2021年1月18日月曜日

大自在 まるで映画を見ているような錯覚に陥った。

 


大自在

 まるで映画を見ているような錯覚に陥った。舞台は16日の米首都ワシントン。群衆が民主主義の砦(とりで)とも言える連邦議会議事堂を包囲し、乱入した▼議事堂内は次期大統領となるバイデン氏の当選を正式認定する手続きのさなか。"主役"の姿はそこになく、ホワイトハウスで襲撃の生中継をただ見続けていた、楽しんでいる様子だったと、後に米紙が報じている▼米下院は支持者をあおって議事堂を襲撃させたとしてトランプ大統領の罷免を求める弾劾訴追決議案を可決した。トランプ氏は襲撃当日、ホワイトハウス前で大規模集会を開き、支持者に議会へ向かうよう呼び掛けていた▼4年前、米社会の分断を背景に大統領選に勝利したトランプ氏。その際「分断の傷を癒やす時だ」と呼び掛けた演説とは裏腹に、分断を促すような根拠のない言動、SNSを使った一方的なメッセージを発信し続けた。今回の大統領選では「不正があった」と強弁。果ては議事堂襲撃という米国史に残る事態につながった▼20日の新太統領就任式に向け、首都には厳戒態勢が敷かれている。武装した支持者による抗議活動の情報もあるという。結末が用意されたフィクションではない。紛れもない米国の現実だ▼同じ地で、57年前にも歴史的な出来事があった。20万人以上が人種差別の撤廃を訴え、集まった「ワシントン大行進」。マーチン・ルーサー・キング牧師が「私には夢がある」と人々に融和を呼び掛けた。さらに複雑化した現下の分断を越えて、その夢が本当にかなう日が来ると信じたい。

【静新令和3年1月18日(月)朝刊】

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