2010年8月20日金曜日

西郷真理子氏


西郷真理子氏(コミュニティーデザイナー)


【 さいごう・まりこ氏 燦々ぬまづ大使。沼津市の町方町、通横町、大門町のまちづくりでコンサルタント委託を受けている。1990年にまちづくりカンパニー「シープ・ネットワーク」を設立、住民との協働を重視した手法で各地の中心市街地活性化を手掛けた。日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー大賞受賞。】

 沼津・中心市街地再生を模索
 土地の魅力空間に凝縮
 全国的に中心市街地の疲弊が進む中、町屋や蔵などの地域資源を際立たせる手法や、地権者が会社を設立して数百㍍に及ぶ商店街全体の店舗構成などをプロデュースする手法によって、ピーク時の何倍も来街者を増やした事例が目立つようになった。沼津市も、アーケード名店街を含めた沼津市町方町、通横町、大門町エリアで、住居と買い物の両機能を備えた商業形態「ライフスタイルセンター」を目指す計画が進められている。成功に導く決め手は何か。
 ー新しいまちづくりに求められる視点は。
 「食や歴史文化など、その土地の魅力を凝縮した生活空間をつくろうという視点。中心市街地の活性化にあたり、生活スタイルのブランド化は今後欠かせなくなるだろう。価格よりも本物を重んじる志向が強まっている今だからこそ、足元の『本物』に目を向けてまちづくりをすべき。こだわりを敏感にキャッチできる、感度の高い住民の存在も核になる」
 ー具体的にどう動くか。
 「対象エリアの動態調査に加え、回答が縛られない対面式の聞き取り調査などを実施してニーズを把握する。沼津の場合、高額商品は東京や横浜に買いに行くが、日常生活品は地元でという傾向が見られた。それなら魚や野菜、茶という食の魅力がある。例を挙げれば、皆が健康的でおいしい有機、低農薬の野菜を、地元の食材を使ったドレッシングで食べている街。それが『沼津版ライフスタイル』の確立につながっていく」
 ーアーケード名店街が参考にしている香川県高松市丸亀町商店街の成功要因は何か。
 「住居と店舗を一体化したことで消費が見込める定住人口を確保した上で、60年後に土地を地権者に戻す定期借地権を導入し、合意形成をスムーズにしたこと。商店街を街区分けしてショッピングゾーンや生活用品ゾーンなど、エリアごとに性格を持たせたテナントミックスや、来街者が歩く道路空間の魅力を高めた工夫も大きい」
 ーアーケード名店街のまちづくりでは、何が焦点になるか。
 「専門家の立場では、中心を抜ける道路空間の活用が成功の鍵を握ると考える。防火建築として日本初の共同建築様式を手掛けた実績があるだけに、皆仲が良く、可能性を感じる。各地で手掛けた成功事例での唯一の共通点は、地域に誇りを持つ住民の多さ。県庁所在地であるとか、商店街の疲弊度などは関係なく、どの街にもこうした熱い住民の存在を前提とした『復活のチャンス』はある」(聞き手=東部総局・大須賀伸江)
(静新平成22年8月20日「本音インタビュー」)

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