2009年7月27日月曜日

「静岡選挙区の攻防⑤」


「静岡選挙区の攻防⑤」5区
 対決3度目共に危機感

 民主党など推薦の候補が勝利した知事選から10日後の今月15日。富士市吉原の自民前職斉藤斗志二氏の事務所に、地元の保守系市議、県議がひそかに集った。「重大な決意をお聴きいただく」。斉藤氏の物々しい招集文に応じたのは約20人。会議中、プレハブの窓越しに険しい表情がのぞいた。
 民主前職細野豪志氏に過去2回、小選挙区で敗れている斉藤氏だが、富士市では無敗。「富士の斉藤」は揺るがず、比例復活の礎になってきた。しかし、知事選では党県連会長として支えた候補は「地元」「女性」の上積み要素に反して、同市で細野氏が推した候補に敗退。小差だが「本丸での敗戦」に大きな衝撃が走った。
 非公開の会議は約1時間半。一部楽観論や相手批判の繰り返しに苦言が続いたという。「選対(船体)は泥船の酷評もあるが、団結して突き進む。確認はできた」。閉会後取材に答えた富士選対本部長・植田徹県議の声は、周囲にも言い聞かせるように大きかった。
 「三つの改革を行います」。解散日21日の夕。斉藤氏はJR三島駅に続き新富士駅でもハンドマイクを握った。つじ立ちの"はしご"は7期の議員生活で初。演説から相手批判や予算取りのアピールは消え、「逆風」「必死」の言葉が並んだ。「陣営の危機意識はそろった。あとは総合力で突破口を探すだけ。それが難しい」(選対関係者)と模索は続く。
 ほぼ同時刻の三島駅前。「選択肢は明確。自民を良しとするか。民主中心の新しい政権をつくるか」。細野氏自身の音頭で「豪志、頑張れ」のコールも上がった。
 追い風が吹き込む陣営だが、報道マイクに向かった細野氏の言葉は「手ごわい」「生やさしくない」「愚直に」。楽観ムードを戒めるようだった。「冷静にみれば5区全体で知事選は負け。40日間、地道な訴えが欠かせない」。選対事務局長の桜町宏毅県議も決して表情を緩めない。
 確かな支持の獲得へ、「政権前夜」を意識して陣営がさらに気を配るのが「地元対応」だ。
 行楽期の渋滞対策に昨年、念願の国の調査費が付いた御殿場市内の国道138号。主に与党へ根強い陳情を続けた地元からは、政権交代で流れが途切れないか早くも不安が漏れる。
 「必要な建設事業は推進すると信じているが、党は『削る』イメージ先行。不安に応える丁寧な言葉もほしい」。支援市議からも注文が口をつく。
 「いろいろ政策はあるが、やらねばならない問題は党派に関係なく地元の皆さんとしっかり考えていきたい」。今月19日、富士市南部の祭りで斉藤氏に続いてマイクを取った細野氏は、あいさつにこう織り込んだ。発言の趣旨を問うと「与党になっても、地元に不安は与えないということ」。「政権」を見据えながら答えた。(衆院選取材班)
(静新平成21年7月27日「09選ぶ夏・激動しずおか」)

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