2014年10月10日金曜日

沼津・築山建設住民が署名提出

千本松原伐採見直しを
 沼津・築山建設住民が署名提出
 市長「両立を検討」

 沼津市が同市本に津波避難用の人工高台「築山」を建設するのに伴い、千本松原の松を伐採する計画を受け、伐採の見直しを求めている地元住民らが9日、市役所に栗原裕康市長を訪ね、賛同する1744人分の署名を提出した。市側は14日に予定していた松の伐採の延期を決め、栗原市長は「松と防災が両立できるよう検討したい」と述べた。訪れたのは、沼津ゆかりの歌人若山牧水をたたえる沼津牧水会の林茂樹理事長(76)5人。牧水は沼津に住み、当時持ち上がった松の伐採計画の反対運動を行った。林理事長は「移植をするか、松を生かした形で築山を造るか考えてほしい。お互いに知恵を絞ることが大切」と設計見直しを求めた。伐採撤回まで、署名活動を続けるという。
 これに対して、栗原市長は東日本大震災を受け、近隣の園児らの生命を守ってほしいという要請から建設に至った経緯を説明した。その上で、「防災のシンボルとして建設を進めている。災害はいつ起こるか分からない。地元の意向を確認して対応を検討したい」と述べた。
 市によると、築山は市立ときわ保育所の隣接地に建設する。整備面積は約4200平方㍍で、頂上は海抜約15㍍になる。9月から工事に入り、来年3月の完成を目指す。住民からの見直し要望を受け、当初予定していた伐採予定の松を約150本から約90本に減らすとしている。

(静新平成26年10月10日朝刊)

「クロマツ守って」と改めて要望
 1744人分の署名簿を持参
 千本松原に計画されている津波避難用築山(人工高台)の造成に伴うクロマツ伐採に抗議する市民五人が九日、市役所に栗原裕康市長と真野彰一市議会議長を訪ね、造成計画の見直しを求めた。訪ねたのは沼津牧水会理事長の林茂樹乗運寺住職ら。
 千本松原への築山造成
 設計変更を求め市民有志
 計画に対して「千本松原を守ってください!」と要望書を市長に提出したのは林住職個人だったが、今回の署名簿提出には、千本松原の保護・育成に賛同する四人が同行。林住職が、クロマツの「助命嘆願」のため五日に始めた署名活動で八日までに集まった一、七四四筆分を市長に渡した。
 市長が「これだけ大騒ぎになったら延期せざるをえない」と話すと、林住職は「クロマツを切るなんて言わなければ署名集めをすることはなかった」と応じた。
 同行した沼津倶楽部副理事長の宇野統彦さんは「沼津倶楽部改築の際には、市から『松は一本も切ってはならない』と指示された」と話し、今回の計画で当初、百五十本のクロマツ伐採を予定した市の一貫性のなさを示唆。
 林住職は、計画地内にあったサンゴジュやモチなどの大木がクロマツを除いて全部切られたことを挙げ、「クロマツを残してくれたので、切らずに築山を造成すると考えていた。(担当課が)切らないよう計画変更を検討すると言ってくれたが、何の変化もなかった」と市の対応を疑問視。
 これに対して市長は、松を伐採した後、築山に「沼津の森づくり」を計画していたことを話し、「築山は(袋井市が盛り土で建設した)命山にならって沼津の防災のシンボルと考えた」とした。
 林住職が「松を生かした築山にできるのではないか」と指摘すると、牧水会理事で元沼津市教育長の長澤靖天さんは「先ほど現地を見てきたが、変化のある形にすれば松を切らずにできるのではないか。設計変更にも、それほど時間はかからないのでは」と話した。
 市長は「災害は、いつ、どのように起きるか分からない。(市立ときわ)保育所関係者から『なんとかしてくれ』と言われたのが(計画の)原点」だと、緊急性と防災上の必要性を説いた。
 また、できれば伐採中止の要望受け入れと築山造成を両立させたいとの考えを示した上で、「松を一本たりとも切ってはいけない、ということではなさそうなので、努力していきたい」と、シイ、タブ、カシなどを植えて自然豊かな築山にしたいと説明。
 また、「設計変更するとなると二、三年かかる。地元の人達が、どのように言うか。防災も大事だが松も大事。できれば、完成時期はずらさないようにしたい」とした。
 その上で、「市としては松を生かす方法も考えた。保育所の幼児の命を守るのか、松を守るのか、決断しなければならない」と、地元の意向を酌みながら進める考えを示した。
 続いて要望者は真野議長と議長室で面会。市が林住職の要望を受け入れ計画変更したと議長が発言したのに対して林住職は、クロマツの伐採が百五十本から九十本に減少したのは、「あれは変更ではなく、一部修正に過ぎない」と主張。
 林住職は、三日に開かれた市議会の地震・津波対策調査特別委員会を傍聴し、地元常盤町に住む長田吉信委員以外の七委員が「松が切られることを知らなかった」としたことに、市議会の在り様を問題視。
 議長は「議会としては予算が通っているということで、委員会としては予定通りやりたいと。(市当局には)関係者と知恵を絞って意見調整しなさい、というのが委員会の意向だった」と答えた。
 さらに林住職は、望月利通危機管理監から「人.の命と松の命はどちらが大事か」と言われたことについて、「無礼千万なこと。誰が松の方が大事だと言うのか」とし、人の命と松の命を比べること自体が失礼な話だと不見識を批判。
 長澤さんは「松を切らずに築山を造成することは可能ではないか」と計画見直しを議会として市当局に求めるよう訴えた。
 終了後、牧水会監事の鈴木宏之さんは「市内には津波から逃げる施設がない所が、まだいっぱいある。逃げる場所がある計画地に、なぜ今、造らなければならないのか。他にやることがあるのでは」と話した。

(沼朝平成26年10月11日号)

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