2013年2月3日日曜日

西武沼津店閉店 市街地再生への契機に

社説<2013.2,3>静岡新聞
 西武沼津店閉店 市街地再生への契機に
 西武沼津店が閉店した。1957年、西武が地方の第1号店として沼津駅南口に開業し、静岡県東部の「商都」のシンボルとして君臨していた百貨店が消えた。
 地方都市で進む中心街の衰退を浮き彫りにする出来事だけに、今後の中心市街地の在り方を考える上で沼津市の「商都」という役割については、ひと区切りついたと考えるべきだ。沼津市や関係者は閉店を契機に新たな街づくりの方向性を具体的に示してほしい。
 栗原裕康市長は1月の定例会見で西武撤退後の中心街の姿について、高齢者が住みやすい住環境を中長期的に整備していく考えを示した。車がなくても快適に暮らせる都市空間を目指すと言い換えてもいい。方向性としては妥当だ。ユニバーサルデザインの視点からも高齢者に優しい街は誰にも住みやすい街としてアピールできる。
 沼津市の中心街は年々、高層マンションが増えている。ただ、利便性の良い中心街への回帰は全国の地方都市でみられる共通の現象だけに、市街地を流れる狩野川や沼津港が近いことなど独自の資源を生かして街の魅力を高める必要がある。
 西武の跡地について本館は土地と建物を所有する伊豆箱根鉄道が新たな商業施設の整備を前提に、建物の解体を決めた。本館と連絡通路でつながる新館の複数の地権者も商業施設として存続させる考えでは一致し、東京の商業コンサルタントと協議している。
 どのような商業施設になるにしろ、最盛期の西武沼津店のように県東部全域から人を呼び寄せることは至難の業だ。地元の住民に親しまれ、市街地の付加価値を高める施設を目指してもらいたい。沼津市は関係者とともに知恵を出し、支援する必要がある。
 沼津市の人口は減少が続き、数年後には20万人を割り込むことが予想されている。総務省が公表した人口移動報告によると、転出が転入を上回る転出超過では沼津市が全国の市町村で7番目に多かった。人口減少の抑止は中心街の再生と並ぶ大きな課題だ。中心街の定住人口を増やすことは、二つの課題の解決にもつながる。
 沼津駅北口には来夏、総合コンベンション施設がオープンする。ただ、鉄道で駅の南北が分断されている現状では駅周辺を一体とする街づくりは制限される。鉄道高架化事業の遅れで街が衰退していく現状を事業主体の県は強く再認識してほしい。高架化事業を推進するのか、それとも別の方法で駅南北をつなぐのか。結論の先延ばしは、市街地再生の遅れにつながる。

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