2020年4月12日日曜日

沼津・長谷寺で開帳 疫病平癒のご利益に願いを込め


きょうも浜の観音さん
疫病平癒のご利益に願いを込め

 千本緑町の時宗長谷寺(遠山元浩住職)の例祭「春まつり」が11日に始まり、きょう12日にも行われる。
 「浜の観音さん」と親しまれ、大曼陀羅が開帳される晩春の沼津の風物詩。明治期に描かれた百二十反大曼陀羅から昭和62(1987)に生まれ変わった現在の百三十反大曼陀羅。強い浜風を受けて近年は破れなど傷みが出てきたため、1年をかけて修復が行われ、今年は再生した姿、お披露目の年。
 11日午前は晴天に恵まれ、三々五々訪れる人達が見物台に上り、観音像を真正面から拝んでいた。
 同寺の創建は古く、弘法大師空海が全国を巡る途中、平安時代初めの天長2(825)に沼津に逗留し、地元の漁師達が信仰していた十一面福聚自在天観世音菩薩を安置したことが始まり。
 一国で一力寺、「はせでら」を名乗ることが許された(そのほかの寺では読みは「ちょうこくじ」)駿河国の長谷寺で、駿河一国観音霊場三十一番札所、駿豆両国(横道)観音霊場十三番札所、東海道百地蔵尊九十五番札所。
 時代が下り、江戸時代初頭の寛永8(1631)、三枚橋城主を務めた松平庸親の長男、小松周防守が曼陀羅を寄進した記録が残る。
 この寄進は、廃城となった三枚橋城と最後の城主となった大久保家を憂い、また、観音の加護により一命を取り留めたと伝えられる、平維盛の嫡男六代の供養、さらに航海安全祈願と海難供養のためのものだという。
 遠山住職によれば、十一面観音には10のご利益があるとされ、その第1が疫病平癒。疫病が流行した時にすがるのが観音で、仏事の年中行事として行う祈願会を止めることなく行うことにこそ、寺の存在価値があると言う。
 このため、今年の例祭では、参加者の位置関係が密接になる本堂での大数珠による百万遍は中止にしたものの、アルコール消毒液の用意など対策を講じた上で大曼陀羅の開帳を行うことにしたもので、千本浜公園児童公園には露店も出ていた。
 大曼陀羅開帳は戦時中にも行われたといい、今年の開帳は周防守の時から数えて389年目。きょう12日は、雨の予報が出ているが、大曼陀羅はテントの中で開帳。顔に触れることもでき、これまでの例では、それが目当てで訪れる人もいると言う。
【沼朝令和2年4月12日(日)号】

新型コロナ感染拡大止まらず…
沼津・長谷寺で開帳
 観音大曼陀羅に終息祈る

 海の安全を守る「浜の観音さん」として地元で親しまれている沼津市千本緑町の長谷寺(遠山元浩住職)11日、恒例の春の祭典が開かれた。今年は新型コロナウイルス感染の早期終息も祈願し、約400年前から続く観立大曼陀羅(まんだら)の開帳を行った。12日も午前9時から午後4時まで開帳する。
 大曼陀羅は縦30㍍、横13㍍の帆布に墨で「十一面福聚自在天観世音菩薩(ぼさつ)
が描かれている。祭典では、本堂前にクレーンでつり上げて掲げた。参拝者は境内の特設見物台に上り、静かに手を合わせていた。
 感染予防のため、大曼陀羅の開帳以外の行事は中止・縮小した。遠山住職は「観音様の現世利益の第一が疫病平癒。感染が続き、イベントの自粛が求められているが、開帳についてはむしろやるべき時だと判断した」と語った。
 現在の大曼陀羅は1987年に作られた。帆布が破れるなど傷みが目立つようになったため、1月に大修復を行つたばかりという。
(東部総局・マコーリー碧水)
【静新令和2年4月12日(日)朝刊】





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