2021年2月5日金曜日

芥川賞・宇佐見りんさん(沼津出身) 単独インタビュー 静岡新聞令和3年2月5日夕刊一面

 

芥川賞・宇佐見りんさん(沼津出身)

単独インタビュー




うさみ・りん 1999年沼津市生まれ、神奈川県育ちの大学生。2019年に「かか」で文芸賞を受けデビュー、同作で20年の三島由紀夫賞を最年少受賞。「推し、燃ゆ」が史上3番目の若さで芥川賞に決まった。

 

書いて真実見つけたい

小説描写県内風景も

 「推し、燃ゆ」で第164回芥川賞に選出された宇佐見りんさん(21)=沼津市出身"5日までに、リモートで静陶新聞社の単独インタビューに応じた。小説執筆の根源を「一つ、真実を見つけたいという気持ち」と表現し、「目指すものを書き続ける」と意欲を語った。

 初めて小説を書いたのは、小学3年生の授業。以後絶えることなく創作を続けた。高校に入学してからは純文学を意識し、長編を手掛けるようになった。中学、高校では演劇部に在籍。俳句を学んだ時期もあったが、小説を選び取った。「一人の人間の視野、内面的要素、身体感覚を伝えられる点で小説という表現がいいなと。自分一人で(作品に)向き合えるし、良しあしが全て自分の責任になる」

 「推し、燃ゆ」は、生きにくさを感じながら、男性アイドルの応援に心血を注ぐ10代女性の物語。「推し」と呼ばれる現象や当事者のありようを、精緻な描写で例示した。「『推し』という言葉は、単なる趣味のような捉えられ方をすることが多い。そうした冷ややかな視線や感覚をはぎ取りたかった。そこには切実な何かがあると思った」

 沼津市生まれで、2歳まで家族で住んでいた。神奈川県内に引っ越してからも、高校時代までは毎夏、同市内にある母親の実家に23週間滞在した。 「(沼津市内の)らららサンビーチが好き。温泉にもよく行った。(7月下旬の)夏まつりでは、花火が終わってから(商店街の)マルサン書店さんに連れて行ってもらうのが楽しみだった」

 静岡県内の風景をモチーフに使うこともある。「『推し、燃ゆ』では、主人公のおばあさんが入っている病院の周辺の描写に、熱海市の海岸のイメージを混ぜている」

 目指す小説家像に具体的なモデルはないが、書き続ける理田ははつきりしている。「一っ、真実を見つけたいなという気持ちで毎回書いている。いろいろなやり方で自分の中を掘って、作品ごとにそれ(真実)が見えかけた時はあるが、まだ届いてはいない。これからも掘り続けたい」(聞き手=文化生活部・橋爪充)

【静新令和325日夕刊一面】

0 件のコメント: