2009年5月31日日曜日

栗原市長と語る会


原・浮島地区で市長と語る会
「高架より新放水路を」の声
市長は受益範囲の違いを指摘
 開発工学部撤退の東海大 施設は存続、関係者で活用協議


 市長と語る会「地域を語る沼津きらめきミーティング」が二十八日、原・浮島地区住民を対象に原地区センターで開かれ、自治会関係者を中心に地元住民ら約九十人、市議、市職員が出席した。栗原裕康市長が今後のまちづくりの基本姿勢を語った後、前もって自治会役員から出されていた質問に市長ら市幹部が答える形で進められた。
 西の玄関口づくりと自然・歴史を生かしたまちづくり市長は、原・浮島地区で歴史・文化の振興として興国寺城跡保存をはじめ「白隠のみち」、帯笑園などの整備を進めていることを説明。
 また、興国寺城跡北に計画されている第二東名のサービスエリアにスマートインターチェンジ(以下スマートIC)を建設する案を中日本高速道路株式会社と検討していることを示し、実現すれば「西の玄関口になることは間違いない」と力説した。
 スマートICは、サービスエリア、パーキングエリア、バスストップから高速道路に乗り降りできるETC専用インターチェンジ。斎藤衛・前市長が提唱したファイブエントランス構想の「西の玄関口」には全くなかった案。
 農振農用地の有効活用市内の農業についても他都市同様、従事者の高齢化や後継者不足、輸入農産物の増大による価格低迷、耕作放棄地の増加など多くの課題を抱えている点を挙げ、国の制度改正を踏まえて多様な農業の担い手の確保など、農業の振興と農地有効活用を図ることを表明。一策として耕作放棄地を利用した農業の手助け案を示した。
 東海大学開発工学部市長は、松前達郎・東海大総長に直接、存続を求めた際の総長の回答を紹介。現在地では学生が集まらないことなどを理由に開発工学部の「存続は無理」だとするものだったが、大学(施設)を手放したり、撤退したりする考えのないことを明らかにした、という。
 学部閉鎖後は、体育系の研修・合宿や経営・技術革新センターとしての利用を考えていること、跡地利用に関して情報交換するため、県、市、同大で組織する連絡協議会を設置することで合意していることを明らかにした。
 興国寺城趾の整備計画用地取得が約八〇%、整備に必要な発掘調査が約二六%と、順調に進んでいることを報告。用地取得後の整備期間は二十六年度から五年間を予定しているが、国からの補助の程度によって進捗度が変わることを説明。
 浮島の未来 市長は、浮島地区は耕作放棄地が増えて埋て立て地が広がっているとの認識を示し、「埋め立てを規制しなければならない」と、市独自の条例を検討していることを話した。
 西部地区の常襲浸水被害対策 市長は、同地区の治水問題は長い間の懸案事項だとした上で、「昔の人が『あんな所にはとても住めない』と言った場所が住宅地になっている」とし、抜本的な解決策として放水路建設を挙げた。
 その一方で、「国から予算を持ってくる方策が見つからない」とし、市長が衆院議員時代に防衛政務次官を務めたこともあり、「今沢基地関連で防衛予算が出ないか検討したが難しい」とした。
 松下博彦・河川課長は「事業が遅れている原因は、他都市に比べて水害の程度が小さく、被害額に比べて放水路建設費が莫大なため費用対効果の面から国に理解が得られない」とする一方、「新たに昨年度から沼川河川整備計画に着手したことは大きな前進」だとの見方を示した。
 市長は、三島市を流れる狩野川支流の大場川が台風による増水で住宅が流されたことを機に改修事業が行われたことを挙げた。
 以上で、あらかじめ示された質問への回答が終わり、質疑応答に移った。
 最初の質問者は、西の玄関口案のスマートICが初耳だっただけに行政の継続性に疑問を提示。原・浮島地区は素晴らしい景観と歴史的な施設が残っているとする反面、ごみ最終処分場や、し尿処理場など迷惑施設があり、さらに貨物駅が計画されているとし、「美しいまち」とは逆行する政策だと批判。
 また、新放水路建設については、「財源がないと報道されているが、事業費が六百数十億円と鉄道高架事業予算と同程度なら新放水路建設の方を優先すべきだ。未来の子ども達のためにも安心で安全なまちづくりをしなければならない。原を良くする抜本的な問題は治水対策で、効果があるかどうか分からない鉄道高架よりも新放水路が先」だと発言。
 これに対して市長は「治水問題は被害が最も大きい青野八石地区を何とかしなければならない」としたものの、新放水路建設による受益範囲は原・浮島地区に限定されるが、鉄道高架では沼津全市及び東部地域全体の問題だから「高架を優先すべき」だとの考えを示した。
 さらに質問者は、「貨物駅が公共の利益をもたらせばいいが、そうとは思えない」とし、「現在の沼津駅貨物取扱量が一四万トンなのに四〇万トンの施設を造るということは、取扱量が三倍近くなる。そうなれば貨物列車の運行本数が増大し、踏切遮断時間が増えるので住民は納得できない」と計画に反対した。
 市長は、し尿処理施設東隣のビオトープを挙げ、「市民にもっと知ってもらいたい。女鹿塚も自然公園に、という案もある」と現在ある迷惑施設への配慮を示し、常襲浸水問題については予算獲得の難しさを指摘。貨物駅建設による公害については「心配するほど騒音などの被害は出ない」と予測した。
 次の質問者は会の開催自体に疑問符。「きょうの会は誰を対象としたものなのか。開催を知らせる回覧もなかったし、自治会役員経験者に聞いても開催を知らなかった」と問題にした。
 これに対する主催者側からの回答がないまま質問者は、開校二十年で廃部が決まった東海大開発工学部撤退の原因究明を求めた上で、同大誘致後に市が行ってきた支援策、市が考えている今後の同大との関係、学生相手に建設したアパートの空き室対策について尋ねた。
 そして質問者は学部閉鎖への思いの丈を吐露。
 「原駅ー大学間の道路整備などのほか、学生に必要な施設は原駅近くにはなく、初めて原駅から大学に向かった新入生は、『とんでもない所に来てしまった』と後悔を覚えただろう。一市民として東海大、教職員、卒業生に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだ」と話した。
 さらに、誘致した後、大学をどのように活用し発展させていくかというビジョンが欠如していたことが沼津市行政全般にわたる最大の問題だと指摘。再開発ビルについても「建ててしまえば後は知らないでは困る」とし、「しっかりした都市計画があれば常襲浸水地帯などないはずだ」と指摘した。
 内村博隆・都市計画部長は、原駅前密集市街地整備事業、「白隠のみち」整備事業が進んでいるとことを挙げ、原・浮島の農地埋め立て防止に関しては独自の条例を作ること、市全体から見ても原地区には多くの税金が投入されていることを説明して理解を求めた。
 三人目の質問者は、「災害時の避難先に指定されている原小が地震時、液状化の懸念があるのになぜ指定されているのか。校舎は耐震基準を満たさないため、負傷者は校庭にも校舎にも入ることができない」として同校の建て替えを求めた。また市内全域に災害時避難ビルを指定するよう訴えた。
 市長は「その(液状化の)話は初めて聞いた」と驚いた様子を見せ、危機管理に言及しながら、新型インフルエンザ対策についても市の対応を説明した。
(沼朝平成21年5月31日(日)号)

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