2013年2月9日土曜日

「津波防災」募る不安に対策強化

13年度予算案 沼津市 中
「津波防災」 募る不安に対策強化



 東日本入震災から2年がたとうとしている2月初旬、沼津港にほど近い住宅密集地に住む林佳子さん(72)は、目の前に広がる駿河湾を眺めながらつぶやいた。「ぐらっと揺れたら逃げる。それしかない」ー。沿岸の市民の津波に対する恐怖と警戒心は根強い。
 南海トラフ地震の想定では、市内の浸水面積(浸水深1㌢以上)は6・2平方㌔。林さんが暮らす海抜約3㍍の地域も1~2㍍の浸水が予測されている。震災以降、林さんは自宅近くの津波避難ビルをチェックし、食料の備蓄も徹底している。
 市は2012年度、地震・津波対策に21億円を投じた。11年度から2力年計画で進めてきた「緊急地震・津波対策アクションプラン」に基づき、津波避難訓練対象区域内で200棟の津波避難ビルを指定したほか、静浦、内浦、西浦、戸田地区には177路線の避難路を整備した。
 13年度の一般会計当初予算案は投資的経費が大幅に減少したが、地震・津波対策は約4億円を上積みした。海抜2㍍に位置する西浦保育所の高台移転を完了させ、浸水区域内にあるときわ保育所の隣地に整備する人工築山の詳細設計を行う。園児の母親は「震災以降、不安が付きまとい、安心して仕事ができなかった。一日も早く完成させてほしい」と期待する。市の幹部は「保護者の安心材料を提供する津波対策は子育て支援にもつながる」と説明する。
 市は、ブロック塀の撤去などに対する公費補助、同報無線を自動受信する防災ラジオの有償配布など市民の自助努力を促す事業も継続する。
 市民の防災意識は確かに向上した。だが、津波へ過度な恐怖心を抱いている人もいる。市は6月に公表される県第4次地震被害想定を踏まえ、市内の現状を再検証する。さらにアクションプランを新たに策定し、市民への啓発を含めた行動計画を作る。市危機管理課の担当者は「市民の自助と災害を正しく恐れる知識が広まらなければ、一つ一つの対策は生きてこない」と力を込める。
《静新平成25年2月9日(土)「検証」》

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