2022年2月18日金曜日

スピード女子1000高木美帆「出し切った」ついに「金」

 


2022北京冬期オリンピック

スピード女子1000高木美「出し切った」

5種目挑戦ついに「金」鍛錬貫き達成感

 快記録を確認すると「よっしゃあ」と思わず叫び、腕を突き上げた。スピードスケート女子1000㍍を高木美帆(27)=日体大職=が制した。5種目出場の締めくくりでついに個人種目の世界一。有終の美を飾り「自分の全てを出し切ることができた」と表彰台の真ん中で歓喜に浸った。

  15組中13組で内側のレーンから飛び出し、全体トップで200㍍を通過。「力強く伸びのある滑りを」とのイメージ通りにさっそうと滑り切った。全レース終了後は日の丸をまとい、リンクサイドで待つデビット・コーチの元へ。固く抱き合うと、涙があふれた。

 連戦になるほど心身が研ぎ澄まされるのが高木美だ。1シーズンに一般的な選手の倍の約60レースに出場した高校時代。「つぶれてしまう」との周囲の懸念にも「後で経験が生きる。若いうちからタフにならなきゃ」と場数を踏み続け.た。

 昨年末の五輪代表選考会中は5種目に挑む自らに「体だけではなく、気持ちでも覚悟を持てるのか」と間うた。メダル獲得を期待される立場は自覚している。得意の1500㍍などに集中すべきかー。たどり着いた結論は「チャレンジしてみたい」。誰にも相談せず、考えを貫いた。

 困難な道を進むため、リンク内外で全てに神経を注いだ。新型コロナウイルス禍で感染リスクを減らそうと、遠征にはおにぎりを握って持参。少し行動するたびに消毒し、マスクを換えた。その徹底ぶりに、後輩選手は「意志の強さのレベルが違う。『美帆のふり見てわがふり直せ』だ」とうなる。

 今大会7レース目は「体

がぎりぎりだったが、謎の自信があった」という。自らの可能性を限定せずに戦ってきたオールラウンダーは「最後までいけると思えたのは、たくさんの距離を滑ってきたことが大きい」と自負をのぞかせた。

 初めて五輪で滑ったのは20102月18日、バンクーバーの1000㍍。天才と呼ばれた15歳の少女は完走者の中で最下位の35位に終わった。それから12年、ぶれることなく鍛え続け、金メダルをつかみ取った。日本選手団主将として臨んだ3度目の五輪を「強い達成感がある」との言葉で結んだ。(共同)

「最高のドラマ」「父ら感無量」

 悲願の金メダルに、会場は総立ちになって拍手を送った。スピードスケート女子1000㍍に出場した高木美帆(27)の地元・北海道幕別町では17日、父や恩師が町百年記念ホールに集まり、テレビ中継で観戦。感無量の様子で「最高のドラマだ」と快挙をたたえた。

 町民らとビデオ会議でつないだ会場は新型コロナウイルス対策で、マスク姿の関係者ら約20人に制限。「必勝一のはちまきを巻いた父愛徳さん(64)らがエールを送った。

 連戦の疲れの中、五輪新記録の圧巻の滑りを見せると「すごい」「今度こそいける」と期待が高まった。試合が終わり金メダルが決まると、会場の全員が思わず立ち上がり、スティックバルーンをたたき、万歳三唱で祝福した。

 自身もスピードスケート経験者の飯田晴義町長は「何が起こるか分からない五輪で待望の金メダル。やりきったねと声を掛けたい」と興奮した様子。試合後もじっと画面に映る美帆を見つめていた愛徳さんは、促されてあいさつし「日の丸を背負い、勇気と感動を少しでも届けられたかなと安堵(あんど)している」と喜びをかみしめた。

【静新令和4218日(金)朝刊29面】

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