2014年10月7日火曜日

千本松原を守りましょう 林茂樹(記事沼津朝日新聞)

 千本松原を守りましょう 林茂樹
 沼津市は、市立ときわ保育所の子どもたちや住民の命を津波から守る津波避難施設として、千本松原の一画(ときわ保育所と中部浄化プラントの間)に、来年三月の完成予定で、「人工高台」を造成する工事に着手しようとしています。
 計画では松を伐採し、田子の浦港の浚渫(しゅんせつ)土にセメントを混ぜて盛り土し、標高一五メートルの「築山」を造成するとのことです。

 千本松原は、戦国時代に、戦乱によって伐採されたものの、増誉上人(乗運寺の開山)が住民と力を合わせて復元した松原だと伝えられております。また、大正十五年には、この千本松原の松を伐採しようとした県の計画に、歌人若山牧水は住民と共に反対する運動に立ち上がり、この計画は中止されました。
 住民によって植えられ、幾世代もの人々によって守られてきた千本松原は、沼津市にとってかけがえのない大切な財産です。津波から住民の命を守るためとはいえ、住民が植え、育て、守ってきた千本松原の松を伐採せねばならないのでしょうか。松を伐採せずに住民の命を守る方法はあるはずです。皆で知恵を絞るべきだと思います。
 そこで、沼津市当局に松を伐採せずに済む方策を求めてまいりましたが、太い松の移植には二年間の根回しが必要で、来春の「築山」完成に間に合わないので、一部を除き、二本立ちの太い立派な松をはじめ、数十本の松を伐採するとのことです。
 静岡県第四次地震被害想足の沼津市「津波ハザードマップ」によれば想定津波高が五㍍であるのに対して、ときわ保育所前の防潮堤の高さは八㍍強です。
 津波が防潮堤を越えることは想定されていません。
 また、ときわ保育所の標高は約六㍍で、予想浸水深は沼津港側からの浸水による三〇㌢です。複合施設の保育所二階には標高一〇㍍の常盤町自治会館が併設され、ここが避難場所になり得ます。
 それよりも沼津港の周辺地域の予想浸水深四㍍乃至(ないし)八㍍の住民の津波避難を考えることこそ緊急を要するはずですが、この対策は未定で、「築山」は、この地域の人たちのためのものではないということです。
 この「築山」の造成が、沼津の宝・千本松原の松を数十本も伐採して行わなければならないほど緊急を要する事業でしょうか。松を移植するか、設計を変更すれば、松に囲まれた美しい「築山」が造成できるはずです。千本松原の松を伐採しないでください。
 ◇
 十月三日、この要望書「千本松原を守りましょう!」を栗原裕康沼津市長に提出しました。
 同日、沼津市議会地震・津波対策調査特別委員会が急遽開催され、傍聴しましたが、当局は、松の伐採を避けるための設計の変更も松の移植の意を示すこともありませんでした。
 驚いたことに、地元常盤町に住む議員を除き、松を伐採して「築山」を造成するという説明を受けている議員がいなかったことが分かりました。
 沼津市民の大半が、沼津の宝である千本松原の松が伐採されることを知らなかったはずです。
 孔子の言葉を引きます。
 「過ちては改むるに憚(はばか)ることなかれ 過ちて改めざる是を過ちという」(論語)
 「千本松原を守りましょう!」の署名運動を始めました。皆さま、ぜひ賛同してください。
 署名用紙は沼津市若山牧水記念館にあります。
 (千本山乗運寺住職、沼津牧水会理事長)

(記事:沼朝平成26年10月7日号「言いたいほうだい」)


参照:要望文

沼津市長 栗原裕康様
 千本松原を守りましょう!(要望)
 沼津市は、ときわ保育所の子どもたちや住民の命を津波から守る津波避難施設として、千本松原の一角(ときわ保育所と中部浄化プラントの間)に、来年3月の完成予定で、「人工高台」を造成する工事に着手しようとしております。千本松原の松を伐採し、田子の浦港の浚渫土にセメントを混ぜて盛土をして、標高15メートルの「築山」を造成するとのことです。
 千本松原は、戦国時代に、戦乱によって伐採されたものの、増誉上人(乗運寺の開山)が住民と力を合わせて復元した松原だと伝えられております。
 また、大正15年には、この千本松原の松を伐採しようとした県の計画に、歌人若山牧水は住民と共に反対する運動に立ち上がり、この計画は中止されました。
 住民によって植えられ、幾世代もの人々によって守られてきた千本松原は、沼津市にとってかけがえのない大切な財産です。津波から住民の命を守るためとはいえ、住民が植え、育て、守ってきた千本松原の松を伐採せねばならないのでしょうか。松を伐採せずに住民の命を守る方法はあるはずです。皆で知恵を絞るべきだと思います。
 そこで、沼津市当局に松を伐採せずに済む方策を求めて参りましたが、太い松の移植には2年間の根回しが必要で、来春の「築山」完成に間に合わないので、一部を除き、二本立ちの太い立派な松をはじめ、数十本もの松を伐採するとのことです。
 静岡県第4次地震被害想定「津波ハザードマップ」によれば、海岸の想定津波高は5メートルで、防潮堤の高さは8メートル強です。津波が防潮堤を越えることは想定しておりません。ときわ保育所所在地の標高は約6メートルで、予想浸水深は沼津港側からの浸水による30センチです。保育所2階の標高10メートルの常盤町自治会館が避難場所になり得ます。
 沼津港の周辺地域の予想浸水深4メートル乃至8メートルの住民の津波避難を考えることこそ緊急を要するはずですが、この対策は未定であり、「築山」はこの地域の人たちのためのものではないということです。
 この「築山」の造成が、沼津の宝・千本松原の松を数十本も伐採して行わなければならないほど、緊急を要する事業でしょうか。松を移植するか、設計を変更すれば、松に囲まれた美しい「築山」が造成できるはずです。千本松原の松を伐採しないでください。
 平成26103
 千本山乗運寺

 住職 林茂樹


2014年9月26日金曜日

原に最新式貨物ターミナル
 沼津鉄道高架 知事所信表明
 県議会9月定例会

 県議会9月定例会は25日開会し、川勝平太知事は県政の諸課題に対する所信表明で、JR沼津駅付近鉄道高架事業に伴い、県が沼津市やJR貨物と協議し、沼津市原地区に最新式の新貨物ターミナルを整備する方針を示した。現在の貨物駅機能の原地区への移転に知事が正式に言及したのは初めて。
 関西地方の貨物ターミナルの視察やJR貨物首脳との会談を通じて、「最新式の効率的かつ静かに荷役作業のできるターミナルが整備されれば、首都直下型地震など国の有事に際して沼津が重要な役割を果たすことができることを確信した」と述べた。
 新貨物ターミナルについて、コンテナを本線上で列車からホームに積み降ろしができる着発線荷役(E&S)方式を取り入れる案を示した。その上で「平時においては待避機能を主とする」と指摘し、騒音対策などを含め地元住民に配慮する考えを明らかにした。
 一方で「有事の際に貨物取扱機能が発揮できるよう、平時でもわずかとは言え、貨物取扱を非常時に備えて行っていなければならない」と述べた。
 同地区に鉄道で分断された南北の連絡通路となる立体横断施設を先行して整備する方針もあらためて示した。
(静新平成26925日夕刊)

 沼津鉄道高架 現行計画で事業進展へ
  県と沼津市 用地取得は不透明
 川勝平太知事が25日、県議会9月定例会でJR沼津駅付近鉄道高架事業に伴い、沼津市原地区に貨物ターミナルを整備する方針を表明したことを受け、県と沼津市は現行計画に沿って事業を進展させる考えでいる。ただ、事業に反対する地元地権者から同意が得られるかは不透明なままだ。
 川勝知事は所信表明で、原地区に最新式の貨物ターミナルができた場合、首都直下型地震などの有事に「重要な役割を果たす」と指摘。一方で」平時には(列車の)待避機能を主とする」と、反対地権者側が譲歩した待避線に近いことを強調した。
 線路をまたぐ立体横断施設の設置に向けた調査費200万円も9月補正予算案に計上。東海道線で分断されている地区内の南北通行確保へ検討を始める。
 だが、肝心の用地取得が進まなければ、事業の進展は望めない。県によると、計画の貨物ターミナルの用地118㌶のうち、買収が必要なのは93㌶。これに対し、市がこれまでに買収を済ませたのは69㌶と74%にとどまっている。
 県幹部の一人は「まずは知事の考えに理解がいただけるよう、住民に説明を尽くすしかない」と話す。

 「大きな前進」「心強い」
 地元市長、県議ら歓迎
 川勝知事が県議会9月定例会でJR沼津駅付近鉄道高架事業に伴い、沼津市原地区に現在の貨物駅の機能を移転し、貨物ターミナルを整備する方針を示したことについて、市長や市選出県議ら事業推進に期待を寄せる地元関係者からは「大きな前進」「心強い」と歓迎する声が相次いだ。
 沼津市の栗原裕康市長は「鉄道高架は相当な犠牲を払ってもやるべき。推進するには貨物駅の移転が不可欠で、知事の発言は市にとって大きな前進になる」と強調する。沼津商工会議所の市川厚会頭も「事業の一日も早い着工に向けて心強い。知事の行動と決断に敬意を表する」とし、同市などと連携して事業推進に最大隈の努力をすることを約束した。
 市選出で県議会議長の多家一彦氏(自民改革会議)は「長年の懸案が一気に片付く方向性が見えた。鉄道高架のスタートの年になれば」と期待を寄せる。自民改革会議代表の杉山盛雄氏は「知事が腹を固めたと感じた」と述べた上で「知事と原地区の関係者とのイメージの違いの折り合いをどう付けるか」と課題を挙げた。
 ふじのくに県議団の曳田卓氏は「知事が自ら関西の貨物ターミナルを視察し、認識を改めたのはいいこと」としながらも「地権者の理解が得られるかは非常に不透明だ」とも加えた。
 公明党県議団の蓮池章平氏は「対話と合意形成をスピード感を持って進め、これまでの努力が無駄にならないよう結果に結び付けてほしい」と要望した。

 地権者は反発 「事実上の貨物駅」
 川勝知事が、沼津市原地区に待避機能を主とする最新式の新貨物ターミナルを整備する方針を示したことを受けて、原地区への貨物駅移転に反対する地権者などからは「ターミナルは待避線ではなく、事実上の貨物駅だ」と反発する声が上がった。
 地権者の1人で、原貨物駅に土地を売らない地権者の会の殿岡修代表代行は「私たちの思いを無視した内容」と憤る。殿岡代表代行らは5月に知事と会談した際、旅客列車と貨物列車の時間調整に使う貨物列車用の待避線を認める譲歩案を提示している。「提示したのは一切、荷役作業がない待避線。わずかでも荷役がある以上は貨物駅」と強調する。
 地権者の会の加藤益久事務局長は「荷役作業があれば、騒音や生活環境への悪影響など懸念は無くならない。知事を信頼してきた地元の気持ちを考えてほしい」と訴える。
 高架事業見直しを望む市民団体・さわやか沼津2012の松下宗柏代表は「貨物駅移転と高架事業は一体の話。人口が減少する中、市の財政を考えれば高架事業どころではない」と指摘し、今後も事業見直しを求めていく考えを示した。
(静新平成26926日朝刊)

沼朝平成26年9月27日記事
高架事業新たな局面に
 知事が「原に新ターミナル」発言
 解脱川勝平太知事が二十五日、「新ターミナル」という表現で原地区に新貨物基地を設ける考えを示したことで、沼津駅付近鉄道高架事業は、新たな局面を迎えることになった。
 知事の発言は、県議会定例会初日冒頭、県政の課題について所信を表明する中で行われた。
 知事は、まずプラサヴェルデのグランドオープンに言及。沼津駅駅北地区について「にぎわいは予想したとおりであり地域再生のきっかけになるものと確信している」との認識を示した上で、「沼津市が、県東部の拠点として、さらに発展していくためには、現在の貨物駅跡地の有効活用をはじめとする、沼津駅周辺のまちづくりを着実に進めていく必要がある」と規定。ここで「現在の貨物駅跡地」という表現を使い、現貨物駅の移転に踏み込んだ。
 続けて、関西の貨物駅ターミナルを視察したこと、JR貨物の社長、会長と面談したことに言及。
 「これらを通じて、阪神淡路大震災の際、その前年に整備された姫路貨物ターミナルが、救援物資の輸送拠点として大きな役割を果たしたことを知った」とし、「これに照らせば、沼津の地に最新式の、効率的かつ静かに荷役作業のできるターミナルが整備されれば、現在想定されている首都圏での直下型地震などの災害が発生した場合、まさに国の有事に際しては沼津が重要な役割を果たすことができると確信した」と述べた。
 従前、「貨物駅の必要性」に疑義を唱えていた立場からは大きな方向転換だ。ただ、新貨物駅については知事なりの考えがあるようで、次のように述べた。
 「ここで強調したいのは、沼津の新ターミナルは、平時においては待避機能を主とするもので、しかし、有事の際に貨物取り扱い機能を発揮できるよう、平時においても、僅かとは言え、貨物の取り扱いを、非常時に備えて行っていなければならない。その際、地元の方々が懸念されている騒音等、生活環境への影響に関しては、万全の対策を尽くしていく」
 舵は新貨物駅設置に切りつつ、内容については、これまで言われている計画とは趣を異にするものを示唆した。
 現在の貨物駅の取扱量が一四万トンだと言われているのに対して、現行計画によると、新貨物駅は最大四〇万トンと考えられている。
 知事は、自らが示す新ターミナルについて、基本的には、あくまでも待避線であり、貨物の取り扱いについては「僅かとは言え」と表現。計画されるような、現行を大幅に上回るような機能は必ずしも必要ではないとの考えをにじませた。
 この裏にあるものは何か。現状で新貨物駅用地の取得率は予定の七四・四%。三割近くが不足する中で、計画された規模の施設整備が困難であるとともに、知事は自分の任期中は強制収用しないことを重ねて明言している。一方で、地元からは「待避線」なら受け入れる余地はある、との妥協を引き出している。
 この両者を足して出る答えは何か。新ターミナルは、与えられた用地で規模を縮小して設けるということか。
 知事の表明は次のように続く。
 「当地は千本松原をはじめとする自然と、白隠禅師ゆかりの寺院など歴史を感じられる緑豊かなところであることから、地元の皆様と検討を進めてきたグリーンヴィレッジを柱にした桃源郷づくりを沼津市と協力して進めていく」
 「このような中で、原地区においては、まずは鉄道により分断されている南北地域間の連絡の利便性と防災機能を向上させるため、平時には富士山が見える展望台にもなる歩行者用の立体横断施設を先行して整備することとし、その検討経費を補正予算に盛り込んだ」
 知事の思惑は、どこにあるのか。新貨物駅の規模が縮小されるようなことになるとすると、JR貨物の理解を得られるのか。また、貨物を取り扱うとなると、待避機能だけならという地元の反発を受けることは必至。
 具体的な話が進むにはまだ課題は多いようだ。
(沼朝平成26927日号)




2014年9月18日木曜日

県:沼津高架関連で調査費

沼津高架関連で調査費
 知事表明の原地区立体横断施設
 県はJR沼津駅付近鉄道高架事業に関連し、沼津原地区での東海道線をまたぐ歩行者用立体横断施設の設置に向けた調査・検討を開始する。18日に発表した9月補正予算案に、調査費200万円を計上した。
 原地区は、鉄道高架事業の現計画で、沼津駅にある貨物駅機能の移転先とされている。現状でも東海道線によって南北が分断され、往来が妨げられているとして、川勝平太知事が貨物駅移転の有無にかかわらず立体横断施設を優先設置することを表明していた。
設置を検討する横断施設は、平時は富士山が見える展望台、災害時などには避難施設としての機能を持たせる方針。ただ、設置場所などの詳細は未定で、実現には地域やJR東海などとの協議も必要になる。このため、必要な施設の規模や位置、構造などを検討し、概算工事費 を算出する。
 県は既に、沼津駅北口の総合コンベンション施設「プラサ・ヴェルデ」を設計した建築家長谷川逸子民のデザインによる立体横断施設のイメージを地元住民に示している。

(静新平成26918日夕刊)

2014年8月30日土曜日

知事、JR貨物と会談し認識

 知事、JR貨物と会談し認識
 沼津貨物駅 「防災拠点として重要」
 JR沼津駅付近鉄道-高架事業をめぐり、川勝平太知事は29日、JR貨物の田村修二社長と都内で会談し、同事業に伴う貨物駅移転に関して意見を交わした。知事は会談後の取材で「(防災拠点としての)沼津貨物駅の重要性を初めて知った」と述べた。
 会談は知事側の要請で行われ、知事と社長の2人が約1時間にわたって話し合った。
 知事によると、首都圏が大規模地震などに見舞われて鉄道が寸断された場合、沼津貨物駅が西日本からの物資搬送の拠点になるとの説明を受けた。知事は、1995年の阪神大震災の際に姫路貨物駅(兵庫県)が担った役割と同様とし、「JR貨物は日本全体の物流の防災を考えている。日本のために尽くす使命を果たしている」などと評価した。
 また、大阪府内や神戸市内にある貨物ターミナル駅を8月に見学したと述べ、「ものすごく静かで、貨物のイメージが根本的に変わった」とした。
 知事はこれまで沼津貨物駅の不要論も唱えていた。7月に高架化事業を推進する方針を表明した一方、事業の具体的な進め方などは明らかにせず、JR貨物側との意見交換を希望していた。
(静新平成26年8月30日朝刊)

2014年8月12日火曜日

戸田運送船(ホワイトマリーン号)定期航路廃止へ

戸田運送船が定期航路廃止へ 8月末で運航を終了
 市議会総務経済委員会(加藤明子委員長)が十一日に開かれ、市当局が、戸田運送船(山崎元社長)が運航する沼津港ー戸田港ー土肥港間の定期航路廃止を報告した。二〇〇三年八月三十一日、伊豆箱根鉄道の「こばるとあろー」による沼津港-松崎港をつなぐ西伊豆航路が廃止された後、西伊豆地域に唯一残っていた定期航路も今月末をもって姿を消すことになった。
 市の補助金増額難しい中 対応探るも打開策なく
 芹澤一男観光交流課長が航路廃止までの経過を報告。六月三日、戸田運送船から「補助金増額がなければ八月末をもって定期航路を廃止せざるを得ない」と申し入れがあり、同月二十六日、庁内で検討。「利用者の状況を踏まえ、これ以上の補助金増額は厳しい」とする結果を直ちに山崎社長に伝えた。
 市としては、戸田住民にとっての「足」の確保と観光振興の意味もあり、現状の補助金のままで定期航路運航継続の可能性はないか同社と共に模索。特定曜日の運休やタクシーによる平日の振り替え運行などを考えたが、七月二十四日、同社は「赤字解消は困難」だとして定期航路廃止決定を通知してきた。
 同航路への補助金は、戸田村時代の平成十五年度五百万円、翌年度一千万円。沼津市は合併した十七年度から昨年度まで毎年千五百万円を補助していたが、今年度は運航便数の減少に合わせて千四百二十五万円に減額している。
 同航路の乗船客数は平成十六年度四一、六〇七人、十七年度は合併効果があったのか四二、九八三人へ増えたが、次年度から前年度比で、五、八九七人、一、九五六人、七、五〇四人(リーマンショック)、四、一七三人、一、四三四人、六、一一四人(東日本大震災)、三、二八六人の各減と減少の一途をたどり、昨年度は前年度比九一七人減で乗船客数は十七年度の三割にも満たない。
 一方、戸田への入り込み客数は推計で、二十一年度から二二八、六〇七人、二一四、八五〇人、二〇一、八六三人、二一.一三、五七九人、昨年度は二〇一、〇九九人で、乗船客減の影響はない。
 報告を受け、山崎勝子委員(共産党市議団)が、乗船客数の推移、客数減少の原因を尋ねたのに対し芹澤課長は、合併によって県道船原西浦高原線など周辺道路が整備され、車利用者が多くなったことなどを挙げた。
 岩崎英亮委員(新政会)は「千五百万円の補助金があるのに」と経営状況を質問。芹澤課長は、船の維持管理費、燃料費の高騰を挙げ、「新規に観光クルージングを始めるなど経営努力はしてきたが、廃止はやむを得ないと考える」と答弁。また、観光客の利用が八割以上で、平日には利用客がない状況を報告した。
 二村祥一委員(市民クラブ)は、戸田港-沼津駅間のバス乗車料金が千五百六十円で、戸田港-沼津港間の乗船料二千円(市民は一割引)より安いことに言及し、利用者の声を尋ねたのに対して芹澤課長は、運航便数の減少に伴って戸田始発時刻が遅くなり、通院時間や買い物などに不都合が生じていることを挙げた。
 山下富美子委員(未来の風)は、戸田住民への航路廃止周知について質問。芹澤課長は、七月二十九日に開かれた戸田地区連合自治会の定例会へ山崎社長と共に出席し、廃止決定を単位自治会の会員に報告するよう要請したことを答えた。
 山崎委員は「多額の補助金を支出している市として同社の経営チェツクができていたのか。以前から疑問があった(会社だ)」と、過去に同社の社員が不正経理を同党に摘発した一件を示唆したが、芹澤課長は「民間企業なので」とするにとどまった。
 山崎委員は「他の事業にも(市から)補助金が出ている。その意味でも今回の戸田運送船の経営検証が必要になる」として、経営状態がどうだったか詳細かつ厳密に調べることを市当局に要望した。
(沼朝平成26812日号)


 「定期船廃止なら代替を」 戸田や土肥存続求める声
 沼津市戸田の戸田運送船(山崎元社長)が運航する沼津港と戸田港、土肥港を結ぶ高速船定期便が8月末で廃止されることが明らかになった11日、戸田や土肥地区の地元関係者からは観光資源や生活の足として利用してきた定期便が無くなることに対し、存続を望む声や観光地へのマイナスイメージを懸念する声が上がった。
 定期便は2011年にも運航廃止が持ち上がり、戸田地区連合自治会などの存続要望や同社の企業努力で存続につなげた。地区連合自治会によると、今回は7月下旬に同社や市から「8月末の運航廃止」を聞いたという。
 石原重利地区連合自治会長は「公共交通機関が脆弱(ぜいじゃく)な地域だけに継続してもらいたいのが地元の本音」と話し、廃止の場合は代替案を市に要請していく方針を示した。
 市によると、定期便利用者の8割以上を観光客が占めていたという。伊豆市観光協会土肥支部の山田伸次事務局長は「実際に定期便を使って土肥に来ている人はそれほど多くはないと思う」としながらも、「一つの交通手段が無くなることは観光地としてイメージダウン」と残念がる。
 戸田運送船によると、定期便では観光客や地元住民以外に、戸田地区の診療所向けに医療用物資なども輸送してきた。市に補助金増額を申し入れて存続の可能性を探ったが、断念した。山崎社長は長年にわたって赤字が続いていたことを廃止理由に挙げ、「減便によるコスト削減など、やれることはやってきた。続けられなくて本当に残念」と話した。

(静新平成26812日朝刊)