2015年5月28日木曜日

高尾山古墳付近の道路 沼津市 17年度に着工へ

高尾山古墳付近の道路 沼津市 17年度に着工へ
 沼津市は27日の市議会建設水道委員会で、前方後方墳「高尾山古墳」(同市東熊堂)が建設予定地にあるため一部で工事が中断している市の都市計画道路「沼津南一色線」について、2016年度末までに古墳の大半を取り壊した後、17年度から古墳跡付近の道路建設工事に着手する考えを明らかにした。25日の市議会文教消防委員会で、今後2年間で墳丘全体を削り取る発掘調査を行う計画を報告している。
 建設水道委で後藤久道路建設課長は、古墳の保存に向けて迂回(うかい)案などを検討したが、「道路の構造上、困難だった」と強調した。国道1号と国道246号を結ぶ沼津南一色線を整備することで周囲の道路混雑の解消につながると説明し、古墳もある国道1号から約650㍍部分の供用開始については「21年度末ごろを目指す」と述べた。
 市議から新たな発見があった場合の対応を問われると「調査の過程で歴史的な発見があった時は一時中断して検討する」と話した。
 高尾山古墳をめぐっては25日に日本考古学協会(高倉洋彰会長)が「駿河地域の古墳時代最初頭の重要遺跡」などとして、保存を求める会長声明を発表した。高倉会長は「学術的価値が極めて高いことから全面保存を求めてきただけに市の判断は極めて残念。最大限、古墳の保存が図られるよう今後も引き続き検討してもらいたい」とコメントを出した。

(静新平成27年5月28日朝刊)

2015年5月14日木曜日

「あの築山は要らない」7つの理由:河辺龍二郎



「あの築山は要らない」(上)河辺龍二郎
 ここで「あの築山」というのは、沼津市が千本常盤町ときわ保育所の南側松林に、田子の浦港の浚渫土を積み上げて海抜15mの築山を造り、震災時の津波避難場所もしくは東日本大震災のモニュメントとしようとしている、「あの築山」のことです。
 誤解のないように、あらかじめ申しますが、「要らない」というのは、「あの築山」であって、地域の災害時避難場所が不要だと言うつもりは毛頭ありません。それどころか、まず必要なのは実効性のある避難場所であり、それを早急に実現すべきは自明のことです。以下は私見です。
 1、沼津市では、東南海地震、さらに相模湾地震の最大クラス(レベル2)の地震・津波の被害想定からハザードマップを作成しています。それによれば、ときわ保育所近辺は海抜約6mで、最大被害想定は、浸水地上30㎝となっています。
 この想定に対して、「あの築山」はあまりに過大ではないか、というのが正直な印象です。
 ちなみに、従来、避難場所とされていた常盤町自治会館(保育所2)は地上高約4m(海抜10m)です。もちろん、これで十分かどうかは人により判断が違うと思います。ただ、市の施策として見た場合、過大な設定は経済的な負担を増やすのみならず、迅速な実施も阻害することになります。できれば、避けるべきではないでしょうか。
 2、理由は不明ですが、市は海抜15mの高さに固執しています。理由を聞いても「低いより高い方が良いから」というばかりです。
 推測するに、市はハザードマップとは別の基準により、決定をしているのだと考えざるを得ません。例えば、「千年に一度」ではなく「五千年に一度」の災害を考えている、とか、また逆に、ケースバイケースで担当者の裁量に任せているとか。
 いずれにせよ、海抜15mに固執する根拠を市民に明示するべきです。また、これは明らかにダブル・スタンダードと言えるでしょう。
 もし、他地域から同様の要求(ハザードマップの想定を大幅に上回る要求)が出た場合、市は、どのように対処するのでしょうか。
 3、「あの築山」について、当初は「シンボルを作る」と言っていたと思います。それが何のシンボルなのか、説明もないまま、今は「モニュメントを作る」と言っています。
 モニュメントとは何か。それは記念碑であり、東日本大震災の悲惨な被害を心に留めて忘れないための記念碑である、という説明を受けました。
 確かに、それは正しく立派なことで、分からないところは、どこにもありません。しかし、その記念碑を、ここ沼津市の千本松原の中に建設すべき必然性を見出すことは、かなり困難に思えます。
 これは自己満足の行為と見られないでしょうか、被災者や遺族は、どのように見るでしょうか。本当の意味で震災を教訓として心に留めるならば、実効性のある対策を、迅速に実施することが、何より優先されるべきでしょう。対策の遅れをモニュメントで置き換えることはできません。
(つづく)(群建築研究所沼津代表・沼津牧水会理事)(沼朝平成27年5月12日号)

「あの築山は要らない」(中)河辺龍二郎
 4、築山の斜面の勾配は1/18(29)と公表されています。
 「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」によれば、急傾斜地とは傾斜度30度以上の土地とされています。また、県建築基準条例のがけ条例でも、規制の対象になる勾配は30度以上です。そのため、それを避ける、ぎりぎりの数字が29度と思われます。しかし急勾配であることは明白です。
 ところで、工事中も現状のまま残すことになっている松の中で、築山の山裾にかかっているものが十数本あります。松は根張りが広く、水分等の吸収や根の呼吸は、地表近く、深さ30㎝程の所で行うので、根の周りに広く地表を残す必要があります。
 市は工事方法を工夫するから大丈夫だと言っていますが、根の周りの盛り土は何としても避けなければなりません。そのためには、山裾のラインは、大きければ68mは後退することになります。当然勾配は30度を超えるでしょう。現在の勾配を維持するなら、頂上高を下げるか、もしくは、擁壁(高さ34m)が必要となります。どうするのでしょう。
 改めて言いたいのですが、29度勾配で本当に大丈夫なのでしょうか。場合によっては、それを上回る恐れも出ています。しかも、これは何もない広場に、これから浚渫土を積み上げて、造り出そうしているものです。限りなく近くとも、「法の基準さえ超えなければ、それが安全であって、そこに危険はない」というふうに、市は考えているとしか思えません。
 それで良いのでしょうか。まして、今考えられている避難は「発生度は極めて低いが、発生すれば甚大な被害をもたらす、あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震・津波」(*)に際しての避難です。
 こんな形ばかりの考え方で造られる「あの築山」は、本当に市民を守ってくれるのでしょうか。安全が少しでも危惧されるような場所に誰が避難するのでしょうか。
*「静岡県第4次地震被害想定」における「レベル2の地震・津波」
 5、田子の浦港の浚渫ヘドロには、かなり高濃度のダイオキシンが含まれていることは周知の事実です。沼津市はダイオキシンについて何も説明していませんが、おそらく、国の決めた許容量以下ということで、問題なしとしているのだと思います。
 しかし、国際的な基準として、WHO(世界保健機関)が認めている許容量から見れば、大幅に上回っているのは確かです。
 現に田子の浦港の地元富士市では、市内処分を原則としているようですが、処分先の各地域で反対運動が起こっています。詳細は有志が調査中なので、追って報告があると思います。
 あの清浄な松林に、ダイオキシン入りのヘドロを持ち込み、それを固めた築山の上に、命を託すことを、沼津市民は良しとするのでしょうか。
 6、日頃見る富士山の頂上付近の傾斜勾配が27度~30度です。この築山が、これと同じくらいの勾配です。この築山には傾斜の緩急、つまり起伏のようなものはありません。なぜなら、先に述べたように、法律ぎりぎりで29度勾配が設定されているからです。平地での立ち上がりから頂上の平場まで一直線の勾配です。
 ところで、この傾斜がドンナものかというと、スキーをやる方は分かると思いますが、初心者にとって、30度の斜面に臨んだ時は足のすくむ思いです。
 また、富士登山をされた方は分かると思いますが、頂上付近は、いわゆる胸突き八丁といって、胸を突かんばかりの急斜面です。
 市は、ここで市民、観光者が憩い、散策する、などと言っていますが、笑止の沙汰です。雨が降れば、芝生を植えた表層の土は確実に流れます。流れたあとは、ヘドロの地山が雨に濡れて、くろぐろと露出する。こんな景色を見たいと思う人がいるでしょうか。
 築山の下に立ち、目の前をふさぐ巨大な築山の姿を見上げて、これはこの松林にまったくふさわしくない、などということにならないようにしたいものです。
(つづく)(群建築研究所沼津代表・沼津牧水会理事)(沼朝平成27年5月13日号)

「あの築山は要らない」(下)河辺龍二郎
 7、松の木を一本も切らないという決定は、市の素晴らしい英断だと思います。千本松原について、増誉上人の故事や「枝一本、腕一本」の話、若山牧水の松伐採反対など、沼津市民との歴史的、文化的な深い関わりを思い出させてくれる機会ともなりました。
 現在は移植を予定している三本の大樹については、「根回し」を完了したと聞いています。
 何よりも松の木の存続を願う人間として、移植については深い関心を持っています。なぜなら、移植した結果、それが原因で、何年かして枯れてしまったというのでは、伐採を先送りすることを容認したのと何ら変わりがないからです。
 また、「根回し」の結果は二~三年経たなければ分かりません。その時、移植可能な状態でなければ、移植することはできません。
 そんな中、市は「根回し」が終わった段階で築造に着手する意向を示しています。築造が始まってしまえば後戻りはできません。移植が可能かどうか、移植後の松がどうなるのか、ということに関係なく、松の木は自動的に排除されてしまう可能性が高くなります。
 このような見切り発車は、断じて容認しかねます。移植完了を待つべきです。
 市は、移植を待たずに着工するについて、土嚢を高さ7mに積み上げて松を保護すると言っています。土嚢は仮設置の状態で、とても安全なものとは言えません。移植の判定までの二~三年の間、避難場所としては使うわけにはいきません。もちろん市も承知で、この間は使用しないと言明しています。それでは、何のために、早期着工にこだわるのか、これが最大の疑問です。
 ここまで述べてきて、二つのことが分かりました。
 一つは市の姿勢です。市当局が計画を決め、議会で承認を得、業者との発注契約も済んでいる以上、今さら市民がとやかく言うな、という頑なな姿勢です。
 そして、もう一つは、代替案はいくらでもある、ということです。ぜひ皆さんでお考えいただきたい。中部浄化プラントの建物屋上まで階段を作るとか、築山を低くして展望台を高くするとか、保育所の屋上を利用するとか、いくらでもあるじゃないですか。
 本当に知恵を出し合うのは、この分野だと考えますが、どうでしょう。
 「あの築山は要らない」は、「このままなら、あの築山は絶対に要らない」と言い直すべきかもしれません。

(おわり)(群建築研究所沼津代表・沼津牧水会理事)(沼朝平成27年5月14日号)