2012年8月31日金曜日

PIに市民不信感:沼津の鉄道高架事業

 PIに市民不信感:沼津の鉄道高架事業
 県は核心突く議論急げ

 事業着手から10年目を迎えた沼津市のJR沼津駅周辺の鉄道高架事業をめぐり、県が行っている住民参加型の合意形成手法パブリックインボルブメント(PI)。県は「不幸を生まない解決策の模索」と位置付けるが、市民の理解度はいまひとつ。県はPIの目的を再度明確にし、核心を突く議論ができる環境づくりを急いでほしい。

 同事業は交通の円滑化や防災力強化などを目的に、約30年前に計画が浮上した。高架化には駅付近の貨物駅の移転が不可欠だが、移転予定地の原地区の地権者らの反対が根強く、用地取得率は7割で頭打ちの状態。2010年には川勝平太知事が「強制収用しない」と明言し、事実上、凍結状態になった。

 県は昨年、有識者会議の結論を受け、事業の推進方針を打ち出し、貨物駅の移転計画も「妥当」とした。その一方で、徹底した合意形成の必要性も強調し、計画の見直しも含めて議論するPIの導入を決めた。

 県の曖昧な姿勢に、市民は混乱している。推進派の男性(59)は「駅前の再開発が着々と進み、推進方針も示されたのに、なぜ今さらPIをやるのか。結論を先延ばしにしているだけではないのか」と憤る。一方、見直しを訴える男性(68)も「PIの前提に推進方針があるのなら、いくら時間をかけて議論しても無駄。反対派への"ガス抜き"にしかならない」と不信感をあらわにする。

 PIでは本年度中に6行程(ステップ)の議論を行い、現計画や代替案を検証する。最終的には議論の結果を踏まえた推奨案を知事に提示する予定だ。県はあくまでも、住民とのコミュニケーションを重視し、合意形成を目指すが、このままではかえってPIに不信感を抱く住民が増えてしまうのではないか。

 PIは現在、地域の将来像や課題を話し合うステップ2の段階でとどまっている。県はこの4カ月間、まちづくりに関する意見を聴く「オープンハウス」「車座談議」などを重ねている。現在は個別の意見を収集するだけで、合意形成に向けた話し合いがいつ始まるのかは不透明だ。

 まちの将来を左右する重大な問題について、できるだけ多くの人から意見を聴くことは大切だが、中心街が低迷している沼津市に、残された時間は少ない。このまま結論が先送りになる事態は避けなければならない。県は今までに挙がった意見を集約し、次のステップに住民を速やかに導いてほしい。(東部総局・豊竹喬)
(静新平成24年8月31日「解説・主張しずおか」)

JR沼津駅前「パレット」最終報告案を承認

 会議室管理、民間委託に

JR沼津駅前「パレット」最終報告案を承認

 JR沼津駅前の東部地域交流プラザ「パレット」の第6回あり方検討会が30日、沼津市内で開かれた。県や近隣市、利用者、運営者ら10人が出席し、県が所管するパレットの業務を一部縮小することなどを盛り込んだ最終報告案を承認した。

 県によると、従来のパレットは団体の設立支援や相談業務のほか、会議室の貸出業務を行っていた。今後は、NPOのコンサルティング、寄付募集、外部の人材育成、広域ネットワークづくりといった中間支援業務に特化し、会議室の管理運営は民間に委託する方針。

 出席者は「財政が厳しい中、NPOは自立していかなければならない。県に依存する体質から脱却するためには、中間支援業務の強化が不可欠」などと述べ、今後の協力体制を確認した。
(静新平成24年8月31日朝刊)

2012年8月24日金曜日

沼津駅前都市機能検討委員会の取り組みについて

西武沼津店の閉店問題

 市が対策方針報告 市議会

 沼津市議会総務経済委員会が23日開かれ、西武沼津店(同市大手町)閉店後の中心市街地の再生策を練る庁内組織「沼津駅前都市機能検討委員会」(委員長・河南正幸副市長)の取り組みについて市当局が報告した。

 同委員会は西武沼津店が閉店する来年1月末までの短期的スケジュールと、閉店後の中心市街地に求められる都市機能を検討する中長期的スケジュールを作成した。

 このうち、短期の予定では9月末までに中心市街地の歩行者薮、空き店舗数、公共交通の利用状況を確認する。また、大型商業施設の撤退後の市街地活性化策について他都市の事例を調査する。並行して12月末までに、西武沼津店の地権者、テナントと情報交換を重ね、法規制の整備や支援制度などを検討する。

 総務経済委で市議からは「『行政は跡地をどうするつもりか』という声が多い。市民に分かりやすく案を提示してほしい」「広報紙で市の方針を示し、市民の意見を募ったらどうか」などと意見が挙がった。

 市の担当者は、地権者の意見を聴取している現段階で具体的な対処案はないとした上で、「地権者の財産の用途を市が決めることはできない。ただ、行政として取り組むべきもの、支援策として来年度予算案に反映すべきものを整理し、検討していきたい」とした。

(静新平成24年8月24日朝刊)

2012年8月15日水曜日

震災がれき処理 大澤敏夫

 震災がれき処理 大澤敏夫  東日本大震災により発生したがれきの処理を巡っては様々な議論があり、どういう処理・処分が被災地の復興に効果的なのか、非常に分かりにくい。  そういう中で、県内では島田市はじめ複数の市町が霞災がれきの受け入れを表明している。絆とか人道的支援とかの言葉は美しいけれど、受け入れ側での放射性物質拡散の問題がないがしろにされてはいないだろうか。  裾野市では、がれきを焼却した灰を須山の最終処分場に埋め立てるというが、須山は柿田川湧水の水源涵養地である。このような場所に放射能で汚染された灰を埋め立てること自体、論外である。  灰は遮水シートを敷いた管理型処分場に埋め立てるので地下に浸透する恐れはないとか、仮に地下浸透したとしても日量一〇〇万㌧余の地下水で希釈されるので心配ないという説明だが、果たして本当に心配はないのだろうか。  処分場の遮水シートが破れることはないのか。大量の湧水で希釈されるというが、汚染物質が均質に希釈されるという想定は正しいのか。放射能汚染は、希釈すれば基準値以下にもなる化学物質とは性質が異なり、微量といえども放射能に汚染された水を一生涯飲み続けた場合の低線量被ばくの影響が怖い、といった、私達が素朴に抱く疑問や不安に対して、行政は真摯に答えていない。  根拠が薄弱で、不確実な知見を示して「納得せよ」と迫り、市民の生命や健康を第一に考える姿勢はうかがわれない。  静岡県東部の四十数万人が飲用する柿田川湧水は、世界遺産への登録を目指す富士山の東南麓に降った雨が浸透した、限りなく清澄であるべき地下氷である。それゆえ高い精神性さえ追求されてしかるべき地下氷脈が放射能汚染されることに深い考慮を払おうとしない県環境局幹部職員の対応は期待はずれであった。  全国でも静岡県東部ほど、水量豊かなおいしい飲み水に恵まれた所はないと断言できる。私達はこの恩恵に感謝し、貴重な天然資源を守り抜く気概を持つべきである。行政の言葉足らずの脱明に唯々諾々と従うのでなく、疑問を感じたり、不明な点は問い返すことが肝要である。  がれきを受け入れる側で環境汚染や健康被害を招きかねない場合でも、人道的支援として協力を求められるとすれば、送り出す側、受け入れる側の双方にとって幸福なことと言えるだろうか。  震災がれき問題の本質は様々な要素が輻輳(ふくそう)し、私達が解決を見出すのは容易ではない。  そこで、私達とは別の視点から問題を究明する研究者から話を聴く講演会を開くことにした。講演を聴き、この問題を解く手がかりが得られたらと思う。  この講演会には県環境局幹部職員、柿田川湧水の恩恵に浴する市町の首長、議長、職員の皆さんを招待している。それは行政、議会、住民が気持ちを一つにして震災がれきの処理・処分の問題に対処してほしいとの思いからであり、この間題に対する理解と認識を共有したいからだ。  多数の皆さんの聴講を期待します。  ◇  講演会「がれき処理・除染はこれでよいのか」  ▽日時=八月二十六日(日)午後二時  ▽会場=市立図書館四階視聰覚ホール  ▽講師=明治学院大学 熊本一規教授  ▽入場無料  ▽主催=同講演会開催実行委員  ▽問い合わせと申込先=実行委員会(電話九三一ー二九〇四「ぬまづ市民自治研」内)(ぬまづ市民自治研究会員) (沼朝平成24年8月15日号「言いたいほうだい」)

2012年8月12日日曜日

サンセットページェント中止(沼朝記事)

サンセットページェント中止に  来年以降もなく20年余の歴史に幕  沼津商工会議所、沼津文化協会、市自治会連合会などで構成し、市観光交流課に事務局を置く燦々ぬまづ推進委員会が主催し、毎年八月下旬に開いてきた千本浜海上花火大会「サンセットページェント」が中止となり、来年以降も開催されないことになった。  安全や経費の確保難しく  事業仕分けで「要改善」  同花火大会は、海の魅力を市民に再認識してもらうとともに、沼津の夏の最後を飾るイベントとして昭和六十三年以来、荒天による休止を除いて毎年開かれ、市内外から約七万人が千本浜を訪れていた。  中心市街地で開かれる狩野川花火大会では打ち上げることができない、開花直径三百㍍を超える尺玉花火、海中で炸裂する水中花火など、海上花火ならではの迫力ある約二千発を千本浜沖の台船から打ち上げてきた。  昨年は、東日本大震災の被災地復興業務のため、尺玉花火を打ち上げる台船が確保できなかったことから、「観客を満足させる花火大会ができない」こと、「節電により街路灯や公園灯の一部が消され、会場や、その周辺の安全確保が難しい状況にある」ことなどから、荒天以外では初めて休止となった。  今年は、同推進委員会の会議で、昨年に引き続き尺玉花火を打ち上げるための台船が確保できないことに加え、観覧工リアが限定されていないことから観覧場所が花火が見える範囲の海岸線全域に及び、「行政側の責任として観覧者の安全確保について改めて検討したが、現状では地形的に対応しきれない」ことが指摘された。  サンセットページェントの安全対策について市観光交流課の尾和富美子課長は、「海岸周辺には住宅街が隣接し、細い路地が何本もあるため、沼津夏まつりと同じように随所に警備員を配備することは困難。事故や災害の発生時に安全な避難誘導ができない」と説明する。  二十二年の開催時には、千本浜防潮堤で来場者の一人が、転んだ人とぶつかって大けがをし、「市の安全対策に不備があった」として、市と転んだ人の両者を相手に提訴。市は勝訴したものの、「防潮堤全体を照らす大量の照明が確保できない中、階段状に海に向かって傾斜する防潮堤で、夜間に来場者全員の安全を確保することは困難。これからも同種の訴訟が起きる可能性がある」と判断。  また、予算的に、四年度には市の補助金千二百万円に協賛金約三百万円が集まったが、二十二年度までに市の補助金は千四百万円へ増額される一方、協賛金は約百五十万円へと半減。  夏まつりの花火大会と同時期に事業所等に呼び掛けて協賛金を集める関係から、当初から協賛金が集まりにくい環境にあったが、リーマンショック以降の景気後退で、さらに減少。一般市民にも協力を求めたが、思うようには集まらなかった、という。  サンセットページェントでは当初、花火大会を前に様々な企画もあり、夕暮れ時から各種団体による歌や踊りのステージなどがあったが、花火が始まる時刻までは来場者が少なく、徐々に規模を縮小し、やがて休止となった。  また、千本浜海水浴場の海の家での飲食の販売もあったが、海水浴客の減少で海の家がなくなり、飲食の露天が並んだものの、これも年々縮小。  来場者も花火が始まるころに会場を訪れ、終了時刻には閉まっている商店や飲食店も多いため、花火だけを見て家に帰る人が多かった。  一方、駿河湾クルーズで洋上から海上花火を楽しむクルーザーやヨットなど船舶所有者の人気を呼び、サンセットページェントに合わせてディナークルーズを企画する都心部の旅行代理店などもあったが、接岸せずに都心から来て都心に帰る船も多く、市観光交流課でも「船舶での観覧者については全く把握していない」という。  経済効果や何隻参加していたのかは不明だが、花火大会が始まるころには、洋上に船舶が並んで光の帯を描き、来場者には協賛金に充てるペンライトを販売。花火の後、船団のイルミネーションに向けて来場者がペンライトを掲げて左右に振る「光の交換」イベントが恒例となっていた。  当時、会場では「洋上で見ている金持ちのために、なぜ自分達がこんなことをしなければならないのか」といった声もあったが、その後、イベントの縮小に合わせて「光の交換」もなくなり、結局、花火だけが残った。  さらに、二十二年度の事業仕分けで「市のイベント展開事業」の一つとして、同推進委員会が主催する冬の花火大会ウインターステージへの補助金二百万円、サンセットページェントへの千四百万円も含まれ、「要改善」に。  これを受けて、市で各事業の見直しを行い、まずは来場者が少なかったウインターステージが費用対効果を考えて二十二年度で休止。  サンセットページェントは継続方針にあったが、二十三年度の事業仕分けでも、にぎわいづくり企画推進事業の一つに含まれて「要改善」。各事業を見直す中、サンセットページェントに関する訴訟があったこと、協賛金が減少していること、安全対策の難しさがあることなど、複合的な理由から中止の結論に至った。  同推進委では「開催にあたり会場や周辺における来場者の安全確保が難しい状況にあることなどから、やむを得ず、このような結論を下すことになった」とし、「楽しみにしていただいている皆さんには深くお詫び申し上げるとともに、今後とも様々なイベントやキャンペーンを通して、沼津の魅力をアピールするための取り組みを展開してまいります」と市のホームページを通じて市民に理解を求めている。 (沼朝平成24年8月12日号)