に一体感が生まれない」という指摘もある。自治体にとっては、5区と6区で開票作業を別々に行うため人員や労力の面で大きな負担となる。
 来年の国勢調査の結果を基に、総務省の衆議院選挙区画定審議会が区割りを見直す。単なる数合わせの区割りではなく、民意を政治にどう反映させるのか、そのために国会議員はどのような役割を果たすべきなのか、という視点を持つことが大事だ。区割りの大前提となる議員定数も含めて、時代や実情に合った選挙制度を目指して議論する必要がある。
(大仁支局・大橋弘典)
(静新平成21年9月5日「湧水」)

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