2018年10月18日木曜日

社説 沼津高架収用調査 粘り強い交渉続けたい



社説 沼津高架収用調査 粘り強い交渉続けたい
 JR沼津駅付近鉄道高架事業の前提となる貨物ターミナル移転用地(沼津市原地区)の取得に向け、事業主体の県と沼津市が30日から、土地収用法に基づく未買収地の立ち入り調査に着手する。
 構想から30年、事業認可から10年以上が経過している。強制収用を視野に入れた手続きで、事業を巡る動きは新たな局面に移る。
 同市の頼重秀一市長は臨時記者会見で「任意交渉がなくなるわけではない」と強調した。県と市は11日付で、24人の地権者を含む個人や団体の代表者ら40人に調査の着手を通知している。県と市には円満な解決と今後の事業進展も考え、反対の意向を示し続けている地権者らと粘り強い交渉を続けてもらいたい。
 調査の目的は、県収用委員会に裁決申請するための土地物件調書作成だ。現在の用地取得率は842%で、未買収地の広さは調整池・緑地を含む約14685平方㍍。土地の測量や立木を含む物件を調べて補償金額を算定し、地権者に価格を提示する。調査は4日間の予定という。
 収用手続きの流れは、事業認定告示日とする921日から1年以内に裁決申請を行い、県収用委の審理・裁決を経て土地を取得するという。JR東海道線、御殿場線の延べ約5㌔の高架は沼津駅周辺総合整備事業の中核事業。駅北□にはコンベンション施設の「プラサヴェルデ」が完成しているが、貨物ターミナルの移転が前提となっている高架事菜は着工のめどが立っていない。
 前市長の急逝を受けて行われた4月の市長選では、主要候補3氏の間で鉄道高架事業への賛否が分かれ、推進の立場を示した頼重市長ら2候補の得票率は73%を超えた。頼重市長は選挙結果を踏まえて高架事業について「強力に進めたい」との考えを示し、原地区を含む市西部地区を「県東部の物流拠点として発展させたい」との構想も示した。
 事業を強力に進めるというなら、頼重市長には市西部をいかに物流拠点化し、原地区の将来像をどのように描いていくのかを市民に分かりやすく提示する必要がある。市西部地区は富士市と隣接する。7月には小長井義正冨士市長と初の首長会談が開かれた。場合によっては両市連携でグランドデザインを検討するのもいいだろう。
 高架が完了した場合の駅周辺のまちづくりについて、市は11月にも「まちづくり戦略会議」を設ける。高架で生まれる空間の活用方法などについて議論を深化させたい。
【静新平成30(2018)1018(木曜日)社説】

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