2016年12月25日日曜日

情報サイト休止 影響力の大きさ自覚を

 
 情報サイト休止 影響力の大きさ自覚を
 IT大手が運営する情報サイトが相次いで休止したり、記事が削除されたりする事態となった。内容の誤りや他サイトからの無断転用があると指摘されたからだ。メディアとしての自覚と責任を改めて確認すべきだ。
 問題となったのは、医療・健康やフアッション、観光・旅行など利用者の関心が高い特定のテーマごとにまとめられた情報サイトで、手軽に情報を得られるため人気になっていた。発端はディー・エヌ・エー(DeNA)が運営する健康情報サイトで、掲載記事に医学的な根拠のない誤った内容が多く含まれていると問題視された。
 ネットメディアは大きな影響力を持っている。にもかかわらず、問題のあったサイトでは、専門家による監修を受けずに医療情報を提供したり、ライターに他サイトからの無断転用を推奨しているかのような指示もあったりしたという。一方でこうしたサイトには広告が掲載され、利用者の閲覧回数が増えれば増えるほど広告料収益が増える仕組みになっている。
 業界を代表する大手企業が利益を優先し、記事の正確性などメディアとして重要な要素を後回しにしていたとすれば、あってはならないことだ。特に医療や健康関連の情報は、その影響に配慮するのは当然だ。情報を発信しておいて真偽の判断は利用者任せというわけにはいかない。
 DeNAは「成長を追い求めて正しい情報への配慮を欠いた」として10あった全ての情報サイトを休止。他の大手サイトでも記事の公開中止や削除が行われた。DeNAは弁護士による第三者委員会を設置し、企業風土も含めた原因調査と改善に向けた検討を始めた。メディアとしての公共性や社会的責任を再確認し、信頼回復を図ってもらいたい。情報の確かさを担保するには、コストをかけた裏付け取材や内容のチェックが不可欠となろう。
 検索サイトで検索をかけると常に上位に表示される仕組みも、行き過ぎれば情報の価値をゆがめる恐れがあることに留意する必要がある。サイトの一部では、検索に引っ掛かりやすいように利用者の関心の高いキーワードを織り込んで文書を作るよう指示が行われていたとされる。
 アクセスが多い情報が正しい情報とは限らないことを、利用者側もしつかりと理解しておかなくてはならない。
手軽に入手できるネット情報は玉石混淆(こんこう)だ。いかに良質な情報を手に入れるか。ネットメディアの使い方を理解して活用する能力の必要性は、より一層高まっているといえよう。

【静新平成281225()社説】

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