2009年6月7日日曜日

静岡県知事選情報6月7日

自・民の思惑:上
 相乗り崩れ総力戦へ
総選挙控え自民危機感
 「自民党が政権を失ってしまうか、今まで通りなのか。本当にすごい、大事な選挙になってしまった。理解と支援を、強力にお願いしたい」
 袋井市で6日開かれた自民3区支部定期大会。柳沢伯夫衆院議員は知事選をめぐる党の現状をこう説明した。
 民主党県連が推薦する前静岡文化芸術大学長の川勝平太氏(60)の出馬表明で、自民党の坂本由紀子参院議員(60)=静岡選挙区=、民主党を離党した海野徹元参院議員(60)=静岡市葵区=による3陣営の激戦の構図がほぼ固まった5日。自民党は党本部で、細田博之幹事長らが出席し、坂本氏の支援態勢を検討する戦略会議を開いた。
 「県民党として、一党一派に偏らない選挙を目指す」と出馬の会見で強調した坂本氏の選挙戦略が議論となった。
 「そもそも、県民党って何だ」
 「ポスターに自公推薦の文字が入っていない」
 こんな発言が飛び出した。一首長選に関し、党本部が対策会議を開くのは極めて異例。「静岡県知事選で敗北すれば7月12日の東京都議選、ひいては衆院選に影響する」(党幹部)との危機感の表れだった。会議は、党推薦と党を挙げた坂本氏の支援を固めた。
 坂本氏は、会議後の参院議員会合で深々と頭を下げた。「時間がないので厳しい情勢。心強い支援をいただいて感激の極み」
 自民県連の知事候補選びは、昨年暮れに動き出した。低迷する内閣支持率など党への逆風を感じる中、当初から「民主との激突回避」に流れた。民主県連の側にも「知事選びは政局にすべきでない」との議論があり、水面下で相乗り候補の擁立作業が進んだ。川勝氏の名前も両党関係者の間で浮かんでは消えた。
 だが、いち早く出馬表明した元民主党員の海野氏が後援会活動を活発化させ、「せかされた協議になり、最終合意にも影響した」(自民県議)。相乗り候補の擁立作業は頓挫し、自民の候補は副知事経験のある坂本氏で落ち着いた。自民県連と坂本氏の政策協議はままならず、川勝氏の擁立をめぐり、民主との連携に走った県議の処分問題まで引き起こした。
 3氏の対決構図が固まり、選挙戦を指揮する小楠和男自民県連幹事長は6日、「石川県政の功績は静岡空港を含めた県土発展の基礎固め。そのインフラを緊縮財政の中で生かす戦略、発想、ソフトパワーに坂本さんの能力は一致する」と必勝の構えを語った。
 一方、6日に決起集会を開いた海野氏。自民を離党した渡辺喜美衆院議員を応援弁士に招き「脱官僚、県民主義の政治」を演出。自民、民主両党の知事候補選びについて、「わたしは純粋無所属で県民の立場。向こう(坂本、川勝両氏)は官僚、政党という立場の構図だ」と断じた。

 有力3氏が争う見通しとなった知事選(18日告示、7月5日投票)。自民、民主両党県連の候補者選びは、政策より「勝てる候補探し」に奔走。総選挙前の激突回避など思惑が交錯して時間だけが経過し、短期決戦となった。
(静新平成21年6月7日「自・民の思惑」)



転機:’09知事選 自・民対決 擁立劇、二転三転 /静岡
 石川嘉延知事の辞職に伴う知事選(18日告示、7月5日投開票)に、自民党参院議員の坂本由紀子氏(60)、静岡文化芸術大の前学長の川勝平太氏(60)、元民主党参院議員の海野徹氏(60)が立候補に名乗りを上げた。石川知事の辞職表明から2カ月余り。8月以降に実施の見方が強まる次期衆院選の前哨戦の構図に落ち着くまでの動きを検証した。【松久英子、浜中慎哉、望月和美】

 ◇密室批判、相乗り頓挫
 「知事選に出馬していただけませんか」

 5月2日、県選出の2人の衆院議員が、県出身のシンクタンク理事長(62)に、こう訴えていた。衆院議員の1人は自民党の柳沢伯夫氏。もう1人は民主党の渡辺周氏。口説き文句は「相乗りでの支援」だった。

 年明けとともに、両党は民間人を念頭に「ポスト石川」を探り始めた。官僚出身の石川知事の任期は7月末まで。5選に意欲を示していたが、石川県政を支えてきた両党とも世論の「多選批判」に懸念を深めていた。

 当初は独自候補の擁立を目指した両党県連だが、衆院選を控え、知事選での全面対決を避けたいムードが強まる。県議にも「オール与党県政」を維持したい思惑があった。柳沢、渡辺両氏がそろって理事長に出馬を打診したのはこうした底流があったからだ。

 ところが流れが一変する。5月6日、自民党県連の会合で柳沢氏らが提起した理事長の相乗り擁立論に反発が続出。柳沢氏は「この議論をサスペンド(延期)させてほしい」と発言。相乗りは頓挫した。県連幹部は誤算にうめいた。「密室で話を進めた執行部への不満が噴出した」

 ◇内部対立、両党混迷
 相乗りの候補者選びが進んでいた5月3日、県東部の首長19人が三島市内に集まった。「東部から知事を出したい。そのタイミングを図っていた」(参加者の一人)。“血判状”まで用意していたという会合では全員一致で坂本氏支援を決め、出馬も要請した。絶妙の一撃に、これまで坂本氏に難色を示していた県連主導の流れが変わり、一気に「坂本氏擁立」に傾いた。

 対する民主党は坂本氏と知名度で対抗できる候補者として、榛葉賀津也参院議員(42)が浮上。榛葉氏も党幹部に直訴し意欲を見せた。しかし、県西部財界の有力支援者らが難色を示したため勢いはしぼみ、党本部に判断を預ける形に。18日、参院からのくら替えに否定的な小沢一郎代表代行の「駄目だ」との一言で、榛葉氏の芽はなくなった。

 一方、自民も坂本氏がなかなか出馬表明しないため、支援を正式決定する総務会を延期する事態に。19日の県連大会で事実上、出馬を明らかにしたが、その態度に反発する一部の県議が民主党県連に声をかけ「夢あるしずおか創造会議」を旗揚げした。

 「坂本だけは出させない」。厳しい顔で言い切った県議は、いったんは相乗り候補だった川勝氏に接触した。混迷する両党。ベテラン県議の一人はこう表現した。「史上最悪の事態だ」

 ◇一本化へ残る火種
 川勝氏の真意をはかりかねていた民主党県連が「出馬の意欲はある」と踏んだのは「5月21日の出来事だった」(幹部)。坂本氏の後援会幹部で静岡文化芸術大関係者が学長室を訪れ、川勝氏に真意をただし、川勝氏が憤然と反発したとの話が広がったからだ。

 民主党県連幹部は「半ばあきらめていたが、坂本氏サイドの動きに救われた」という。出馬を抑えようと坂本氏サイドが動いたことが川勝氏の背中を押したと見立てた。

 しかし川勝氏はこのあとも「出馬の意思はない」などとの発言を繰り返す。これに「創造会議」旗揚げの中心だった一部の自民党県議が反発。川勝氏が出馬を打ち消す発言を続けたため、相次いで会議を離脱した。

 一方、川勝氏自身は記者団に対する出馬否定発言と裏腹に、5月30日、東京都内で民主党の小沢一郎代表代行と会談。民主党県連も「間違いなく出馬する」(幹部)との手応えをつかんだ。

 結局、5日に出馬表明した川勝氏だが、民主党には懸念がある。支持層が重なる元民主党参院議員の海野氏の存在だ。海野氏は6日、静岡市葵区で数百人を集めた決起集会で「候補者を一本化するなら私だ」とけん制。火種は消えていない。
(平成21年6月7日毎日新聞webnews)

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