2009年7月30日木曜日

「静岡選挙区の攻防⑧完」


「静岡選挙区の攻防⑧完」8区
 実績対「どぶ板」の戦い

 衆院解散から2日後の23日夕。JR浜松駅前のホテルの大部屋に、企業や業界団体の幹部が次々と吸い込まれていった。文部科学相として今回の選挙を迎える自民前職塩谷立氏の第1回企業・業界・団体代表者選対会議があった。
 自民党への"逆風"の中、室内は緊張感が漂う。「厳しい状況を乗り越えなければならない。景気対策や担当の教育改革を進める機会を、どうか与えてください」。塩谷氏は約500人に深々と頭を下げた。
 2003年、05年と民主候補に連勝の塩谷氏。昨年9月の大臣就任で知名度がアップし、一時は楽観ムードもあったが、状況は一変。知事選での浜松市中、東、南区の民主推薦候補と自公推薦候補の差は約3万票と「思いもよらない結果」(有力支援者)に陣営は凍りついた。
 親子2代にわたり多くの企業の支援を受けてきた塩谷氏だが、世界同時不況で、浜松のほとんどの企業は厳しい経営環境に置かれている。「社業優先。前回ほどは動けない」(部品製造業者)と困惑の声も聞こえてくる。支援企業のヤマハの伊藤修二特別顧問は「それぞれに組織を引き締め全力で動く。地道に活動するしかない」と経営者に協力を呼び掛ける。
 「民主党の斉藤進です」。民主新人の斉藤氏は連日、のぼり旗を立てた自転車で選挙区内を回り、浸透を図る。立ち止まる人がいれば、駆け寄って握手。「どんな風、状況にも耐えうる選挙戦をしていく」と後援会名簿を頼りに1日100軒程度を訪ねている。
 衆院解散目前の16日。斉藤氏は報道陣を前に「相手は非常に強力。確かに知事選や都議選で(民主党が有権者から)多くの票をいただいたが、一寸先は闇。風は1週間で変わることもある」と現職大臣に立ち向かう心境を語った。全国の選挙で民主党が連勝しているが、勝算を問われても厳しい表情は崩さない。
 東京都小平市議から8区総支部長に就いて2年。浜松市生まれとはいっても住んでいたのは幼少のころまで。「今も無名の新人みたいなもの」(支援者の一人)。07年の統一地方選で浜松市長に転身した鈴木康友氏の後任候補として、スズキの鈴木修会長兼社長を中心とした経済人や連合静岡の支援を受け、「どぶ板選挙」(斉藤氏)で名前の売り込みに全力を傾ける。
 比例と重複立候補する共産元職平賀古同成氏。全県を回った手応えを「派遣切りの問題などで、街頭で若い人が共産党の訴えを聞いてくれるようになった。これまでとは明らかに違う」と強調する。自民・民主の対決に関心が集まる中、「有権者はただ政権交代すればいいとは思っていない」と民主党への"風"を分析。「政権交代後の政治の中身について大いに論戦したい」と意欲を燃やす。(衆院選取材班)
(静新平成21年7月30日「09選ぶ夏・激動しずおか」)

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